| 街の見廻りを兼ねてぶらぶらととある人気の無い路地を歩いていた時。 龍斗が唐突に一言呟いた。 「そうそうお前今日から当分、一切の『行為』禁止な」 小さな声だがきっぱりはっきりと断言した龍斗のこの科白に、この言葉を投げ掛けられた当の本人の京梧は一瞬自らの言葉を失った。大きく瞳を開き、無意識に数回瞬きを繰り返す。 ここで言う『行為』が何の事を指すかはこの二人の間では最早暗黙の了解事項で。 其れを脳内で理解した次の瞬間には、京梧は明らかな抗議の意の籠った声で叫んでいた。 「ええぇぇぇえぇぇ〜〜〜〜〜ッ!!?何でだよッ!」 「大声出すなよッ、ここ往来なんだからな!」 べしと声の主の頭を軽く叩いて、自分も先刻よりはやや大きな声で早口で注意を促す。 自分から往来で会話を切り出しておいて余りと言えば余りな対応だが、京梧の声で自分達の方を振り返った数少ない往来人達の視線の事を考えれば、其れは至極当然の対応とも言えよう。 叩かれたとは言え軽くだった為、対した痛手も受けていない様子で、それでも若干恨めしげに龍斗を睨む京梧を見、多少ばつの悪さを感じた龍斗が少々たじろぐ。 「なァ、何でだよ。大体こんな唐突に……」 「何でも糞もあるか呆けッ!毎回毎回毎回見境無く際限無くヤりまくりやがって!! 一寸はこっちの身にもなって考えろっつんだよ、ったく……」 「だってよ〜出来る機会なんてそうそうねェし、出来るとなれば思い切り悔い無くヤっときたいし……」 「それが駄目だッつってんだよこの猿ッ!!」 再度質問を重ねる京梧に、口調を荒げ、言外に「俺の身体が持たないから考えろ」と告げる龍斗。 だが続けて加えられた京梧の言い分に、今度は思い切りの力を込めて、叩くと言うより寧ろ殴るに近い感じで拳を振るい、京梧を其の場に沈黙させた。 はっきり言って龍泉寺は大所帯である。 男部屋には龍斗に京梧に生真面目な僧侶……つまりは雄慶。 女部屋には実直なくのいち・涼浬に、敬虔な切支丹・ほのか。 部屋に随時居るわけでは無いが、頻繁に食事を作りに訪れる秀麗な隠れ切支丹・美里に、明朗快活な弓使い・小鈴が泊まっていく事も多々あったり。 其れにそもそもこの寺の主である彼等『龍閃組』の元締めの女性・時諏佐も居る。 ……もし彼等の言う『行為』が知れた暁にどの様な反応が返ってくるかは……押して知るべしである。 故に寺で其の様な『行為』に及ぶにはかなりの規制が引かれているに相違無く。 それ故京梧の言い分が全く分からないとか間違っているとかとは、同じ男である龍斗だって思わないし、断言するつもりは更々無い。 無いのだが。 だからと言って、じゃぁ今の龍斗の立場から考えてみれば。 際限なく事に及べば、必ず翌日に支障が出る程に身体のあちこちに負担が掛かってくるのだから、制限を入れたくなる気持ちが生じたとて、其れは至極道理な事であろう。 もっと手加減して欲しいと最中に伝えた所で、興に乗っている状況の京梧が其の言葉を聞き分ける事も無く、今の今までずるずると伸びていた事柄に漸く決断を下したのだから、別に京梧の言う様に「唐突」と言う事は全然無いのである。……まぁ発言した場所から考えれば唐突かもしれないが。 「兎に角ッ!禁止ったら禁止だ、いいな京梧」 有無を言わさぬ勢いで龍斗が念を押すが、京梧も負けてはいなかった。沈黙していた筈が、がばりと伏せていた上体を起こして龍斗に異論を発す。 「いい訳あるか!俺は只大好きなひーちゃんをを好きなだけ抱いて、でもって満足させたいだけだっていうのに!」 「だぁぁぁぁ〜〜〜ッ!ここは往来だと言っとろうが!!兎に角禁止ったら禁止ったら禁止ったらき ん し だッッ!!!!」 周囲に人気が無くなったのを良い事に、くどい位に「禁止」を連呼し龍斗は大きく息を吐いた後に、肩を荒く動かしつつ改めて息を吸い直した。 