健康コラム


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めまいについて

人の平衡感覚は耳の三半器管、耳石器、視覚、全身の筋肉、関節の感覚、皮膚の触覚などから多面的に情報が集められ、脳幹、小脳、大脳で集約、統合されて、無意識に調整されています。これらの情報に障害が発生するとその障害の部位により、回転性めまい(vertigo)やふらつき感(dizziness)が出現します。
めまいは脳によってもコントロールされ、訓練によって症状が軽快したり、宇宙飛行士が無重力状態に数日で馴れたり、めまいを楽しんだり(ジェットコースターなど)、強度に恐怖したり(高所恐怖症など)するなど大脳、自律神経系も色々と関与しているため、個々人によりその症状、程度が多彩なのが特徴です。

めまいに関係する臓器
  • 外耳:耳介、外耳道、鼓膜
  • 中耳:鼓室、ツチ骨(鼓膜側)、キヌタ骨、アブミ骨(鼓室の前庭窓につく)、耳管
  • 内耳:膜迷路(卵形嚢、球形嚢、膜半規管、蝸牛管)
  • 骨迷路(前庭、骨半規管、蝸牛、内耳道)    
めまいに関係する神経
  • 前庭神経、脊髄、脳幹、小脳、大脳
めまいを修飾する神経系
  • 音刺激、嗅覚刺激、自律神経系、心因性ストレス
平衡感覚の情報入力系
  • 三半規管(外半規管、前半規管、後半規管):回転感
  • 耳石器(卵形嚢、球形嚢):直線加速度、重力
  • 視覚
  • 筋肉の筋紡錘、関節覚、触覚
めまいに関係する血管
  • 椎骨動脈、脳底動脈、後下小脳動脈、前下小脳動脈:脳幹の前庭神経核、小脳の循環
  • 内耳動脈(前下小脳動脈の分枝):内耳に循環
  • 内径動脈:大脳のめまいの高次中枢などに循環

めまいの種類と疾患

回転性めまい(vertigo)
  • 前庭神経からの入力異常、前庭神経核を含む脳幹障害で発症、一定方向性の水平回旋混合性の眼振(3/4は正常耳向き1/4は障害耳向き)
  • めまいの急性期には分単位で眼振の方向が変化することがある。
随伴症状(+) 頭痛あり 小脳出血、片頭痛
聴覚症状あり 突発性難聴、メニエール病、遅発性内リンパ水腫、レルモワイエ症候群、神経血管圧迫症候群
随伴症状(−)
誘発性 頭位誘発 良性発作性頭位めまい症
悪性発作性頭位めまい症
頸性誘発 頸性めまい
特発性 一過性 一過性脳虚血発作、てんかん、神経血管圧迫症候群
遷延性 前庭神経炎、脳幹梗塞

眼前暗黒感、失神種々の原因による脳血流低下

ふらつき感小脳失調症、種々の脳症、脊椎症、末梢神経障害

浮動感(dizziness)内耳性めまいの回復期、自律神経失調症、仮面うつ病

回転性めまいの時間
  • 1日以上 椎骨脳底動脈循環不全
    1日以内 メニエール病(回復期は浮動感)、前庭神経炎、内耳疾患
    脳幹・小脳の脳卒中、脳幹脳炎、小脳炎、多発性硬化症
    悪性発作性頭位めまい症
    1時間〜数分 良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo,BPPV)
    一過性脳虚血発作(椎骨脳底動脈系)
    数秒 神経血管圧迫症候群(前下小脳動脈による第[脳神経の圧迫)

●めまいの代表的疾患

椎骨脳底動脈循環不全
  • 回転性めまいが突然出現する
  • 数分以内に消失することが多いが、1−2週間続くこともある
  • 嘔気、嘔吐があり、首を少し動かすだけで症状がひどくなる
  • 脳幹、小脳の障害があれば色々の神経症状がでる

