その昔、カメラというものは現在のように「レンズ交換当たり前」というものではなく、適当な(適度な?)画角のレンズが1セットついているのみというものがほとんどだったようですね。まあ、仮に昨今のようなレンズシステムを持つカメラがあったとしても、プロでも容易に手の出る価格ではなく、大多数の人はその恩恵にあずかれなかったかも知れませんが…。 しかし、やがてそれでもより広い範囲を、あるいは遠くの被写体を写したいという要望が盛り上がってきたのでしょう。特に50年代半ばになってライカや、2眼レフならマミヤのシステムが登場する頃になると、ローライ2眼も何とか対抗策を考えざるを得なくなってきたようです。恐らくはその最終的な答えが広角0.7倍、及び望遠1.5倍の「ムター」であったと思いますが、実はそれ以前にも試行錯誤は繰り返されていました。 その1つがこの「ドゥオナー」。ムター1.5倍を上回る、焦点距離2倍のコンバージョンレンズです。 特徴としてはまずご覧のとおり、単眼のレンズであることです。ですから、ムターのように「取り付けさえしておけば後はそのままいつも通りにピントを合わせて撮影」というわけには行きません。まずビューレンズにつけてピントを合わせ、テイクレンズに付け替えてからシャッターを切るという手順になります。(ファインダーに集中しすぎ、「よし、ピント合ったぜ」と思った瞬間にさっさとシャッターを切ってしまうと当然ピンボケ写真となります…。つーわけで、私は慣れるまで失敗写真を量産いたしました(苦笑))何故そんな風になっているかというと、恐らくレンズ径が非常に大きいので、これに見合うビュー用コンバージョンレンズと同時取り付けという設計が困難だったからでしょう。テイク側に取り付けてファインダーを覗くと、下部に黒い縁が見えます。 また、面白いことにカメラへの取り付け側はローライの他のアタッチメント同様、バヨネットになっていますが。前側のフィルター取り付けは普通のねじ込み型になっています。 取り付け側のバヨネットは、比較的初期型のBayIタイプと、後に追加されたBayIIIタイプがあるそうですが、今1つはっきりしません。資料によっては「それぞれそれなりの数が生産されたはず」というもの(人?)もあれば、「ほとんど試験的に市場投入されたが売れ行きが芳しくなく、すぐに生産中止になった」というものもあります。まあ、確かにあまり使い勝手のいいアイテムではありません。しかもこのバヨネットが何故か回り、また伸縮します。何のためなのかは今のところ私には分かりませんが、「こういうもの」のようです。 (注:CDGさんから「バヨネットだけではレンズの平行度が確保できないのを、ねじで閉めこんで密着させる仕組みです」とのご解説をいただきました) 更にオリジナル通りなら、3枚のフィルターとキャップ、革ケースがセットされているそうです。 描写については驚くほどよく写ります。プラナーF2.8との組合せでは、非装着よりも少々コントラストが強くなる感があり、クッキリとした画像が得られます。露出倍数は資料によれば1.3倍ほどだそうで、実際装着しない状態と同絞りで写すとやや暗くなります。もう1つ難点といえば難点なのは、6×6のフィルム面積に対しては周辺が丸く蹴られることですが、ローライキンの使用を想定しているのかも知れません。また、前後バランスが悪くなることと、ピント合わせ時と撮影時で付け替えが必要なことを考えると、三脚の使用が基本となるでしょう。 尚、今回はCDGさんのご協力をいただきました。CDGさん、ありがとうございました。 |