はじめての人の日本語文法

   ユッカの会日本語勉強会は、2004年3月から、『はじめての人の日本語文法』 (野田尚史著 くろしお出版刊) を教科書にして、現代日本語文法を一から勉強することにしました。この本の著者は序文の中で次のように述べています。


   「たしかに日本語を話せる人にとっては日本語の文法は特に必要のないものですが、必要としている人たちもたくさんいます。

   まず考えつくのは、日本語を外国語として勉強しようとしている、日本語を知らない外国人です。みなさんが英語を勉強するときに英語の文法が役立ったのと同じように、日本語を勉強する人たちには日本語の文法が役に立ちます。ですから、もちろん日本語を教える先生も、文法がよくわかっていなければなりません。

   文法を考えるときに忘れないでいてほしいことは、だれかが決めた文法が初めにあって、それに従ってみんなが話しているのではなくて、みんなが話しているのを観察して法則化したものが文法だということです」。

   これから、毎回の勉強会の内容をここに整理していきます。これが、日本語文法に関心をお持ちの方のご参考になれば幸いです。また、私たちと一緒に勉強しようと思う方がいらっしゃいましたら、毎月第3土曜日の午前10時から県民センターで勉強していますので、いつでもお出でください。歓迎いたします。お問い合わせは斉藤 國夫さん (電話 045-833-2953) へお願いします。(日本語勉強会幹事)

■2004年3月の日本語勉強会

     (1)日本人はさかなをたくさん食べるです
         →「食べるです」 を 「食べます」 にする。名詞の場合は 「さかなです」 の
         ように 「です」 をつけるが、動詞には 「ます」 をつけなければならない。
     (2)あした試験があるだから今晩は寝ないで勉強します。
         →「あるだから」 を 「あるから」 にする。名詞だったら 「試験だから」 と
         「だ」 が入るが、動詞の場合は 「だ」 を入れない。
     (3)先週広島へ旅行はとてもたのしかった。
         →「広島への旅行」 としたほうがいい。「先週」 も、このままでは
         「たのしかった」 に係ってしまうから 「先週の」 にしなければいけない。

   ◎名詞 と 動詞 の文法的な性質の違い(代表的なもの)
 

名  詞

動  詞

後ろに 『が』 『を』 『に』 などの
格助詞がつくか



例:「テレビが」

×
「の」 などを入れるとよい
例:「見るのが」

そのまま述語になるか

×
「だ」をつけるとよい
例:「試験だ」



例:「ある」

ていねい体の述語にする
ときは

「です」 をつける
例:「試験です」

「ます」 をつける
例:「あります」

「先週」 「広島へ」 などの修飾を
そのままの形でうけるか

×
「の」 を入れるとよい
例:「先週の旅行」



例:「先週旅行した」


    質問1:「見るが好き」 の 「の」 と、「先週旅行」 の 「の」 は同じものですか。
        →「見るのが好き」 の 「の」 は、文のようなもの(例:テレビを見るのが好き)
        を名詞にする働きをするもので、準体助詞とか名詞化辞などと呼ばれます。
        「テレビを見ることがありますか」 の 「こと」 も同じ働きをします。
        「先週の旅行」 の 「の」 は、「私の車」 「夏のバーゲン」 の 「の」 と同じで、
        連帯格助詞などと呼ばれています。

    質問2:動詞にも 「見るのです」 と言うように 「です」 がつくことがありますが・・・
        →これは 「見る」 という動詞に 「のだ」 という一種の助動詞がついたもので、
        そのていねい形が 「見るのです」 になる、と考えればいいでしょう。
 

普通の形 

「のだ」がついた形 

 

普通体

ていねい体

普通体

ていねい体

動詞述語 見る 見ます 見るのだ 見るのです
形容詞述語 暑い 暑いです 暑いのだ 暑いのです
名詞述語 雨だ 雨です 雨なのだ 雨なのです

    質問3:「負ける勝ち」 という場合、動詞の後に 「が」 がきますが・・・
        →ほかにも 「行くいい」 「当たる八卦、当たらぬ八卦」 などが
        ありますね。これらはみんな文語的な表現で、現代に残る名残だと言えます。
        文語体では 「の」 や 「こと」 を使わないで、動詞などの連体形を使えば
        済むのです。(第1回終わり)
■2004年4月の日本語勉強会

2.動詞 と イ形容詞
   ◎学習者が間違えやすい表現
    
     (1)あの人はテニスができるですか
         →「できる」 は動詞なので 「です」 をつけられない。「できます」 と 「ます」 を
         つけます。
     (2)私はカメラをほします
         →「ほしい」 を動詞と間違えて、「ます」 をつけたのかもしれません。
         「ほしい」 は イ形容詞だから 「です」 をつけて 「ほしいです」 にします。
        それから、「カメラを」 は 「カメラが」 にすべきです。形容詞に 「〜を」 が
        使われることはありません。
     (3)あれはやっぱりちがうかった
         →「ちがっていた」 とか 「ちがった」 に直さないといけません。形容詞を
         過去形にするときは最後の 「い」 を 「かった」 にかえます。「暑い」は
         「暑かった」 というふうに。この人は 「ちがう」 を 「イ」 形容詞のように考えて
         「かった」 をつけて過去形にしたのでしょう。

   ◎動詞 と イ形容詞 の文法的な性質の違い(代表的なもの)
 

