「試合?」 「そ、練習試合。ったく、しつけーんだからよぉ…」 放課後、問答無用で副部長に拉致された理由はそれだったらしい。大好物の味噌ラーメンを啜りながらも京一の口調は苦い。
いつものように、5人で放課後ラーメンと定番の帰り道を辿っているのだが、無理矢理部活に引っ張り出された京一だけはすこぶる機嫌が悪かった。
「お前はサボりすぎだ。お前を担ぎ出すのに苦労している副部長の身にもなってやれ」 横に座る醍醐が呆れたように言えば、その隣の小蒔も深く頷いて同意する。 「そうだよ、ホント。実際、ここまでいい加減な部長を持って、良くやってるなって感心しちゃうよ」 「確かに、苦労は絶えないらしいしな。うちの部室まで、京一を引きずって行く音が時々聞こえるくらいだ」 「え?醍醐クンとこまで!?…ホント、ご苦労だよね。誰かと違って人間出来てるっていうか…」 小蒔と醍醐のしみじみとした物言いに、龍麻も思わず箸を持つ手を止めてしまう。 「京一を引きずっていった時は凄い形相だったけどな」 その時のことを思い出して笑う龍麻に、小蒔も応じる。 「そりゃ、京一は逃げ足早いからね〜。二年の頃から結構有名だったよ、剣道部名物追いかけっこ」 「小蒔、余計なこと言ってんじゃねーよっ!」 低く唸る京一を取りなすかのように、葵がふふっと笑った。 「けど、やっぱり練習試合には部長も参加しないと、ね」 なんのかんのと口喧しい剣道部副部長が、実は京一に心酔しているのは結構有名な事実だ。練習試合ともなれば、引っ張り出したいのは当然のことだろう。それが解っている分、京一も今回は逃げられなかったらしい。 「ったく、面倒なのによ…」 よほど試合が嫌なのか、ぶつぶつと未だおさまらない風の京一に、龍麻は小さく息を吐く。 「そんなに拗ねるなって。ラーメン不味くなるだろ?」 「わーってるよッ」 それでも膨れている京一に、龍麻は苦笑いを浮かべた。京一が拗ねているのが、その試合の日にちょっとした遠出をしようと約束していたからだと知っているから、尚更笑みは複雑なものになる。 「ま、たまにはちゃんと部活もしねーとな、部長サン?」 「そりゃ、わーってっけど…」 人目があるところでそれ以上は言わないものの、不満を訴えてくる目が酷く愛おしくなる。 「応援に行ってやるから」 それを聞いた途端、京一の表情がぱあっと明るくなった。 「え?ひーちゃん、マジで?」 「ああ、来週だろ?けど、絶対勝てよ?」 「勝つ勝つ!ひーちゃんが来るんなら絶対!」 「しかし京一、相手は鎧扇寺だろう?あそこの剣道部は全国でもそれと知られる程の有名所だと聞くぞ?いくらお前でも気を抜いたら…」 戒めを語る醍醐の腕を、小蒔がちょいちょいとつつく。 「醍醐クン、聞いてないって」 「……そうだな」 龍麻に向かって勝利を約束している京一には、確かに醍醐の声など届いてはいない。 その様子に、小蒔があーあ、だらしない顔と肩を竦めた。 「そういや、副部長に聞いたことあるよ」 小蒔の言葉に、葵が首を傾げる。 「なあに、小蒔?」 「三年になってから、京一が捜しやすくなったって」 「……?どういうことだ?」 「ひーちゃんがいるとこに、いっつもあの馬鹿もいるってこと」 小蒔の言葉に、醍醐と葵は納得の顔になる。 「それは…確かにな」 「仲がいいわよね、ふたりとも」 「良すぎだよね。ひーちゃんに京一の馬鹿が移ったらどーすんのさ!」 憤る小蒔に、醍醐が笑って言った。 「ははっ、練習試合、俺達も応援に行ってやるか?龍麻ほどは歓迎されないかもしれんがな」 「あら、きっと京一君は喜んでくれると思うわ?」 おっとりと言う葵に、小蒔が顔に疑問符を貼り付けて首を傾げた。 「そうかなぁ?…ま、いいや!負けたら京一に奢らせてやろうねッ!」
