9月29日(月)
とか言いながら、魅惑の御堂部長の誕生日だったので、友人にSSを送ってみました。 だからそんなことをしている間に・・・。 まぁ、某所の楽しげな祭りに煽られたというのもあるんですが。これぞ萌循環…。いや、循環させてないけど。 というわけで、眼鏡プチSSッス。 興味ある方だけどぞ。
+ 題名すらない +
どうやら自分は夢の中にいるらしい。 そうでないと、どう考えてもこの状況はおかしいだろう。
「「お誕生日おめでとうございます、御堂さん」」
ご丁寧に寸分も違わぬユニゾンで祝福の言葉をくれるのは、佐伯克哉……が二人。 片方は眼鏡をかけていて、もう片方は眼鏡なしという違いはあるが、どう見てもあの佐伯が二人いるのだ。 確かに彼はたまに眼鏡をかけているが、しかしなぜ彼が二人も己の夢の中に出てくるのだ? 「あ、ありがとう」 混乱のせいか、思わず返すのは御堂にしては間の抜けた礼の言葉だ。だが、気を取り直し誰何の問いを掛ける前に、彼らが先に口を開いた。 「御堂さんの誕生日だから何かあげようかなと思ったんですけど、思いつかなくて……」 「考えるのが面倒だったんで、いっそ本人に聞いた方が早いかと思ってな」 「面倒だなんてそんな……。あ、でも本当に何か欲しいものないですか?」 眼鏡を掛けてない方が首を傾げ、おずおずと問いかけてくる。 「いや、特にないが……しかし君とは、わざわざプレゼントをもらうような仲ではなかったと思うのだが」 気弱そうな眼鏡なしは、その言葉にしゅんと俯くが、眼鏡を掛けた方は逆に人の悪そうな笑みを浮かべた。 「確かにそうだ……今はな」 「すみません、迷惑ですよね」 ふてぶてしく胸を張る眼鏡の方と、肩を縮める眼鏡なしは纏う雰囲気といい口調といい、どうにも同一人物とは思えないほどの違和感がある。もしかして双子か何かなのだろうか。 「双子? 俺達が? まさか、こいつと俺は同じ佐伯克哉だ。信じられなくても同一人物だぞ」 「まぁ俺も信じられないくらいですから……」 あはははは……と笑う気弱な男も、妙に態度がでかい男も確かに御堂の知っている佐伯克哉という男ではある。だがしかし、こうして並んでいるとその差異が際立つのだ。 「そうだ。プレゼントがいらないなら、こいつと俺、どちらがいいか選ばせてやろう」 「え、俺とお前を選んでもらうのか? それってプレゼント代わりになるのか? まだその眼鏡の方が役にたつんじゃないかなぁ……」 「何を言う。この眼鏡がなくてはお前はやっていけないだろうが。それにこいつに眼鏡はもったいない。まぁ、眼鏡をしているのをというのもそれはそれで楽しそうだが……」 言葉の意味が分からずとも、にやりと笑うその笑みに悪寒を覚え身を震わせる御堂である。 そんな彼の前で、二人(?)の佐伯は、口を開いた。 「眼鏡の俺と」 「眼鏡のない俺」 「「御堂さんはどちらが欲しい?」」 「俺ならばアンタを天国につれていってやるぞ」 「お、俺だって御堂さんを気持ちよくさせることできますよ」 ずいと寄せてきた同じ顔に、なんと答えればいいものか。 「わ、私は……」 二人とも佐伯なのに、どうしてどちらかを選ばねばならないのだ。それも何故自分が。 しかし真顔で迫る彼(ら?)の勢いは、とてもではないがそんなことを聞けるものではない。 妙な圧迫感に背筋を伝うのは冷たい汗だ。 「わ、私は………」 どうする、自分! なんと答えれば…… 「わ、わ、わ……」
"リリリリリリリ……"
聞きなれた電子音に、御堂はがばりと身を起こした。 「なんだか……」 妙な夢を見たような気がする。どんな夢だったか覚えていないが、やけに焦って、疲れる夢だったような気がするのは気のせいか。 鈍く痛む頭に、こめかみを押さえる。 この歳になれば誕生日だからと喜ぶわけでもないが、しかしだからといって目覚めの悪い日に当るのも嬉しくない。 「まぁいい、所詮夢だ」 そう呟いてベッドから降りた御堂だったが、数時間後理由も分からず背後からかけられた「誕生日だそうですね、おめでとうございます」という佐伯の言葉にびくりと飛び上がることになるのだった。
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