アルバム収録曲解説
Side 1
IT WON'T BE LONG
Recording Date 1963年7月30日
Take 17 and 21 MONO
Take 17 STEREO
シングル候補曲として、Johnが主に書いた曲でメイン・ヴォーカルもJohnです。Paulも曲作りに貢献したと発言しています。結局シングル曲としての発表は見送られ、アルバムのオープニングを飾ることとなりました。SHE LOVES YOUで使われた「Yeah」という言葉をコーラス部分に効果的に採り入れています。PaulとGeorgeがそれぞれ高音、中音のコーラスを担当しています。追っかけコーラスを採用していますが、なぜかGeorgeが途中歌い損ねているテイクが使われました。歌詞はBelongとBe long、発音は同じですが意味が異なる言葉を使い、言葉遊びをしています。曲のキーはEですが、途中Cのコードが入ったり、Bメロ、エンディングで半音コード進行を採り入れたりとコード進行に斬新な感じがします。この曲はライブでは口パクでしか取り上げられておらず生演奏した記録がありません。
ALL I'VE GOT TO DO
Recording Date 1963年9月11日
Take 15 MONO
Take 15 STEREO
JohnがSmokey Robinson【スモーキー・ロビンソン】を意識して書いた曲でメイン・ヴォーカルもJohn。Paulが高音ハーモニーを担当しています。前作『PLEASE PLEASE ME』の『ANNA (GO TO HIM)』にも通じる雰囲気を持つ曲です。イントロのギターのAaug add9th Add11thのストロークの響きが独特です。Paulのベースは和音で弾いている個所があります。Aメロは、ドラムとギターのカッティングの音が考えられて構成されており、少ない音数でドライブ感を出しています。曲のアウトロにはハミングを採り入れています。
ALL MY LOVING
Recording Date 1963年7月30日
Take 11 and 14 MONO
Take 14 STEREO
Paulが書いた曲でメイン・ヴォーカルもPaul。Johnは「自分で書いた曲じゃないのが悔しいくらいいい曲」と言って絶賛しています。PaulがRoy Orbisonのツアーに同行中ツアー・バスの中で書きました。Paulにしては珍しく歌詞から書き始めてメロディを後からつけています(本人いわく歌詞だけを先に書いたのはこの曲が初めて)。ヴォーカルはPaulのダブル・トラックで、自身でコーラスをつけています。ライブではGeorgeが主旋律を担当しました。歌の後ろで鳴り続けているJohnの3連符のリズム・ギターが印象的です。Ringoのドラムは音量が低めに録音されており、(オープンハイハットは大きめですが)スネアの音がフィル・インの部分を除きギターの音色に隠れてあまり聴こえません。Georgeのギターはチェット・アトキンス奏法というほとんどを和音で構成されたソロを弾いています。Paulは、4ビートのランニング・ベースを弾いています。Paulは、デヴィッド・ジェイコブズというDJがラジオでかけてくれたのでこの曲が有名になった、と回想しています。
DON'T BOTHER ME
Recording Date 1963年9月12日
Take 13, 15 MONO
Take 13, 15 STEREO
George Harrisonの処女作。体調を崩してホテルで療養中だった時に書かれました。Johnがファズ・ギターを弾こうとしましたがメンバー、スタッフから却下されました。パーカッションが多数ダビングされています。
LITTLE CHILD
Recording Date 1963年9月11日
Take 21(Take 15 and 18)
MONO Take 21 STEREO
Johnのハーモニカを大々的にフューチャーしたロック・ナンバー。JohnとPaulの共作で、短時間で仕上げられました。Paulがレコーディングで初めてピアノを弾いた曲です。当初はRingoが歌うために書かれた曲でしたが、Ringoは当アルバムで『I WANNA BE YOUR MAN』を歌ったためJohnとPaulが歌いました。
TILL THERE WAS YOU
Recording Date 1963年7月30日
Take 8 MONO
Take 8 STEREO
オリジナルは1957年発表のミュージカル『ザ・ミュージック・マン』の挿入歌です。THE BEATLESは、1961年発表のペギー・リーのバージョンを参考にカバーしています。全体にアコースティックで洗練されたアレンジです。Georgeのガット・ギターのソロも非常に考え抜かれたものになっています。THE BEATLESのレパートリーの豊富さを物語っている一曲です。
PLEASE MISTER POSTMAN
Recording Date 1963年7月30日
Take 9 and 7 MONO
Take 9 STEREO
オリジナルはのアメリカ黒人ガールズ・グループ、Marveletts【マーヴェレッツ】です。1961年8月にモータウン・レーベルから発表され全米No.1の大ヒット曲を記録しました。コーラスの掛け合いで曲が展開していきます。
Side 2
ROLL OVER BEETHOVEN
Recording Date 1963年7月30日
Take 5 (Take 7 and 8) MONO
Take 7 and 8 STEREO
Johnが敬愛する、Chuck Berry【チャック・ベリー】の1956年5月発表の曲です。もともとはJohnの持ち歌でしたが、のちにGeorgeの持ち歌になりました。Georgeはチョーキングではなくスライドを多用したソロを弾いています。
HOLD ME TIGHT
Recording Date 1963年9月12日
Take 26 MONO
Take 29 STEREO
前作『PLEASE PLEASE ME』でもレコーディングされましたが仕上がりに満足出来なかったため未発表に終わり、本作でリメイクされた曲です。Lennon - McCartney初期のオリジナル曲のひとつで、ライブでも演奏されていました。この曲もJohn、Paulどちらからも低評価の曲です。
YOU REALLY GOT A HOLD ON ME
Recording Date 1963年7月18日
Take 7, 10 and 11 MONO
Take 7, 10 and 11 STEREO
オリジナルはSmokey Robinson【スモーキー・ロビンソン】を擁するThe Miraclesが、1962年11月に発表した曲で、全米8位まで上昇しました。作曲もSmokey Robinson自身が行っています。Johnが主旋律を歌いGeorgeが低音ハーモニーを担当するという珍しい組み合わせで、これは公式曲の中ではこの一曲のみです。性急なJohnにしては珍しく4トラックでのリメイクを要求した曲でしたが、これもスタッフから却下されています。
I WANNA BE YOUR MAN
Recording Date 1963年9月11日
Take 16 MONO
Take 16 STEREO
Ringoが歌っています。元々はThe Rolling Stonesのセカンド・シングルのために書かれた曲でした。
DEVIL IN HER HEART
Recording Date 1963年7月18日
Take 6 MONO
Take 6 STEREO
オリジナルはDonays【ドネイズ】で1962年8月に発表された非常にマイナーな曲です。Georgeのボーカルに、John、Paulがコーラスをつけています。エンディングでGeorgeがギター1小節早くフレーズを弾くというをミスをしています。
NOT A SECOND TIME
Recording Date 1963年9月11日
Take 9 MONO
Take 9 STEREO
英国TIMES紙1963年12月27日付ウィリアム・マン氏が掲載した記事で、この曲の終止法がエオリア旋法でグスタフ・マーラーの『大地の歌』と同じと評されました。間奏ではGeorge Martinがピアノ・ソロを弾いています。
MONEY (THAT'S WHAT I WANT)
Recording Date 1963年7月18日
Take 6 and 7 MONO
Take 6 and 7 STEREO
Johnのベスト・シャウトのひとつ。圧倒的な演奏です。オリジナルはタムラ・レーベル(のちのモータウン・レーベル)所属のバレット・ストロングで1959年8月発表、全米23位まで上昇しました。これはモータウン・レーベルの初ヒット曲となりました。George Martinがピアノのリフを弾いています。