試合は、真神の体育館で行われる予定だった。日曜、それも宣伝をしている訳ではないのに、校内には異常に人の数が多い。真神の生徒だけではなく他校生、対戦相手の鎧扇寺の生徒以外の制服も多かった。 「…なんで、こんなに人が多いんだ?」 首を傾げる龍麻に、葵が答える。 「京一君が試合するのは久しぶりだからじゃないかしら」 「…京一が試合すると、何でそんなに?」 不思議そうな龍麻に、葵は笑った。 「だって、やっぱり人気があるから」 「そうそ、ちょっと信じられないけどね。普段からは想像できないけど、結構格好いいんだよ、あの馬鹿」 混ぜっ返す小蒔に、醍醐も頷く。 「まあ、あれで真面目に部活に励めば、な」 醍醐でさえ苦笑しながらも認めるのに、龍麻は少し驚く。 「へぇ…そんなに?普段の姿からは想像出来ない…。それに、結構男も多くないか?」 確かに、校内には明らかにそれ狙いのカメラを持った女子の姿も多いが、同じくらい、良い体格の男子の姿も多い。 「女の子にも人気があるけれど、余所の高校の剣道部員も多いみたいね。技量は有名だけど、あまり大会とかには出ないから」
生徒会長などをやっている葵は見た目に反して随分な情報通で、今回も色々な所から話を聞いているらしい。それに同意するように小蒔も頷く。 「だから、もうちょっと真面目にやればいーんだけどねぇ」 そういえば、龍麻は未だに京一が真面目に部活をしている姿をまともに見たことがない。 そう言えば、小蒔が肩を竦めた。 「ま、見たらわかるよ。あれで不真面目でさえなけりゃな、ってのがね」 そこへ、 「よぉ、来たのかよ」 その声に振り返って…龍麻は一瞬、目を細めた。 「へぇ、そういうカッコしてるの見ると、結構マトモ」 「結構はねェだろ?」 そう言って京一は笑ったが、龍麻の方は内心穏やかではなかった。 (ちょっと…意外) 袴姿の京一は、意外なほど新鮮に龍麻の目に映る。いつもの紫の袱紗は一緒だが、着ている物一つでこんなにも違うのか、と思うほどに今日の京一は凛々しく見えた。 それを見越したかのように、京一が龍麻の耳に口を寄せてくる。 「へへへ、惚れ直した?」 小声でそう囁いてきた京一を、 「馬鹿言ってんじゃない」 と軽く躱しながらも、龍麻の心拍数は上がりっぱなしで。 (やっぱ、見慣れないから…か?) 早くなった鼓動の訳をそう言い訳して、龍麻は京一を小突いた。 「さっくり勝てよ、折角見に来たんだからな?」 「おぅ、任せろ。速攻で決めてやっから」 「折角応援に来たんだから、負けたらラーメンだからねっ!」 「ちょっと待て小蒔っ!」 「ああ、いいな、それ。みんなに一杯づつ」 龍麻が笑えば、京一はがっくりと首を落とす。 しかし、ふと思いついたように、京一はにやりと笑って再び顔を寄せてきた。 「じゃ、勝ったら御褒美、期待してイイ?」 「………っ」 その、少し低い声に、咄嗟に言葉の出なかった龍麻だったが、それを隠すかのように絶妙のタイミングで醍醐が声を掛けてきた。 「京一、いい加減行かないと、あっちで呼んでるぞ?」 見れば、体育館の入り口からこちらを窺っている一団がある。 「ちっ、しょーがねーな…その話は後で、な」 くしゃくしゃと髪を掻き回すと、最後の言葉は龍麻の耳に囁いて、京一はそちらへと戻っていった。 「ひーちゃん?」 「ん?なに?」 「…顔、赤いよ?」 「そうかな?」 小蒔の指摘に、龍麻は笑って誤魔化すのが精一杯だった。
試合が始まる頃には、体育館には結構な数の人間が集まっていた。 「凄い人ね…」 「これで負けたら赤っ恥だぞ、京一」 「確かになぁ…」 そんな言葉も、今の龍麻の耳は素通りして行ってしまう。 同じような袴姿でも、京一と他の部員とは一目で見分けがつく。その存在感の違いは明らかで、龍麻はそれから目が離せない。龍麻の視線に気づいたのか、ふと京一がこちらへと視線を向けた。にっと笑ってみせるその様に、やはり胸が騒ぐ。 (…ヤバい) 頭の隅を過ぎった予感は、この後確実に龍麻を苛む事に、なる―――
