The dog fancier 「あーリュミエール、今日は雨も降っていますし、外に出る気もしないでしょう〜。ですから私邸に戻って本の整理をしたいと思ってるんですけど、手伝って頂けないですかねぇ〜」 ルヴァがそう言い出したのは補佐官ディアのお茶会の席でのことだった。女王試験が始まってから月に一度程の頻度で催されるこのお茶会には、毎回ほぼ全員の守護聖、そして二人の女王候補が出席している。今回はアンジェリークを除く全員が集まっており、ルヴァのこの発言は所用で遅れて到着した彼女を、ちょうどオスカーが玄関ホールまで迎えに行った時のことだった。 「申し訳ありませんルヴァさま、今日は私邸に戻ってうちの赤犬に餌を与えないといけないのでお手伝いできないんです。是非また次の機会にお手伝いさせてください」 申し訳なさそうな顔で頭を下げるリュミエールに、 「いえいえいいんですよ〜。気にしないで下さいね」 とルヴァが手を振ると、マルセルやランディが 「えぇっ?!リュミエール様犬を飼っておられるんですか?いいなぁ〜」 「大きい犬なんですか?」 と口々に訊ねだした。 「えぇ、でも飼っているといってもたまに迷い込んでくる程度なんです。身体だけは大きくて、良く食べるんですよこれが」 「大きいと言うと猟犬のような種類の犬なのか」 興味をそそられたように訊ねるジュリアスに、 「ただの駄犬ですよ。身体は大きい割には頭は良くないんですけど、馬鹿な子ほどかわいいって言いますから…」 とリュミエールが答えると、 「それはいかんな、やはりどのような犬でも躾によって…」 と愛犬の躾についてジュリアスが薀蓄を傾け始める。 「おい、その犬って…」 そんなものは一片とも耳を傾けた例のない鋼の守護聖が、隣に座る夢の守護聖に話しかけたその時、 「おや、楽しそうですね。なんの話をされているんですか?」 「あぁ、オスカーか。アンジェリーク、よく来たな。いや、リュミエールが犬を飼っているというのでな。犬の躾について話していた所なのだ」 「ジュリアス様は良く知っておられるのでとても勉強になるんですよ」 遅れてやってきたアンジェリークが犬という単語に目を輝かす。 「リュミエール様犬を飼っておられるんですか?今度触らせてくださいね」 「リュミエールが犬を飼っているなんて全然知らなかったな、是非見せてもらいたいものだ」 そう笑うオスカーに、 「…オスカー、それあんたのことよ」 冷たくオリビエは呟いた。しかしその言葉はにこやかに笑う声にかき消され、疲れた顔をした隣席の少年にしか届かない。ただ一人鋼の守護聖以外にその言葉を拾上げた闇の守護聖は、 「フッ、くだらんな」 と呟くに留めた。 <ロザリアの日記> …というわけで守護聖様の力関係の一端を垣間見ることができた有意義な一日でした。私が女王になった暁、いかに炎の守護聖様を効率的に働かせることができるかが分ったような気がいたします。 |