一回の息継ぎも無しに大声で喚いた故のその動作を、最初は黙って見ていた京梧だったが、ふと一寸思案に暮れているといった表情をし、それから徐に口を開いた。 「……あのさひーちゃん」 「んだよ」 「一切の『行為』禁止ってよ……接吻も駄目、なのか?」 「……は?」 「だから、接吻」 「………………」 接吻、ねぇ……。 口に出す事はせず心の内でこそりと呟き、龍斗はじっと真剣に自分の方を見ている京梧にちろっと視線を移した。 本音を言えば、龍斗とて男である以上好きな相手と全く何も無いと言うのは辛いものがある。 ましてや……京梧の其方の『力量』はかなりのもので。 何時も何だかんだで龍斗の望む『もの』を満たしてくれているのは事実である。……ヤり過ぎであったとしても、満たされる事が嫌だという訳ではないのだから。 となると。 あぁは言ったものの……満たされる事に慣れてしまっている自分が本当に先の言葉を押し通せるのか、全くそういう『行為』を禁止してしまって自分が耐えられるのか。 自分の身体の事を考えての上の決断だったというのに、今更になって一抹の不安が龍斗の胸中を掠めていった。 接吻位ならば……人目気にすれば出来ない事もないだろうけれども……あぁでもっ! ぐるぐると脳内で考えを巡らせていると、此方に視線を向けたまま、ぼそりととんでもない事を京梧が口走った。 「其れくらい許してもらえねェと、俺、変に溜まって浮気するぞ」 「んな明るく公言すんなッこの呆けッ!」 「だったら、其れ位認めてくれたっていいだろ?」 「う……」 引っ叩こうと振り上げた右手首を掴まれて、少し距離が縮まった真摯な視線に射抜かれ。 龍斗は白旗を揚げる事に決めた。 ……結局、自分は甘いのかもしれない。 内心でそんな自分を呪いながらも、何処かに少しの喜びを感じている自分がいる事を自覚して一つ大きく溜息を吐く龍斗。 そしてゆるりと唇を動かし言葉を紡いだ。 「……ったく、其れだけ、だな?」 「あぁ勿論ッ!」 凄く嬉しそうな表情をして、肯定の意を示す京梧。 その表情を見つつ、本当に我ながら甘いなァと内心再度独りごちながら、龍斗は次の言葉を約束として認めた。 「分かった、接吻まで……接吻までだからな!」 「了解ッ」 この時まだ龍斗は自分の認識が如何に甘い物であったかに更々気が付きもしていなかったが。 ほんの数刻後に嫌と云う程其れを思い知らされる事となるのであった。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 漸く寺へ戻ると、もうすっかり日は暮れて夜の帳が降り始めていた。 薄らと輝きを見せ始めている星達を眺めるのもそこそこに、龍斗は風呂場へと進路を取っていた。 寺に戻り境内に入るや否や、京梧が何時もの如く風呂を誘ってきたのだが「京梧、約束忘れたか?」とにこやかに笑んで断って一人で入ろうとしている所であった。 別に『普通』に入る分には男同士で何ら問題無いのだが。 『普通』で済まないから、この場合「共に風呂」という行動は禁止事項に含まれる事になるのである。 それにしても。 内風呂があるなんて、この寺ってやっぱり凄いよなぁ……。 ……まぁ有ってくれて凄く助かってはいるんだけど。 今更な事を考えながら、龍斗は軽く溜息を吐く。 この御時世、武家屋敷にですら内風呂は希少価値で珍しく、大抵街に数箇所ある銭湯へと町人も武人も赴くのが常であり、其れこそ裸の付き合いが至極当然の様に行われている訳なのだ。 然し鬼との闘いで生傷絶えない彼等が、ほいほいと一般人のいる銭湯に出向いて傷を晒せば、どの様な目で見られるかは容易に想像が付くし、其れが元で要らない騒動をも起こしかねない。 