名探偵さくらパンダ劇場「二十歳のバースデー」
大丸松坂屋百貨店 / さくらパンダ館




 実際に提出した推理をアップしておきます。
 ……見ての通り、犯人を間違えました(笑)。
 わりと早い段階で桃子と車田の二択まで絞り込めるんですが、財産分与直後のリアクションを推理に絡めて失敗しました。
 指の怪我を絡めると良三も少し怪しかったんだけど……その辺をどう考えたかは下記の推理でどうぞ。深読みしすぎですね(´・∀・)

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犯人……花澤桃子

・トリック……杏子が飲んでいた薬を毒薬にすり替えた。
・犯人の動機……「恋愛と結婚を認めてもらえない」と考えた事による怨恨。

 詳細は下記の通り。

■トリック
 ポーチから取り出された薬のシートは4錠が使用済みだった。望月は「朝と夜、1日2回お飲みいただくお薬を、毎週月曜日に1週間分お渡ししております」と言っており、カレンダーによるとこの日は水曜日。杏子はこの日の朝、薬を飲まなかったことになる。
 しかし、杏子が薬を飲み忘れることは決してなかったという。つまり朝に飲んだのは別の薬ということになる。それが毒薬だったのだろう。犯人は薬のありかを知っている人物となる。杏子のポーチから薬を取り出すふりをして、他の薬(毒薬)を手渡したと考える。1錠だけ渡して飲ませてもいいし、4錠を使用済みにした毒薬のシートを渡してもいい(シートは後で再びすり替える)。犯人が桃子ならそれは十分に可能だ。
 この説を採れば、錠剤の中心部に毒を仕込み、ある程度の時間を置いてから効き目を現すようにする、いわゆる時限爆弾のような殺害が可能となる。飲み食いをしていなかった杏子が毒で死んだ理由と見る。
 薬を飲んだタイミングは朝の外出前、あるいは外出中となる。水は望月が管理しており、彼は杏子が朝から出かけていたことを知らなかった。杏子はこの日、望月の水を一切飲んでいない可能性があるが、薬だけ飲み下すことも可能だし、あらかじめ受け取っていたペットボトルがあったと考えることも可能だ。
 なお、望月が管理していたペットボトルの水に毒は入っていない。
 望月はボトルを自ら開栓して水を飲んでいるし、杏子は劇中で一度も水分を取っていない。また、水に毒が入っていたら即効性が極めて高くなってしまう。パーティーの最中、何も飲み食いをしていなかった杏子が「水に入っていた毒で死んだ」とは考えられない。

■犯人の動機と杏子の行動
 桃子は「杏子に結婚を認めてもらえない」と考えており、その怨みから彼女を殺害した。
 杏子が自室でカレンダーを見ながら考え込んでいたのは、桃子の結婚と将来に関することではないか。その悩みが菜々子に対する以下の発言に繋がる。
杏子「菜々子。(中略)あなた、あの男があなたを愛しているとでも。あなたまで、そん……(胸を押さえる)」
 結婚に関する問題を抱えていたのは菜々子だけではない。もう一人は桃子ということ。桃子の相手は不確かだが、彼女が左手の薬指につけていた指輪(婚約指輪と考える)には「K」という文字が入っていた。イニシャルと仮定するなら車田紀夫の姓(花澤健介の名も「K」だが、不倫とも思えないため除外する)。劇中に桃子の相手が登場していると仮定するなら、車田紀夫となる。
 冒頭、初対面の相手には会釈すらしない杏子が、タクシーの中で車田紀夫と楽しそうに談笑していた。二人は親しい仲だと考えられる。桃子の恋人だからか。
 杏子が朝から何も食べていなかったのは、桃子に関する問題で悩み、食事が喉を通らなかったためではないか。遺産相続の発表を行い、その問題に決着を付けた(桃子に財産を分与する=桃子の結婚を暗に認めた)ことで肩の荷が下りて「お腹が空いた」と言い出したのではないか。朝から出かけていたのは桃子の相手(車田?)と話し合うためであり、その席で彼に「結婚を認める」と告げた可能性がある。
 その場合、犯人の桃子は致命的な勇み足をしてしまったことになる。桃子が財産分与の際に困惑した表情を浮かべていたことや、直後にシャンパングラスを倒してしまったことは、杏子の意外な決定に動揺していたからではないか?

