健康コラム


筋萎縮症について

筋萎縮、筋力低下は筋肉自体に病気がある場合(筋原性筋萎縮)と、筋肉を支配する神経に病気がある場合(神経原性筋萎縮)と、神経と筋肉の接合部に病気がある場合に大別されます。一般に筋原性筋萎縮、神経筋接合部障害では手足の付け根部分(近位部、上肢では、肩・上腕、下肢では臀部・大腿)から筋力低下、筋萎縮が始まり、神経原性筋萎縮では手足の先端部分(遠位部、上肢では手、下肢では足)から筋力低下、筋萎縮が始まります(ただし一部例外もあります)。診断には筋電図検査が非常に大切です。血液検査では筋障害の程度に比例して、血液のCPK値、GOT値、GPT値、LDH値、アルドラーゼ値、クレアチニン値が高値になります。必要に応じて筋肉のCT検査を施行して、どの筋肉が萎縮しているかを検査します。

1)神経原性筋萎縮症

●筋萎縮性側策硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis,ALS)
60−70歳台に発症が多く、徐々に手足の筋萎縮が進行し、舌の萎縮、舌筋のピクツキがあり、重症になると構音障害、嚥下障害、呼吸障害があり、人工呼吸器が必要になります。 (脊髄性進行性筋萎縮症、進行性球麻痺もこの病気に含まれます)

●球脊髄性筋萎縮症(Kennedy-Alter-Sung disease)
伴性劣性の遺伝形式をとり、通常20〜40歳代の男性に発症し、ゆっくり進行します。 軽度のアンドロゲン不全症(男性ホルモン低下)があるため睾丸萎縮、女性化乳房などがあります。

●脊髄性筋萎縮症(ウェルドニッヒ・ホフマン病、クーゲルベルグ・ベランダー病)
生下時から発症するウェルドニッヒ・ホフマン病、 生後6か月から18か月頃までの発症の中間型、幼児期から思春期にかけて発症する軽症型のクーゲルベルグ・ベランダー病があります。 神経原性筋萎縮ですが四肢近位筋の筋力低下、筋萎縮が特徴的です。

●平山病(若年性一側上肢筋萎縮症)
10〜20歳の男性に多く、一側の上肢の肘より先の筋力低下、筋萎縮があり、ある程度の障害後症状は進みません。下部頚髄の循環障害が原因とされています。

●頸椎症、胸椎症、腰椎症
種々の脊椎疾患で脊髄が障害されると神経原性筋萎縮をきたします。

●脊髄空洞症、脊髄小脳変性症、多発性硬化症、脳卒中などの中枢神経系疾患
これらの種々の中枢神経疾患でも神経原性筋萎縮をきたします。

●末梢神経疾患
多発性神経炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ギラン・バレー症候群などの 末梢神経障害でも神経原性筋萎縮をきたします。

2)筋原性筋萎縮症

筋ジストロフィー症(muscular dystrophy)

●デュシェンヌ型(Duchenne)
X染色体劣性遺伝であり、通常男児のみ発症します。 2〜5歳頃より転倒しやすい、歩行障害等で気づかれます。

●ベッカー型(Becker)
X染色体劣性遺伝で、発症は5〜15歳で、経過はゆっくりで、歩行不能になるのは、20歳代後半以降です。

●肢帯型(limb-girdle)
大半は常染色体劣性遺伝であり、10〜20歳代の発症が多く、 上肢帯、下肢帯の筋肉が障害されます。

●エメリー・ドレイフス型(Emery-Dreifuss)
X染色体劣性遺伝が多く、2〜10歳前後で発症する。肢帯型と類似していますが、 心臓の刺激伝導障害があり不整脈、徐脈(脈拍数の低下)の為に、ペースメーカーの挿入が必要な場合があります。

●顔面肩甲上腕型(facio-scapulo-humeral)
常染色体優性遺伝が多く、顔面、肩甲部、肩、上腕を中心に障害される。 進行は緩やかです。

●先天性筋ジストロフィー症(congenital)
生下時あるいは生後数ヶ月以内に発症する筋ジストロフィーの総称。 脳形成障害を伴う(福山型)、伴わない(非福山型)があります。

●先天性非進行性ミオパチー
生下時あるいは乳児期早期からの筋緊張低下、運動障害を示す筋原性疾患で、非進行性のものです。

●眼筋咽頭型(oculopharyngeal)
常染色体優性遺伝例、弧発例があります。 発症は中年以降(40歳以降)で、眼瞼下垂、眼球運動障害、嚥下障害が徐々に進行します。

●筋強直性ジストロフィー症(myotonic)
常染色体優性遺伝、10〜30歳代の発症が多く、 ミオトニー(手を握りしめた後、指をのばそうとしてものびにくい)が特徴的で、この病気では手足の遠位部より筋萎縮、筋力低下が始まります。 顔面、頚部の筋肉も障害されます。

●遠位型ミオパチー
四肢の遠位筋から障害される筋原性疾患の総称です。

●多発性筋炎
筋肉の炎症による筋疾患で、近位筋の筋肉痛、筋力低下をきたします。

●周期性四肢麻痺
周期的に急に四肢の筋力低下が起こり、症状が強い場合は歩行不能になります。 数時間ないし数日持続して元に戻ります。血液のカリユム値の変動があり、低カリユム性が大半ですが、高カリユム性、正カリユム性の場合もあります。

●低カリユム性ミオパチー
血液中のカリウム値の低下によるもので、食事性、利尿剤の使いすぎ、一部の漢方薬の過剰使用、原発性アルドステロン症(副腎の腫瘍の一種)等で発症します。

●横紋筋融解症
筋肉の挫滅、過度の筋肉使用、薬剤の副作用(抗高脂血症剤、向精神薬、抗ヒスタミン剤など)等で発病し、筋肉の痛み、硬直、腫脹、赤褐色尿を伴います。 血中CPK、GOT、GPT、LDH、アルドラーゼの上昇、血中および尿中ミオグロビンの上昇があります。

●ステロイドミオパチー
副腎皮質ホルモンの使い過ぎ、クッシング症候群(副腎、脳下垂体の腫瘍など)等で発症します。

●甲状腺、内分泌疾患に伴うミオパチー
甲状腺、副腎の疾患、糖尿病などでも筋疾患をきたします。

●ミトコンドリア脳筋症
ミトコンドリアの異常による病気であり、 外眼筋麻痺、網膜色素変性、心臓の刺激伝導系ブロックを伴うカーン・シャイ (Kerns-Shy)症候群、 高乳酸血症・卒中様症状を伴うミトコンドリア脳筋症(MELAS)、 raged-red figerを伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)などがあります。

●糖原病
糖原(グリコーゲン)代謝に関わる酵素の先天的異常によっておこる病気です。 Pompe病、McArdle病、垂井病などがあります。

●ミオグロビン尿症(myoglobinuria)
筋細胞の壊死で、この蛋白が血中に遊離し、尿から大量に排出されます。 腎障害を合併することがあります。 原因は熱射病、薬物中毒、酵素欠損などがありますが、原因不明(特発性ミオグロビン尿症)のものもあります

3)神経筋接合部障害

●重症筋無力症
●ランバート・イートン症候群(筋無力症候群)
この項目については本ホームページの健康コラムの重症筋無力症をご覧下さい。


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