高い位置にある物体は落下してほかの物体を動かしたり変形させたりできる状態にありますね。
落下中に物体の速さはどんどん大きくなっていきます。
位置エネルギーを持っていたはずなのに、運動エネルギーもいつの間にか持たされているみたいです。
ここでは位置エネルギーと運動エネルギーの関係についてつかんでおきましょう。

力学的エネルギーの保存

位置エネルギーが運動エネルギーに変わっていくようすを見てみましょう。

順番にラジオボタンをクリックしてみてください。
物体を高い位置にもってきました。
 この物体は位置エネルギーを持っています。動いてない
 ので
速さは0運動エネルギーを持っていません。
 つねに鉛直下向きに重力がはたらきます。

物体は落下を始めます。
 つねに下向きに重力がはたらくのでだんだん速くなり、
 運動エネルギーが増えていきます。だんだん地面に近づ
 くので
低くなり、位置エネルギーが減っていきます。

地面に到達直前です。
 このとき速さは最大になり、運動エネルギーも最大に
 なります。
高さが0なので、もう位置エネルギーは持って
 いません。

この最後の運動エネルギーは地面にぶつかったとき、熱や音や光に変わったり、 物体や地面を変形(弾性エネルギー)させたり、物体を動かしたりすることに使われます。

位置エネルギーが減って運動エネルギーが増えました。
また、上へ投げたボールが途中で落ちてくる現象も、ボールが最初に持っていた運動エネルギーが位置エネルギーに変わり、最高点に達したとき、また下へ向かって落下を始め、位置エネルギーがだんだん運動エネルギーに変わっていきます。
物体が持つ全エネルギーの量は一定です。
※実際は落下途中でも摩擦や空気抵抗などで熱や音や光になってにげてしまうことが多いです。
その場合は力学的エネルギーは減っていきますが、にげてしまう熱エネルギーなどもふくめてエネルギーの総量は一定となります。
力学的エネルギーの保存は摩擦や空気抵抗などを無視した場合を考えましょう。

力学的エネルギー=位置エネルギー+運動エネルギー
               (位置エネルギーと運動エネルギーの和)

力学的エネルギーの保存…力学的エネルギーが一定に保たれること

力学的エネルギーの大きさを比べる

例として、ちがう形態の面の同じ高さ同じ質量の物体を置いて静かに離したときを考えてみます。
どの物体もどこの位置でも力学的エネルギーが同じであることを確認しましょう。

いちばん上 位置エネルギー…同じ
運動エネルギー…0
位置エネルギー…同じ
運動エネルギー…0
位置エネルギー…同じ
運動エネルギー…0
力学的エネルギー(位置エネルギー+運動エネルギー)はどれも同じ
途中 力学的エネルギーを一定に保ちながら運動
力学的エネルギー…一定
(位置エネルギー+運動エネルギー=一定)
いちばん下 位置エネルギー…0
運動エネルギー…同じ
位置エネルギー…0
運動エネルギー…同じ
位置エネルギー…0
運動エネルギー…同じ
力学的エネルギー(位置エネルギー+運動エネルギー)はどれも同じ同じ速さ

斜面が急であるほど、いちばん下に着いたときの速さが速くなるような感じがして、力学的エネルギーが大きくなるようなカン違いをしてしまうものです。
違うのはいちばん下に到達するまでにかかる時間だけで、摩擦や空気抵抗がなければ、斜面が急なほど短い時間でいちばん下に着いてしまいます。
質量や最初の高さが同じなら、最初にもっていた力学的エネルギーが同じなので、いつでもこれらの物体の力学的エネルギーは同じになります。

振り子の運動

振り子も位置エネルギーと
運動エネルギーが移り変わり
ながら運動しています。
摩擦や空気抵抗がないとします。

いちばん左端と右端のときは
力学的エネルギーはすべて
位置エネルギーとして
持っています。
いちばん下の位置では
力学的エネルギーはすべて
運動エネルギーになっています。

振り子が持っている力学的エネルギーの総量は
一定なので、途中で定規をあてるなどして
糸の長さを変えてももとの高さまでしか振れません。

位置エネルギーが最大となる位置は
糸の長さに関係なく同じ高さになるはずですね。

【例題3】
A点から小球を静かに転がした。摩擦や空気抵抗はないものとする。

(1)小球の速さが最大になるのはどの点か。
(2)C点とE点ではどちらのほうが小球の速さが大きいか。
(3)E点での小球の位置エネルギーと運動エネルギーの比は何対何か。
(4)F点を通過後の小球は何cmの高さまでのぼるか。

   

A点での小球が持っている全エネルギー(力学的エネルギー)は高さ120cmの物体が持つ位置エネルギーだけですね。
小球の重さは変わらないので、位置エネルギーは高さだけに比例すると考えていいです。

(1)
位置エネルギーが減ったぶん、運動エネルギーが大きくなります。
位置エネルギーが最小の点がもっとも小球の速さが大きくなる点ですね。いちばん低いのはB点です。

(2)
どちらの位置エネルギーが小さいか考えます。C点のほうがE点より位置が低いので、運動エネルギーが大きくなります。
よって、C点のほうが小球は速いですね。

(3)
位置エネルギーは高さに比例します。A点での位置エネルギーを120とすると、E点では100です。
全エネルギーは最初に小球が持っていた位置エネルギー分120なので、E点での運動エネルギーは
 120−100=20 です。よって、位置エネルギー:運動エネルギー=100:20= 5:1 ですね。

(4)
全力学的エネルギーを位置エネルギーにしても、小球が最初に持っていた高さ120cmのときの位置エネルギーと同じです。
だから120cmの高さにまでしかのぼれませんね。

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