■良三の指の怪我
 転んで怪我をしたにしては不自然。桃子の恋愛と結婚(つまり指輪)に絡んだものか。
 車田に贈る指輪を作るため、店でサイズが近い良三に試着をさせたという可能性もあるか。抜けなくなって皮をすりむいた? 車田は小指に指輪をしており、薬指にはしていなかった。桃子は新しい指輪を恋人に贈るつもりだったのではないか。

■他の可能性を否定する
・菜々子と直樹
 奈々子は直樹との結婚を認めてもらうことだけを考えており、動機がない。直樹は金目当てだったようだが、そもそも毒殺のチャンスがない。

・百合子と健介
 二人はすでに結婚しており、財産分与にも満足のいく決定が下されていた。事前に殺害を計画する理由はなく、事件への関与を示す伏線も存在しない。

・望月
 すぐに疑われる殺害手段を取るとは思えないし、動機も見当たらない。杏子の死因をすぐに「毒物」と断言しており、やましいものを抱えているようには見えない。

■余談
 杏子が菜々子に「直樹と別れれば財産を分与する」と告げたのは、彼女を試すためかもしれない。財産を取らずに男を取ったなら、結婚を認めて財産も分与するつもりだったのではないか?

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■解答編を見た後の感想
 途中までは「その通り」と頷きながら見ていて、犯人発表の時に「……そっちかー!」ってなりました。
 ……あれ、指の怪我は解答編でノータッチ( ・ω・)? 本当に転んだだけみたいですね。情報を繋げるならあれしかないと思っていたんだけど、ただの深読みになってしまった(笑)。締め切り間際にざっと書いていた時は気づかなかったけど、今読み返すと「恋人の薬指のサイズぐらい把握してるよなあ」と。
1.桃子と車田は交際を禁じられているため普段なかなか会うことができず、良三の指のを基準にするとサイズが合いやすかった。
2.実は恋の相手は良三で、二人で買い出しに出かけた時に指輪を作ろうとして色々あった。
 とか考えてたんですが、どれもこれも冷静に考えるとあり得ない(笑)。これらと比べたら「本当に転んで怪我をしただけ」というのがむしろ自然ですね。お恥ずかしい('A`)
 こうした「出題編で描かれなかった空白の時間帯(桃子と車田の関係も含む)」が解答編でドラマとして描かれると思っていたんですが、ちょっと予想と違っていました。
 車田が付けていたピンキーリングは「桃」のデザインだったんだね。

 ということで、桃子と車田で迷い、最終的に誤答してしまったという履歴でした。「杏子は車田にバッグを預けていた」という描写を見落としたのが敗因かな。

■余談
彩「こんな込み入った事情があるパーティになぜ呼んだ?(`・ω・)」
桃子「そ、それは……(・ω・`)」

 この謎について、文字数制限でカットしたパートが以下(清書していないので砕けた文体です)。

 ミステリだから仕方ない……ではなく、もしかするとこれも伏線かなあ。友人である彩に弁護をしてもらいたかった(体よく利用するつもり)……あるいは途中で矛盾に気づき、罪を告発してもらいたかったからか。彩が探偵さくらパンダと繋がりを持っていることは以前から聞いていたという。バレることを半ば覚悟していたことになる。そして桃子は緊張からシャンパングラスを倒し……。

 ……などと解答編ならではのドラマを予想して推理を重ねたけど全然違ったよね(笑)。

■余談2
 犯人を車田じゃなく桃子と解答した理由。
 それはオープニングで彼と杏子が談笑していたこと。上で述べたように、二人は桃子との恋愛に関する話し合いを持ったと推理していた。その結果、帰り道で談笑できる状態になった。ということは、杏子から車田にとって望ましい答えが与えられた……と考えたわけです。これなら杏子を殺すことはないだろう。また、毒を与えた後で「桃子との結婚を許す」と言われていたなら、やはり帰りの車内で楽しげに話すという状況にはならない。後悔で青ざめるなり何なりしているだろうと。
 で、消去法で桃子に絞ったんですが外れだった(笑)。確かに彼女が犯人だと薬を入れ替えるチャンスがないんですよね。朝に1錠だけ渡すパターンは「杏子は今朝、誰とも会っていない」という証言で否定されている。夜のうちにシートごと入れ替えておくパターンは有効ですが、杏子が帰ってきた後に再び入れ替えるチャンスがない。望月がポーチから薬を取り出すまで、ずっと杏子の手元に置かれていたわけですからね。
 そうすると杏子が倒れた際、「望月はポーチに入っていた毒薬を懐にしまい込み、前夜のうちに抜き取っておいたいつもの薬を見せびらかした」ことになる。しかしこれも、「望月は深夜まで屋敷にいた」という伏線がないため極めて不自然になる(私が望月を容疑者から外した理由の一つ)。「犯人は単独犯」という条件があるため、すべて彼一人でやらないといけないですからね。
 ということで、殺害手段に絞って考えた場合は車田しかいないことになる……はず(笑)。談笑する仲ではあるが、結婚は許されていないということなんだろうなあ。オープニングの談笑シーンに含みを持たせてくれたらベターでした。

 でも楽しかったし、こういう企画は好きなのでまたやってもらいたいですね。
 推理してたら『安楽椅子探偵』の続きが見たくなってきた(`・ω・)+

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