珈琲ショップで思い出した、バンコクでの事、毎日のように行く店で顔見知りになった男だが、彼は肩を撃ち抜かれ手術のため入院していて最近退院したがもう少し静養しないと仕事が出来ないと言った、当時ベトナム戦争へ行ったタイ人もいたので(ご存知だろうか?)そこで負傷したのかと尋ねると、いやパタヤの沖だと言う、ご存知ない方の為に説明すると、パタヤとはバンコク
から200Kmぐらい(?)、車で2時間程の所にあるリゾートだ、今はやたら賑やかな所になってしまったが当時は何もない所で、とても銃弾が飛び交う所とは思えない、私が訝しげな顔をしていたのだろう、実はね、と話を続けた、パタヤの沖でタイ国軍に追われ銃撃されたんだ、どうにか逃げきったがその時に肩を撃ち抜かれてしまったと言う、「何で銃撃されたんだ?」「ニィ・パシィーだ」(タイ語でニィは逃げるパシィーは税金つまり密輸)、彼が言うにはクロントイ(バンコクの港)ではヤバイのでパタヤの沖でやるとの事だった、解かり易くいえば横浜港ではヤバイので千葉沖でやるという事だ、「ところで何を密輸しようとしたんだ?」「ケム」と一言いった、私のタイ語では「ケム」といったら二つしかない、一つは「塩辛い」もう一つは「針」二つとも密輸とはなんら関係があるとは思えない、やはり麻薬だの武器を連想する「ケム?」「そう、布を縫うやつ」私の頭の中ではどうしても「針」と「密輸」は結びつかない、そんなに高価な針があるのだろうか?工業用ミシンの針だそうだが、私には理解出来なかった。
「ジョンソン(モーターボートのエンジンのメーカー名)のン馬力を2つにしたから、今度は楽に逃げられる。」
男はまだやる気だった。 今、彼らはどうしているだろうか?