【トップページ】

 

四宮正貴の短歌作品 平成二十二年 その2 

老文士の宴に友ら集ひたり筆一管の道の尊さ(郡順史氏の米寿を祝ふ會)

文士といふ言葉はいまだ生きてゐる 郡順史氏のゐますかぎりは (同)

入鹿高氏に比する逆賊今の世に権力者となり吠えてゐるなり(小沢一郎)

この國の清き國柄を貶める権力者の顔の醜さ無限(同)

狂ひたるごとき目をして大君を貶める言葉吐く人を厭ふ(同)

風に乗りて出来し内閣 風向きが変ればゆらゆら揺れて危ふし

嚥下力衰へにけるわが父はもの食べられず飢ゑたまふなり

父のゐまさぬ部屋のベッドは寒々し 帰りたまへと切に祈るも

佳き人がリュック背負ひて我を待つ地下鉄駅の寒き改札

温かき頬撫でやるに父上はただ眠りますベッドに一人

病室でたった一人で年越しをする父を思へば切なかりけり

おほつごもりに根津権現に参り来て古き神札を納めまいらす

新しき年を迎へて新しき日輪仰ぐ朝すがすがし

聖寿萬歳つつしみ唱ふるすがしさよ晴れわたりたる一月二日(新年皇居参賀)

大君はすこやけきお姿で出でましてみ声朗々と宣り給ひたり(同)

仰ぎ見る伏見櫓は尊くも日に照らされて光り輝く(同)

父上の苦しむ姿に吾は泣く いかんともし難きこのつらさかな

何としても父を助けねばならぬぞと心に決めて祈る日々

痩せ細りし父の體をさすりつつ涙こみあげるわれにしあるなり

ラーメンを食べたしと思ふ人の列この寒空に長く続けり

照らされて金色に浮かぶ博物館 上野の山の夜は更けゆく

数多き日の丸の旗うちなびき寒空の下に雄叫びの声(日比谷公園)

日の丸の旗うちなびき民主党への怒りの声が街にこだます(同)

たらちねの母と二人で父のこと語り合ひつつ涙さしぐむ

立ち止り振り返り見れば満月が照り輝けり日暮里の丘

太鼓の音と共に誦したる観音経わが魂に響き来るなり

憎しみの来湧く時には天津祝詞強く唱へて魂鎮めする

寒き夜に不忍通りを走りゆくタクシーで聞く不景気の嘆き

わが手持ちて頬にあてつつ喜びをあらはしたまふ父あはれなり

少しでも苦しみやはらぎたまへとぞ祈りつつ父の額を撫ぜる

父上に別れを告げて出でにける病院の上に照れる月影

抑へ難き怒りの心を抑へつつ医師の言葉聞きてゐる部屋

延命とは延苦なりとの医師の言葉わが胸に鋭く突き刺さりたり

ベッドにて縛り付けられしわが父はものも食べられず痩せ細りゐる

昔のこと克明に語る母上よ今日の出来事を忘れたまふな

佳き女(ひと)の面影浮かぶ夜にして一人日記をつけてゐるなり

氷雨降る巷を一人歩みつつ逢へざる人を思ひ出しをり

さはやけき心となるを喜びて仰ぎ見るなる弓張りの月         

病院に通ひ慣れたる我にして氷雨に濡れつつバスを待ちをり

若き二人が追ひ越していく夜の道われは一人で病院に向かふ

日々をただ病室に横たはる父をし思へば心苦しき

苦しめる父の姿に為す術のなきことを憾むベッドに倚りて

上り行き下り来れる上野山 病院通ひの行きに帰りに

みぞれ降る湯島の町で鳥鍋をつつきつつ友と語らふ夕べ

さばえなす邪悪なるものを祓ひ清め神州日本を蘇らすべし

日の本は神州なるぞ 汚らはしきものどもは皆祓ひ清めん

四海波静かなれとぞ祈りたり上野寛永寺根本中堂

楽器抱へし乙女が一人降りゆきぬ藝大前のバス停留所

盃を交せし人の後ろ姿ややに老いたれば心さみしき

県知事も与党幹事長も大臣も地検特捜部には勝てるすべなし

法と証拠に基づき悪を懲らすといふ信頼を天下に失ふことなかれ

うまき煮込み食しつつ焼酎を呑みてゐる春浅き日の根津の夕暮

バスの中でわが顔を珍しげに見つめゐる幼な子いとし子のなき身には

一人来て祖先の眠る墓石を清めまつれり父母に代り

丘の上のみ寺に祖先は眠ります われもやがてはそこに眠らん

春嵐吹き荒ぶ日に花持ちて菩提寺への坂をのぼり行くなり

大き帝をまつれる宮の広前に立ちつつ明治の日本を偲ぶ

大き帝の詠ませたまひし大空の澄みわたりたるを仰ぐ嬉しさ

むごき刑に処せられし人の御霊鎮めつかへまつれる青山霊園(金玉均先生墓前祭)

