●シャッター

 ローライのシャッターは、「COMPUR」という名前がついています。フレックス、コードともに正面に必ずこのロゴが入っていますね(ごく最近のローライは「セイコーシャ」のシャッターがついているものがあるそうですが)。この「コンパー」は製品名で、作っているのはデッケルという会社のようです。「シャッターはコンパー、レンズはツァイス(あるいはシュナイダー)」などと言うように、カメラ本体のメーカーが、言わば部品メーカーを大きくフィーチャーした製品作りをしているというのが、とても面白いと思います(わりと欧米のメーカーでは、カメラに限らずある話ですが)。

 同じフレックスでも、3.5と2.8ではちょっとシャッターが違います(いわゆる「ローライオリジナル」以降、数種類の「コンパーシャッター」があります)。スピードは同じ1/500までなのですが、シャッターの大きさ(内径)そのものが違うのです。ローライの二眼は「レンズシャッター」なので、レンズの口径に合わせてシャッターのサイズも変わるわけです。つまり、レンズ径の大きい2.8用の「コンパー」シャッターは、3.5用よりも大きくなります。時代を遡れば、さらに数種類のコンパーシャッターがあります。

 今、私達が通常目にするカメラたちのような電子シャッターではなく、正に「からくり箱」のような機械式シャッターであるため、わずかであっても大きくする、つまりシャッター膜を大きく動かすためには、シャッターボタンを押す手の力自体も大きくならざるを得ないようです。3.5Fのシャッターは「カシャッ」と軽快に押せるのに対して、2.8Fのそれは、かなり「ググッ」と押し込んでいってやっと「ガチャッ」と切れるという感じです。もしかすると初めての人は、「壊れてんじゃないの、これ?」と思うかも知れません。あるいは丁寧なひとなら押しながら、中々切れないシャッターに、「これ以上押しちゃっていいの?壊れない?」などと思うかも知れません(笑)。まあ、個体差もあるようですが、単純に言って3.5の方が動作が軽快です。軽快だということは、「ブレにくい」ということにつながります。実用上、このことはかなり大きなポイントになると思います。一般に、中古市場では2.8の方が人気が高いようですが、2.8と3.5の差は開放でわずか半絞りです。しかも、値段はかなり違います。さて、どちらを選ぶかは思案のしどころです。
 もう1つ言うと、絞り開放では確かに半絞り違いますが、そもそもシャッターの最高速が1/500しかないので、開放で使えるシーンは、今時の一眼レフ(最高速1/2000とか1/4000が当たり前の)に比べて、実はそう多くはありません。ちゃんと主に撮りたいものを想定して購入しないと、「3.5でよかった」などと後悔することになることもあるかも知れません。

 実は、私としては目下のところ、一番好印象だったCOMPURシャッターは、コードIVのシャッターです。撮影レンズの下にあるレバーを右に引いてチャージ、左に引いて露光という面白いシャッターですが、実に動作が軽いのです。夕暮れ時に、1/4位のスピードで三脚を使わないで撮ってみて、ほとんどブレの気にならない写真が撮れてしまい、驚きました。その昔、その本体自体の軽量さから来る機動力を活かし、報道取材などに使用する人も多かったという話を聞きましたが、なるほどと納得しました。見栄より実用性を優先するプロには、あまりあてにならない露出計のために重くなっているフレックスよりも、コードの方が頼りになったのかも知れません。しかも開放F値は3.5を確保。すばらしいですね。シャッターに限らず、全体のバランスとしては、値段が高いフレックスよりも、むしろいい買い物かも知れません。