全国区だけあって、鎧扇寺の剣道部は強かった。勝ち抜き戦形式で行われたそれは、二人負かすのが精一杯で。しかし、大将として面を着けた京一はまるで揺るがない。 それは不思議な感覚だった。構える姿など見慣れている筈なのに、木刀ではなく竹刀を握る京一の姿は、何かが違う。 面で、表情は見えない。けれどその下の表情ははっきりとわかる。真剣で、目の前の何もかもを逃さない顔で――― その、気迫だけで相手を威圧している。ゆらりと揺れた剣先を違うことなく、打ち込まれる鋭い突き。 「一本、そこまで!」 声と共に歓声が響く。その歓声すらも、今の龍麻には遠かった。ただ、目を奪われて逸らせない。 飛び散る汗、それだけにも眩暈に近いものを覚える。息が上がって、汗が飛んで――― (………っっ!) ずきりと、身体の奥から生まれる熱の理由など、確かめるまでもない。それを何とか押さえ込んで、龍麻は息を吐いた。 (…何、考えてんだ。しっかりしろ…っ) 何とか気を逸らそうとしても、圧倒的な京一の『存在感』がそれを許してくれない。そして、目を逸らす事も許してくれない。 副将戦に旗が掲げられた時、龍麻は我慢できずに席を立った。 「龍麻?」 「…ちょっと、トイレ」 言い訳が洒落にならないところが笑えなかったが、そう言い置いて龍麻は体育館から逃げ出した。
逃げ込んだ先は、体育館裏の木の上。しょっちゅう京一が昼寝に使っている場所だ。歓声が聞こえるそこで、龍麻は目を閉じて気を落ち着かせる。 「ちょっとだけ…」 ここで少しだけ、この熱を冷まして、それから…そこで目を閉じた龍麻の意識は、覚えのある声によって引き戻された。 「ひーちゃん?」 足元から呼びかける声に、龍麻は驚いて目を開いた。 「京一?」 見れば、足元で京一がこちらを窺っている。 「何してるんだよ、んなとこで」 「お前こそ、試合はどうした?」 それを聞いて、京一の眉が不機嫌に寄せられる。 「あー、やっぱ途中から消えただろ、お前!折角俺が華麗な勝ちっぷりを披露したってのに!」 どうやら、少しの間寝ていたらしい。 「別に、消えてたって訳じゃ…」 言いかけて龍麻は、京一の姿に目を止める。胴着は流石に外しているが、袴姿のままだ。そして、額に光る汗――― 龍麻は身を起こし、ひらりと地上へと飛び降りた。 「ひ、ひーちゃん!?」 そして、驚いたように固まる京一の腕を掴む。汗でまだ濡れている腕はほんの少し熱かった。それを引いて、死角になっている木の陰に連れ込む。 木の幹に身体を押しつけるようにして立たせ、汗で張り付いている髪に手を突っ込んで掻き回せば、ぷんと汗が匂う。それにすら熱くなる身体が妙に滑稽で、龍麻は笑った。 「ひーちゃ…」 「お前が、悪いんだからな?」 そう囁いて、唇を奪う。いつもとは逆の体勢、逆の位置からのキスは触れるだけのものでも妙に新鮮だった。
そう、お前がいけないんだよ。折角逃げてたのに、そんな格好でまた、俺の前に出てくるから―――
「我慢、できなくなった」
そっと唇を離してそう囁けば、京一は一瞬驚いたように、それからにっと笑って龍麻の腰を引き寄せた。 「それ、御褒美?」 「なんでもいいよ。だから―――なぁ?」 早く寄越せと視線に含めて見上げれば、京一は笑って唇を寄せてきた。 「いいぜ、ひーちゃんの好きなだけ」 最後まで言わせずに、龍麻は京一の唇を塞いで黙らせた。
合わせの間から手を滑らせると、前は簡単にはだける。喉元に口づけ、現れた胸板に舌を這わせれば、お返しとばかりに京一の指もシャツの下に潜り込んでくる。 その刺激に、二人の身体はじきにずるずると木の根元へ崩れる。 胸の飾りに歯を立てれば、京一の指も負けじと龍麻のそれを摘み上げる。途端に震える身体が制御を失いそうで、龍麻はじっとその感覚をやり過ごした。 「今日は、随分…積極的、だな?」 上がる息に、京一もまた平静では居られないことを読み取って龍麻は笑う。 「これ、このかっこ。これが悪い」 そう言いながら、袴の脇から手を差し入れて、既に熱くなっている京一自身を握りこむと、微かに京一が声を上げた。 「…ぅ…っ」 その声に、自らも追い立てられて、龍麻はもどかしく袴の紐を引いた。 「こんな、かっこで…脱がし易い…しっ…あっ」 龍麻の息が上がるのは、京一の手がズボンに忍び込んで悪戯している為だ。熱を持った自身を掠めるように撫で上げられて、それだけで息が詰まる。 「ふーん?じゃ、いつもこれ着てたら、ひーちゃんが積極的になってくれんの?」 悪戯っぽく笑う京一の唇に、龍麻は噛み付くように口づけた。 絡めた息が、どうしようもなく熱い。こんなに、落ち着きなかったっけと思う間もなく、熱が更に上がるのは、お互いに貪り合う、その感覚にこそ酔っているから。
