E-55


メタボリックシンドローム



島 ア 弘 幸

2006222
 

 
 最近、「メタボリックシンドローム」という言葉を耳にするようになった。調べてみると、日本内科学会が2005年4月、その診断基準を発表して、それが新聞や雑誌に取り上げられ、我々の耳にも届くようになったらしい。感心するのは「メタボリックシンドローム」というネーミングで、意味は良く分からなくても、響きやリズムがとても良い。どなたのネーミングか知るところではないが、他にも、同じグループによってネーミングされたと思える言葉に、「死の四重唱」や「かくれ肥満」というものもある。覚えやすく、語呂のよい言葉で、センスの良さに感心をする。
 糖尿病、高血圧症、高脂血症、肥満症は、現代日本の中高年にとって、もっとも身近な疾患となっている。もしあなたが、これらの2つ以上を抱えているとしたら、健常者に比べて、何倍もの危険性で心筋梗塞や脳卒中などに罹りやすいといわれ、ちょっと恐ろしい表現だが、これらの病状の併発を「死の四重奏」と呼んでいる。また、一見して太っているように見えなくても、裸になってみると、ややお腹(下腹)が出て、垂れ下がりぎみの人がいる。多くの中高年はこの体形だと思うが、おへその位置でお腹の周りを測って、男性では85cm以上、女性では90cm以上ある人は、やはり糖尿病、高血圧症、高脂血症などに罹りやすくなる。このタイプの人は、実は内臓脂肪型肥満で、一見して肥満しているようには見えないので、これを「かくれ肥満」と呼んでいる。

 これまで我々は、糖尿病は糖尿病の治療、高脂血症は高脂血症の治療、高血圧は高血圧の治療と、同じ個人であっても、別々の治療(投薬)を受けていたが、1型糖尿病や、遺伝性の高脂血症ではない、いわゆる「生活習慣病」と呼ばれる病状は、多くの場合、肥満が原因となって高血糖や、高血圧に、また高脂血症になるという。言い換えれば「肥満」という一つの根から、糖尿病、高血圧症、高脂血症が発病することから、これらの治療に当っても、一つ一つの病気を治すという考え方ではなく、肥満という一つの根っこから発症する全ての病気を同時に治すという考え方がされるようになってきた。たしかに、私たちの周りをみても、肥満だけという人は少なく、たいがいの人は肥満の他にも血糖値が高く、高血圧で、また高脂血症(もちろん程度によるが)である。この肥満という一つの根っこから生じる病状をまとめて、あるいはこのうちの二つ以上の病状を併発している病態をさして、メタボリックシンドローム(代謝機能に関わる症候群)という言葉が使われるようになった。2005年の春のことである。

 今後の医師によるメタボリックシンドロームの治療は、肥満、高血糖、高血圧、高脂血症など、個々の病態ではなく、全体を見ながら行われることになる。
 肥満は「皮下脂肪型」と「内臓脂肪型」に分けられるが、とくにお腹に脂肪がたまる「内臓脂肪型」で、糖尿病(2型)や、高血圧症、高脂血症などの病気を併発しやすい。その原因も最近ではかなり良く分かってきて、内臓脂肪の増加が、いわば引き金となってその人の代謝機能(metabolism)に影響をする。言い換えれば、脂肪細胞がいろいろな危険因子を作り出すと言われている。多くの場合は肥満が原因となって高血糖に、高血圧に、高脂血症になるという。いわゆる「生活習慣病」と呼ばれるものだが、「肥満」という一つの根から、糖尿病、高血圧症、高脂血症が起きることから、それらをひっくるめて、メタボリックシンドローム(代謝機能に関わる症候群)と呼ぶようになったとのことである。今後の医師によるメタボリックシンドロームの治療は、肥満、高血糖、高血圧、高脂血症など、個々の病態ではなく、全体を見ながら行われることになる。この20年ほど、筆者の体重は、あまり大きな増減のないまま維持してきた。肥満度の評価として使われるBMIbody mass index)は、2324の範囲。日本人の標準体重の範囲内である。ちなみに軽度の肥満はBMI2529BMIの計算方法は、体重(kg)を身長(m)の二乗で割ると出る。例えば、体重70kgで175cmの人であれば、70÷(1.75×1.75)=22.85、(BMI=23)となる。



追伸
 HP主宰者殿
 貴HPの「なんやかや」を開いてみたら、「メタボリックシンドローム」というタイトルがあって、「ほう、こんなタイトルで書く人が居るのか…」と、次に作者の名前を見てびっくり、私の名前があった。ごめんなさい。これは先日、「乾燥肌と水もしたたる男の物語」の原稿を送った際、以前に書いた原稿の下書きを消し忘れて(次のページに入っていたのを気づかないまま)送信したものです。この原稿がHP主宰者のお手元にあることすら知りませんでした。ただ、掲載を取り消すと、また、「作者の申し出により削除」と書かれそうなので、そのまま掲載して頂きます。ご掲載に感謝。



エピローグ
 ここで書こうとしていたことは「メタボリックシンドローム」という言葉の解説。掲載された文章は結論もないままに終わっているが、エッセイ風にこの後を続けるとしたら、「この20年ほど、男の体重は、あまり大きな増減のないまま維持してきた。ところが、先ごろ職場が変わって、それまでの電車通勤から自動車で通うようになると、急にワイシャツの首周りと、ズボンの腹周りがきつくなってきた。あわてて体重計に乗ってみたら、2kgほど増加している。「かくれ肥満」である。なんとかこれを減らそうと、それから半年ほど頑張っているが、頑として2kgがくっついたままで離れない。晩酌のビールも止められない。ただ、いつも中途半端な原稿をHPに掲載してもらって、これでけっこう恥ずかしい思いはしている。減量にも効果がありそうである。今回、そのことに気がついた。」

 





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