低血圧、起立性低血圧、徐脈、不整脈、貧血症、低血糖

  • 薬、注射の副作用による場合もあります

脊髄小脳変性症、脳卒中、脳腫瘍、種々の脳症、多発神経炎、頸椎症

メニエール病
  • 難聴、耳鳴、回転性めまいを繰り返す
  • 短くても数分〜数十分、長い場合では数時間以上続く、大半が回転性めまい
  • 発作間隔は週〜月単位に数回の頻発から数ヶ月、年単位でしか発症しない例と多様です
  • 発病は40歳代をピークとする中年発症が多い、男/女=1/1.3〜1.4とやや女性に多い
  • 20〜30%は両側性発症
  • 初期には発作時に低音障害型難聴あり
  • 耳閉塞感、聴覚過敏、自声強調、複聴も合併します
  • 原因は内耳の特発性内リンパ水腫と考えられています
遅発性内リンパ水腫
  • 陳旧性一側高度感音難聴の遅発性続発症として、しだいにリンパ水腫をきたす
  • 高度感音難聴から数年〜数十年後にメニエール病に類似した反復性めまい、良聴耳の変動性難聴
  • 同側型遅発性内リンパ水腫:めまいのみで良聴耳の聴力変化のない症例、嘔吐、嘔気を随伴
  • 対側性遅発性内リンパ水腫:めまいの有無にかかわらず良聴耳の聴力変動のある症例
レルモワイエ症候群
  • 難聴、耳鳴が数ヶ月〜数年続いてめまいを発症
  • めまいの出現とともに聴力が改善することがある
良性発作性頭位めまい症
  • 座位で頭部を患耳側へ45度捻転し懸垂頭位をとると数秒後めまい、
  • 患側耳向きの回旋性眼振の発現(1分以内)、座位に戻した際に、反対向き眼振が発現
  • 耳鳴、難聴はない
  • めまいは1分以内、回旋成分の強い眼振、頭位の変換により逆転することが多い
  • 数週〜数ヶ月で軽快する
  • 自由浮遊耳石置換法による頭位運動療法で軽快することが多い
悪性発作性頭位めまい症
  • ある頭位を維持する限り眼振が続く
  • 回旋性の他に、垂直性、方向交代制上行性眼振
  • 健側の耳を下にすると、眼振が発現することが多い
  • 小脳虫部(中心部)の病変が原因:腫瘍など
前庭神経炎
  • 難聴、耳鳴を伴わない急激発症のめまい
  • 30歳代がピーク
  • 嘔気、嘔吐を伴う
  • 回転性だが、浮動性のことも多い
  • めまいは2週間程度で軽快、ふらつき感は数ヶ月〜数年持続することがある
ハント症候群
  • 耳介、外耳道の帯状疱疹ウイルス感染後に顔面神経麻痺、めまい、難聴をきたす
真珠腫性中耳炎
  • 悪臭性のみみだれを繰り返す
  • 内耳骨壁を破壊し、瘻孔を形成し炎症が内耳に波及する
  • 骨破壊:卵円窓窩、正円窓窩、三半規管(外側半規管が最も多い)
  • 感音難聴の進行とともにめまいを随伴する頻度が増える
回転性、浮動性めまい
  • 半規管瘻孔が顕著な場合、外耳道をいじったり、冷気に当たるとめまいが起こる

中耳炎、内耳梅毒、内耳炎、耳の外傷、突発性難聴などの耳の病気

●めまいの原因となる薬物(中毒性内耳障害)

アミノ配糖体系抗生物質
  • ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラシン、アミカシン、ビクシリン
  • ゲンタマイシン、ジベカシン、アルベカシン
その他の抗生剤
  • ミノマイシン
  • 抗結核剤(イソニアジド、サイクロセリン、リファンピシン、エンビオマイシン)
鎮痛剤
  • サリチル酸(アスピリン)
  • インドール酢酸(インダシン、インテバン、インフリー)
  • フェニル酢酸(ボルタレン)
抗けいれん剤
  • アレビアチン、テグレトール
利尿剤
  • エタクリン酸(エデクリル)、フロセマイド(フロセミド、ラシックス)
向精神薬
  • 炭酸リチウム
  • 三環系抗うつ剤(トフラニール、アナフラニール、トリプタノール、ノリトレン、アンプリット、アモキサン、プロチアデン)
抗腫瘍剤
  • 大半の薬剤でめまいの副作用あり

めまいの原因がはっきりしない場合、上記薬剤の使用の有無を必ずチェックする必要があります。
また職業上または事故で有機溶媒を過量に吸飲してめまいが発症する場合があります。


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