或いはそこまで見越して時諏佐はこの風呂を誂えたのかもしれないが、この際其の様な細かな事は龍斗にとってはっきり言えばどうでもよく、只単に傷つき汚れた身体を清め癒す事が出来る空間がある事が何より重要な点であった。 「そもそも面倒臭いよな、いちいち風呂に出掛けるのはさ〜」 ぽつりと独り言を零しながら、立て付けの少し悪い脱衣場に通じる戸を無理矢理力任せに引き開け、中へ一歩足を踏み入れ。 其処で龍斗は自分の視線の先に在る物体に思わず目を疑った。 茶色い。 其れなりに其の物の図体は大きい。 そして何だか一部赤い。 ……………………………………。 其れが「猿」と呼ばれる生き物であると気が付くのに、少々情けない事に十数秒の時を要した。 「……ッたく」 龍斗は深く溜息を一つ吐き、小脇に抱えていた手拭い等の風呂用具一式を静かに床に置いて捕まえようかと考えた。 刹那。 此方の存在に気が付いた猿が、唐突に龍斗に飛び掛かってきた。 「うゎッ!」 上擦った声を上げ、その勢いに押されて思わず足を滑らせる 勢い余って後方へと倒れ込む龍斗の上に猿は遠慮なく乗っかって来て、突然の来訪者に気が動転でもしているのか、喧しく喚き、叫びながら龍斗の顔や肩やを引っ掻き回し始めた。 「痛ッ!痛いッつの、こ……んの猿ッ!!」 倒れるのを踏み止まる事も出来ず、強かに背中と後頭部を廊下にぶつけた龍斗が苛立ちを顕にした声で叫ぶ。それでも猿は乗っかったまま、離れようとせず引っ掻く事も止めようとしない。 「……こ、んのッ!!」 普段の冷静さを欠いて、勢い猿に向けて龍斗が天槍を繰り出しそうになった其の時。 「ひーちゃんッ!?」 「え、京梧ッ!?」 ばたばたと騒々しい足音を立てて、京梧が先の部屋の角から姿を現した。 其れを見て龍斗は素っ頓狂な声を上げ、猿はびくりと一度身を震わせた後、漸く龍斗から離れ、慌てた様子で庭の方へと走り去っていった。 「……この辺の山に住む野猿か?……まさか風呂に入りに来た訳じゃねェだろうな」 猿が離れた事で多少歩みの速度を緩めて龍斗に近付きながら、京梧がぼそりと妙な事を口にする。 「京梧、だよな?」 自分に歩み寄る相棒の事を見上げ確認する様に呟く龍斗に、京梧が怪訝な表情と声を返して寄越した。 「あ?何言ってんだよひーちゃん」 怪訝な顔をしたまま、ほれ、と床に座り込んでいる龍斗を立ち上がらせる為に、自らの手を差し伸べてくる京梧の好意に素直に応じ、龍斗は其の手を掴んで腰を浮かせ、立ち上がりながら京梧の疑問に答えるべく口を開く。 「いや、俺てっきり……あの猿お前だと思って 「は?」 「呪詛状態のお前だと」 言葉の出ない京梧に、続けて「猿になってまでお前が俺と風呂入ろうかと考えてるのかと思って……」と、至極真顔で言い放った龍斗の其の言葉が何とも気まずい空気を其処に生み、京梧ががくりと深く項垂れる。 「…………ひーちゃんさァ、俺の事一体なんだと思ってんだよ」 「いや……その…………悪かった」 流石に其れは勘繰り過ぎだったかと、素直に謝罪の言葉を口にする龍斗。 実際の所心の中で京梧が「猿状態でひーちゃんと一緒に風呂入ったって、正体ばれてるんじゃ意味無いじゃねェか。……猿でナニが出来る訳で無し」等と考えていたとは露知らず。 「ま、いいけどよ。……其れよりひーちゃん、傷」 「あ、あぁ……あの猿思いっきり引っ掻いて行きやがって……痛っ、思い出したら痛み出してきた」 「見せてみろよ」 言われ、右の頬に触れていた龍斗の手は京梧の手に掴まれてそっと其処から剥がされる。 爪で引っ掻かれた痕が、薄らと赤く心持ち腫れ上がり始めており、中々に痛々しい傷が縦横無尽に拡がりを見せていた。 