動  詞

イ 形 容 詞

ていねいな形に
するときは

「ます」 をつける
例:「書きます」

「です」 をつける
例:「寒いです」

「た」 をつけて過去形に
するときは

動詞によって
異なる
例:「書いた」 「食べた」

「い」 を 「かった」 に
かえる
例:「寒かった」

「ない」 をつけて否定形に
するときは

動詞によって異なる
例:「書かない」
     「食べない」

「い」 を 「くない」 に
かえる
例:「寒くない」


    質問1:「ほしいです」 とか 「寒いです」 のような、形容詞に 「です」 をつけた
      表現は、何か不自然な感じがするんですが。
        →たしかにそういう人はかなり多いようです。そういう人でも 「ね」 や 「が」
        などをつけて 「ほしいですね」 「寒いですね」 などにすれば、不自然では
        なくなるようです。
        もともとは形容詞のていねい体は 「ございます」 をつけた 「ほしゅうござい
        ます」 とか 「さむうございます」 だったんですが、それがていねいすぎると
        感じられるようになってあまり使われなくなったんでしょう。そして 「です」 の
        形が進出してきたんですが、まだ抵抗のある人も多いということです。
        若い人ほどだんだん抵抗がなくなってきているようにも見えます。

    質問2:日本人が 「違かった」 というのを聞いたことがありますが。
       →おおざっぱに調べたところでは、大学生ぐらいの年齢で 「違かった」 と
        言う人が3割弱ぐらい、「違うかった」 も1割弱ぐらいいます。
        地域的にもかなり広い範囲で使われるようです。
        「違う」 は意味的にも動作というより状態を表しますから、活用も形容詞的に
        なったのだと思います。といっても、否定の 「違くない」 「違うくない」 はあまり
        使われないみたいですし、現在形を表す 「違うい」 もほとんど使われないし、
        「違い」 になるとぜんぜん使われないようです。(第2
回終わり)
■2004年5月の日本語勉強会

     (1)きたないな川ですね。
         →「きたない」 は イ形容詞なので、後の名詞を修飾するときは 「な」 を
         入れなくてもいいのに、ナ形容詞のように 「な」 を入れた間違いです。
     (2)この映画はあまりおもしろいではありません
         →「おもしろくありません」 か 「おもしろくはありません」 が正しい。
         ナ形容詞なら 「ではありません」 ですが、イ形容詞だと 「くありません」 に
         なります。
         普通体では 「便利だ」 の否定は 「便利ではない」、「おもしろい」 の否定は
         「おもしろくない」 となります。
     (3)金閣寺はとてもきれかった
         →過去形では、ナ形容詞は 「きれいだった」 と 「だった」 にして、イ形容詞
         なら 「きたなかった」 と 「かった」 にします。
         「きれい」 は 「い」 で終わるので、イ形容詞と間違えやすいですね。

   ◎イ形容詞 と ナ形容詞 の文法的な性質の違い(代表的なもの)
 

イ 形 容 詞

ナ 形 容 詞

そのままの形で名詞を
修飾するか



例:「新しい服」

×
「な」 を入れるとよい
例:「便利な道具」

そのまま述語になるか



例:「新しい」

×
「だ」 をつけるとよい
例:「便利だ」

「ない」 をつけて否定形に
するときは

「い」 を 「くない」 に
かえる
例:「新しくない」

「ではない」 を
つける
例:「便利ではない」

「た」 をつけて過去形に
するときは

「い」 を 「かった」 に
かえる
例:「新しかった」

「だった」 を
つける
例:「便利だった」


    質問1:外国人はどうやって品詞を区別するのですか。
        →文法を知らない日本人は、「新しい。」 と言って 「新しいだ。」 と言わない
        から 「新しい」 はイ形容詞だと考えます。
        日本語を知らない外国人は、逆に、「新しい」 はイ形容詞だと覚え、また、
        イ形容詞はそのままの形で述語になることを覚えます。
        それから、「この家は新しい。」 という文を作ります。

    質問2:「おもしろいではありませんか」 という言い方がありますが・・・
        →「おもしろいです」 の否定形は 「おもしろくありません」 ですが、その後に
        「か」 がついて、しかも特別のイントネーションで言うときだけ 「おもしろい
        ではありませんか」 と言えます。この仲間には、ほかにも 「おもしろいじゃ
        ありません?」 「おもしろいじゃないか」 「おもしろいじゃん」 等があります。 
        さらには動詞の 「ほら、うまくいくじゃない?」、ナ形容詞の 「なかなかきれい
        じゃありませんか」 など、どんな述語にもつき、意味も単なる否定を表す
        ものではなくなっています。これらは別のものとして扱いたいと思います。

    質問3:関西の 「きれかった」、福岡の 「変ない」 という言い方は? 
        →「きれかった」 は、ナ形容詞の 「きれい」 を 「きれかった」 「きれいから」
        「きれくて」 というふうに、イ形容詞として活用させているのです。
        「変ない」 も 「変なくない」 「変ない」 「変なかった」 というふうに、「変な」 が
        イ形容詞として使われているということです。(第3回終わり)
■2004年6月の日本語勉強会

.ナ形容詞 と 名詞
     
  ナ形容詞:   「静か」、「元気」、「有名」 など
        名詞:         「特急」、「病気」、「グリーン」 など
   ◎ナ形容詞 と 名詞 の文法的な性質の違い(代表的なもの)
 

ナ 形容詞

名   詞

 名詞を修飾するとき

「な」 を入れる
 例: 「元気な人」

「の」 を入れる
 例: 「病気の人」


        ナ形容詞 と 名詞 は上の表に挙げたような違いはありますが、現在形で
        元気です/病気です、過去形でも 元気だった/病気だった のように
        まったく同じ形になり、文法的にたいして違いはありません。
        
    質問:「無名」 は ナ形容詞? 名詞?
       → 大学生で調べたら、「無名人」と言う人と、「無名人」と言う人が
        だいたい半々ぐらいでした。このほかに、「特別」 と 「特別」 も両方
        使われています。
        このように、ナ形容詞 と 名詞 を分けるのはむずかしく、文法学者により
        いろいろな考え方があります。(第4
回終わり)