晴れわたる空の下にて金玉均の大き碑(いしぶみ)に鎮魂の祈り( 同)

朱の山門くぐれば桜が咲き満ちて弘法大師の像をつつめり

春の朝丘に咲きゐる桜花眺めて一日(ひとひ)が始まらむとす

丘の上の古き宮居の桜花咲き初めければ春は来にけり

日輪の光に照らされ咲き盛る桜の花は永久に美し

光あまねき春の日の午後爛漫の桜の花の下に立ちをり

見事なる枝垂れ桜を仰ぎたり乃木大将をまつれる宮に

地下鉄の駅より昇り来しわれに枝垂れ桜はあざやかにして

佳き夫婦のつくれるラーメン美味ければ時々来たるこの小さき店

過ぎし昔に君が弾きたるピアノの音今もなほわが耳朶に響けり

台湾に共に旅せし大人の歌集一首一首が懐かしきかな(小林孫一氏歌集『風韻』)

もののふの面影今も新しきわが父と同年の大人を偲ぶも(同)

冷雨降る春の夕暮荒川を渡り行くなり父に會はむと

靴を出せ家に帰るとのたまへる父の言葉に涙し流る

お母さんはどうしてると聞く父の言葉 聞きて苦しき夜の病室

マンションに住まひはじめて二十余年ネズミと縁が無くなりしかな

人ら皆家路を急ぐ時にしもわれは一人で桜眺める

谷中なる桜並木が夕暮に神秘なる光を放ちゐるなり

烈士一人永久に眠れる奥津城に満開の桜が立ちてゐるなり(谷中霊園来島恒喜氏の墓)

み仏のゐます庭園に日の光うららかに照り春盛りなり(谷中天王寺)

仰ぎ見る銀杏の巨木若き葉が吹き出でてをり春寒の朝

数多の人ら群れ集ふ宴の中に立ちわれは黙々とものを食ひをり

世の中は常に明るく清らかにあればよろしき日の本の國

魂は常に燃え立つことが良し朝(あした)に仰ぐ日輪の光

朝のまつり柏手の音にたまきはるわが命強くふるひ立つなり

朝光(あさかげ)に照らされて立つうれしさよまた新たなる一日(ひとひ)迎へて

春の風激しく吹き来て病室の窓を鳴らせり父よ頑張れ

花も見ずベッドに縛り付けられし父上の姿を見れば胸迫るなり

父上の胸をさすりつつ神の力さきはへませとただ祈るなり

再びはわれと共にぞ故郷の阿波の國へと飛びて行かまし

故郷を遠く離れて臥せります父の力よ蘇へりませ

税金で成り立ってゐるなどと皇室を貶めしキャスターを永久に許さじ(鳥越俊太郎)

歌詠むことがすなはちわれの人生と思ひて今日も筆握りゐる

パンドラの箱を開きし愚か者「思ひ」といふ言葉を矢鱈に使ひ(鳩山由紀夫)

小さき虫がそろそろ出て来てテーブルの上を動きゐる初夏の夕暮

越えて来し上野の山に散り果てし桜の花は胸中に咲く

耀へる青葉の下をくぐり行き生きてゆく意志を確かめてをり

さすらひの心は持たず坂道を登り行く時光る青葉よ

幽暗の世界に入り行くを拒絶して新緑の樹木を仰ぎ見るかな

頭髪を刈りあげてすずしくなりにけり五月の風に吹かれ歩めば

日常は繰り返すよりほかになし朝は日が昇り夜は日が沈む

回転ドアを通りにけりないたづらにわが身押し出す夕暮の街へ

戦はねばならぬと思ひし時ならば白磁を見つめ心鎮める

新しき傘さし歩む この傘もいづれは何処かに置き忘れなむ

若き日の罪咎をいまだ悔やみつつ歩めば月光さやかなるかな

悔ひ多きわれにしあれば一人して呟くことの多くなるなり

口をすすぎ手を洗ひたる時にしも心も清くありたしと願ふ

老人が立ちをれど席を譲らざる高校生に怒り燃え立つ

外出すれば一度や二度は腹の立つことがあるなり昨日も今日も

六十歳はすでに前期高齢者中期も後期も末期もあるか

あと幾年この世に生きるかわからねど前途洋々福寿海無量

西方の浄土を信じゐし人々を思ひつつ見る朱色の入日

子らの待つ巣へ真っ直ぐに飛び行ける親なる燕をいとしみて見る

親を待つ燕の子らが巣の中で口を並べて啼く声いとし

【トップページ】