１ 茄子をもぐ農婦の目指休みなし
２ 千年も瑞々しく古寺の蓮
３ 夏の日といえども寒し百舌啼きぬ
４ 天の川流る音聴く真夜の峯
５ 蓮咲きて心安まる長き梅雨
６ 精霊を迎え仏間の賑わいて
７ 涼風を呼んでやさしきうろこ雲
８ 山道に会釈の人や眼の涼し
９ 百日紅暑さ忘れる可憐さに
１０ 広がりつ伸びつ縮みつ群雀
１１ 孫来たり休むを知らぬ夏となる
１２ 夏嵐ビューヒューヒューバラバシャン
１３ 送り火にまたの逢瀬を託す母
１４ やれ窓を流星飛んで峯の小屋 （破れ窓）
１５ かわと親かーと子鴉ついて飛ぶ
１６ 麻殻焚く闇に浮かびて浴衣かな
１７ ひまわりは畑畦に立ち自主警備
１８ 再会や頭髪減るも口減らず
１９ 図書館に宿題あふる夏の果て
２０ 夏休み久しぶりねと孫に会い
２１ 手振る児に開けし車窓や早稲かおり
２２ 眼を閉じて緑葉の下駆け抜ける
２３ 車椅子優しさ集めて盆参り
２４ 細き穂の天を仰いで待つ残暑
２５ 廃線の隧道抜けてカンナ燃ゆ
２６ 夏遅し稲穂伸びよと祈るのみ
２７ クマ蝉の喧騒もなし萩の咲く
２８ 去るフェリー見つめて老女盆も暮れ
２９ 台風は粋でないねと床に入る
３０ 蝉時雨おさまりており秋立や
３１ 朝露や一輪ごとの木槿かな
３２ 露草や嘘のつけない色なりき
３３ 我が半生見つめて浜木綿庭に咲く
３４ 出むとしてすくむ冷夏の稲穂かな
３５ ブルースもワルツもタンゴも汗を呼び
３６ 爆音が絶えしあの日の蝉しぐれ
３７ 海嘯のうねりの如し明けの蝉
３８ 新米の届きて夏の果てを知る
３９ 遅き夏取り返すべく蝉しぐれ
４０ とうきびを倒して嵐過ぎにけり |
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