「ん…っはぁ…」 「…っ」
口づけを交わしながらも、まるで競い合うかのように、互いを煽る手の動きは激しさを増していく。それに先に耐えられなくなったのは龍麻の方だった。
「んんんっ…も…きょうい、ち…」 「へへ…降参?」
笑う京一が小憎らしかったが、燻った熱はもう、どうにも行き場がない。触れられ、愛されることに慣れた身体は『それ以上』を求めて疼いている。 途方に暮れたような龍麻の眼差しに、京一は笑って止まってしまった龍麻の手を掴んで、自らの口元へと運ぶ。 「ほら」 熱い舌で指先を包まれて、その意図に気づいた龍麻の身体がひくりと揺れる。 「は…ぁっ…ん…」 舌先の細やかな動きも、最早龍麻を更に煽るものでしかない。 ぴちゃりと音を立てて、濡らされた指が解放されると、龍麻はそれを躊躇うことなく自らの下肢へ伸ばす。 絡みつく服に顰めた眉を見ていたのか、京一が笑ってそれに手を掛けた。 「腰、上げろよ?」 「…ん」 従順に京一の言葉に従った身体は、露わになった熱を持って震える欲望の証ではなく、その奥、密やかに、けれど確実に熱く侵入者を待っている蕾へと指を伸ばす。
つぷりと。
濡れた指は簡単にそこへ滑り込む。しかし、異物の侵入に伴う感覚はやはり慣れなくて、龍麻は絶えるようにきつく眉を寄せた。 そのまま固まってしまった龍麻に、京一はくすりと笑ってその欲望を撫で上げてやる。 「あ…っ」 「ほら、止まってたらこのまんまだぜ?」 その言葉に促されるように、止まっていた龍麻の指がそろそろと動き出す。 しかし、ようやく指一本を含んだそこは狭く、どうしていいのかがわからない。戦くように震える身体に腕を回して、京一はその耳に熱い息を吹き込んだ。 「知ってる、だろ?自分の身体だもんな?」 意地の悪いことを言う京一の顔を、龍麻は思わず睨み返す。 (勝手なこと…言って…) 龍麻自身よりもよく、この身体を知り尽くしているくせに、よくもそんなことをと思う。けれど、今回だけは何も言えない。望んだのが自分であることは自覚している。 「ほら…もっと奥。ちゃんとしとかねぇと、つれーだろ?」 「…ん。は…あっ」 「いつもしてるとこ、覚えてるよな?」 その言葉に、不意に京一の愛撫を思い出す。蘇る記憶に無意識に指が動いて、ある一点を掠めた瞬間、龍麻の身体はびくんと跳ねた。 「あ、あああっ!」 「へへっ、ちゃんと覚えてるじゃねーか」 京一のからかうような言葉にも、今の龍麻の耳には届かなかった。 快楽を覚えた身体は、それだけでは足らないと要求しているのに、これ以上は自分ではどうにもできない。僅かに指を動かしただけで爆発してしまいそうな自身はもう限界で、けれどこのままはあまりにも辛く――― 「ひーちゃん?」 再び固まってしまった龍麻を窺うように、京一がその顔を覗き込む。その僅かな動きにさえも刺激されて、龍麻の背がしなった。 「う…あっ」 目を閉じて、なんとかギリギリの所で堪える。しかし、限界な事には変わりなく、これ以上はと荒い息の下から龍麻が言いかけたその時だった。 「あああっっ!」 いきなり訪れた強い刺激に、龍麻の背が再び反る。己の指だけでも限界を感じていた蕾に、京一が自分の指を突き込んだのだ。 その刺激で、龍麻は呆気なく達してしまう。しかし、その余韻は続く京一の激しい動きに、呆気なく消え失せる。 「きょ…きょうい…」 「わり、限界…あんな顔、見せられたらもう駄目だ、って」 あんな顔ってどんな顔だと尋ね返す間もなく、入り込んだ京一の指が激しく動いて、龍麻の頭は真っ白になる。 