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   素人も見たFIFA2002ワールドカップ・サッカー

 


島 崎 弘 幸
 



 

 前回のFIFAワールドカップ、フランス大会に、日本が出ていたのかどうかもはっきりしない。
 むろん、
J—リーグのファンでもない。高校の体育の時間以外にはサッカーを経験したこともない。そんな男がサッカーについて語るのは危険だと思う。なにしろサッカーには、とても詳しく、熱烈なファンが多いのだから。ただ、今回の FIFA ワールドカップ 2002 は、男のような素人にも面白かった。ベッカムも、ロナウドも、カーンも。稲本も、戸田も、二人の中田もカッコ良かった。

 なぜ、こんなにサッカーが面白かったのか、それは男にとっては、サッカーだったからではなく、選りすぐられた世界のトップスターの共演だったから。しかも、テレビ観戦とはいえ実況生中継で見たこと。スポーツ(試合)は録画で見ても面白くはない。結果が分かった後なのだから。ちなみに男は、プロのサッカーを競技場で見たことはない。あの大勢のファンと一緒に、盛り上がり、興奮状態になることの楽しさは理解できるが、今回のワールドカップ FIFA 2002 についても、何ヶ月も前から複雑な手続きや抽選までして、チケットを購入する気にはとてもなれない。

 スポーツ(競技)は、基本的要素から、大きく二つに分けられると思っていた。例えば、ゴルフと相撲。ゴルフは自分がベストのプレイをして、その結果を争うスポーツで、相手のプレイを邪魔することは許されない。競技の途中で、相手からプレッシャーを受けることは良く見るが、それは受ける人の心が弱いからで、相手はなにもしていない。結婚式のスピーチに立って、一人であがってしまう男の心に似ている。ゴルフはその競技(戦い)をとおして、相手のプレイを邪魔することが許されない典型的(究極的)なスポーツ。一方、相撲は相手の得意な型を作らせない、相手に力を出させないで、自分がいかに力を出すかを競う典型的なスポーツ。ゴルフとは対極側に位置する。強い方が常に勝ち、身体の大きい方が常に勝つのではプロのスポーツにはならない。相撲は、何番かの取り組みの中で、弱い者が強いものを倒し、小さいものが大きい者を倒す技術があるからこそ見ていて面白い。

 サッカーには、ゴルフにも相撲にもない面白さがあった。観衆の予想を超えた球の動き(個人技やパス回し)と、ゴール(ポール)の1cm右か左かで得点が支配される神の采配。ああ、それにしても、あのサントスのフリーキックがあと1cm下に飛んでいたら。日本はベスト4まで行けたかも知れないのに・・・。それにしても、ロナウドが決勝戦で見せたあの2得点、カーンが弾いたボールを蹴ることのできたのは、神の采配であろうか、それともロナウドのセンスであろうか。男には、むろん彼のセンス、練習で鍛えられたトッププレーヤーとしてのセンスだと思う。また、2得点目の華麗なパス回し、これこそ神の手を離れた彼らのセンスと練習に裏付けられた技(自然の流れ)であろう。こういうスピードのあるクリエイチブなプレイを見せられたら、サッカーファンでなくても感動する。稲本の笑顔も良かった。むろん、ベルギー戦でのこと。

 次期代表監督にジーコ(敬称略でごめんなさい)が内定したという報道があった。むろん男にとっても喜びである。次期の大会に向けて、期待をもたせてくれる。サッカーが神のちょっとした采配で、得点にも失点にもなることを知った今は、次期大会での日本代表の成績(順位)に期待するというよりも、今大会でみせた個人技やパス回し、スピードやチームプレイを上回る感動的で、創造的なプレイを期待している。稲本の笑顔ももう一度見たいし、中村(俊)の笑顔も見てみたい。プロとしては、彼らの体はまだ華奢(きゃしゃ)。中田(英)なみに力強くなって、華麗なプレイを見せてもらいたい。

 

エピロ−グ

 昔は男もちょっとしたスポーツ選手であった。気持ちは今も昔と変わらないが、五十も半ばを過ぎると膝(ひざ)が弱って・・・。

 

 




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