「んあっ…っっ!あ…っあっ」 京一の指が乱暴に奥を探る度に、入り込んだ龍麻自身の指が一番イイ場所を掠める。その度に、仰け反ってびくびくと震える龍麻の喉元に、京一が小さく噛み付いた。 「あ…うんっ…も…もう…」 限界だと、言葉にならない息の下から視線でそう告げれば、京一の目に浮かぶのも、同じ光。 「ひゃ…っ」 ぐっと奥まで突き込まれた後、一気に指を抜かれて喪失感で龍麻の身体が跳ねる。 「どうしたい?」 この期に及んでそんなことを聞く京一を睨んでみても、誤魔化しようのない自分の状態には嘘は吐けない。 しかし、熱に冒された身体は思うように言う事を聞かない。それがもどかしくて、龍麻は京一の腕に縋り付いた。 「はや…は…やく…っっ」 それに応じて、京一の手がその入り口に添えられる。 「いいぜ?ほら」 その言葉に、龍麻は力の入らない腕でなんとか京一の肩を掴み、ゆっくりと腰を落としていく。 「ふ…あっ…うん…っっ」 ゆっくりと、身を縮めてその衝撃をやり過ごす。こんな体勢で繋がるのは初めてで、その分いつもよりも深く繋がる身体は、もう苦痛よりも快楽を訴えている。 「ん…」 もうこれ以上はどうにもならないという所まで腰を落として、深く息を吐く。肩に置いた手を首に回して縋らないともうどうにもならないほど、身体からは力が抜けてしまっていた。 「全部…入ったぜ?」 囁かれる掠れた声に、思わず身体が反応し…それが入り込んだ京一の熱をはっきりと感じ取ってしまう。 「あ、ああ…」 「行く、ぜ?」 「ひゃ…っ!ふ…ああっ」 息を吐く暇もなく、激しく突き上げられて龍麻は悲鳴ともつかぬ嬌声を上げた。 刻まれる律動に、与えられる快楽を一時も離すまいと絡みつくそこを否が応でも意識して、龍麻はきつく目を閉じる。 しかし、視界を閉じてしまえば、今度は繋がったそこから溢れる耳を覆うような淫猥な音が余計に龍麻を追いつめた。 「ぅんっ…はぁ…んんんっ」 堪えることを放棄した龍麻の腰が京一の律動に合わせて揺れ始める。 「今日のひーちゃん…すげ…」 その掠れた声に、不意に龍麻は我に返った。 頬を撫でる風、枝の隙間から零れる日差し、遠くで聞こえる声――― (こんなとこで…っ) そう思った途端、沸き上がったのは羞恥と、それを上回る熱。 それを感じ取ったかのように、京一の突き上げが早くなる。 「気ィ…逸らすなよっ」 その声に応えるように龍麻の動きも早くなる。 「もう…っ!ああっっ!」
「うわ…ぐちゃぐちゃ」 正気に返ってみれば、京一の袴は見事な惨状を晒していた。 「…ごめん」 主に汚したのが自分であるのは確かなので、龍麻は俯いたまま謝る。まともに京一の顔が見られないのだ。 (もう、ホントにどうしたんだか…) 「ま、人目を避けて部室に帰りゃ制服あっから、いーけどよ」 それより…と、京一は龍麻の背に腕を回して引き寄せた。 「今日はすげー積極的だったよな、ひーちゃん」 語尾にハートマークのつきそうな弾んだ声に、龍麻は脱力して京一の胸にぼふんと顔を埋めた。 「ま、たまにはな。御褒美だよ。勝ったから」 「あーそういや、なんで途中で抜けたんだよ?大将戦の前に抜けただろ?」 鋭い京一の指摘に、龍麻は何でもない風に、軽く言う。 「野暮用だよ。けど、勝ったのはわかったぜ?歓声が聞こえたしな」 そう言いながら、龍麻は胸の裡で呟く。 (ホントの理由―――袴姿の京一に欲情したなんて、絶対内緒にしとかないとな…) そんなことが京一に知られようものなら、後が恐ろしいことになる。 しかし、京一の胸にぐったりと頬を寄せている龍麻は、京一がにやりと笑っている事には気づかなかった。
(へへへっ、ひーちゃん、自分でこの格好が悪いつったの、忘れてるよなァ…コレは暫く使える、かも…)
それから一時、真神学園の練習試合の回数が飛躍的に増え、近隣の高校が総なめにされるという事態が発生することになる―――
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