良く見れば其れは頬だけでは収まらず、上半身における服を纏っていない部分……首筋や胸元に肘より先の腕の部分、そして肩口等は服の上からも引っ掻かれており、布地が傷んでいるのが容易に見て取れる。 痛みに気を取られ少々俯いていた龍斗だったが、急に視界が翳ったのに気が付き顔を上げた。 次の瞬間には傷口に暖かいものの触れている感触が龍斗の触覚を刺激していた。 「え……て、ひゃッ」 頬の傷痕を生暖かい何かが軽くなぞり上げるその触感に、龍斗は思わず上擦った声を上げる。 「へへへ、消毒ってな」 ふっと開けた視界に入るにやけた表情の京梧とその台詞で、先の「暖かい」「何か」の正体を瞬時に悟り、視線の先にいる人物を軽く睨み付けながら龍斗は忠告を口にした。 「こら京梧ッ、約束……ッ!」 「え、何で?だって此れは……接吻だろう?」 「う……ッ」 「こっちも……あぁここもだな」 「……んッ、こら……」 飄々と言い返され、言葉に詰まる龍斗。 二の句を何とか告げようとする龍斗の瞼に、目尻に優しく幾度も京梧の唇が落とされるのを感じ、返す言葉に微かな甘みが籠る。 ……これじゃァ意味ねェだろ〜〜〜〜ッ!! 止めるつもりの声でも、甘みなどが籠ってしまえば其れは只単に京梧を煽る要因にしか成り得ない。 「止め……京、梧……ッ。雄慶、とか……帰ってきたらどうす……」 「平気だって……」 ちゅ、と殊更大きな音を立てて左の頬の傷に唇を沿わせながら京梧が応じる。 「雄慶なら金剛のおっさんの所行ってるからもう少し遅くなるだろうし、涼浬ちゃんは骨董品屋の片付けが終わらないから泊まりだって言って先刻出て行ったし、ほのかは昨日から世話してる長屋の人間が病に倒れたかなんかで看病に行ってて居ないし……百合ちゃんも今日は遅いって言ってたし」 ほら、平気だろ?と視線で問い掛ける京梧に、平気な訳あるか呆けッ!と言ってやりたいのだが。 ……力が入らない。 傷に熱を感じる度に其の部位に刺激を感じ、ほんの微かにではあるけれど身体がぴくりと反応を示す。 額、瞼、目尻、そして頬。 傷は負っていないと言うのに、耳朶も。 少し動いて首筋……そして肩口へと接吻の雨が静かに降り注ぐ。 緩慢に、決して焦らずに。 一つ一つの傷に丹念に接吻を施す京梧の唇から感じる仄かな筈の熱が、回数を経る毎にどんどん熱い物へと変じている様な……そして其れと同調するかの様に自分の身体が熱くなり始めているている様な感覚に陥って、龍斗は溜まらず零れそうになった声を噛み殺した。 「あれ、何だよひーちゃん……感じてるのか?」 「な……違……ッ!!」 『変化』を目聡く京梧に悟られ、揶揄の観のある台詞を投げ掛けられ慌てて否定の言葉を返すが、艶を帯びた掠れ声では説得力は皆無に等しい。 其れが証拠に微塵も龍斗の否定の言葉を信じていない様で、「へ〜?」と尻上がり調の相槌を返して寄越しながらにやりと不敵な笑みを唇の端に浮かべる京梧に龍斗は睨みをきかすが、其れも大した効力は無い様である。 「そうだよな、俺接吻しかしてないもんな。接吻だけで感じてる訳……ないよな?」 「…………じて、ないッ!」 「へ〜……そう。でも、こっちはそうは言ってないぜ?」 殊更大きな音を立てて、胸の飾りが薄い衣服越しに京梧の唇に含み込まれる。 軽く其処に歯を立てられ溜まらず短い声を漏らす龍斗に、意地の悪い笑いを零す京梧が彼の羞恥を煽る言葉を投げ掛けた。 「へへへ……ほら、正直だぜここは」 言って再度固さを増し張り詰める突起に唇を寄せられ歯を立てられる。 「ん……や、止め……ッ」 「……聞こえない」 「聞こえない」じゃなくて「聞いてない」の間違いだろう!と、ツッコミを入れてやりたいのだが、噛み付く様に唇を食まれて言葉を奪われ、其れは叶わない。 薄く開いた龍斗の唇の隙間に躊躇無く京梧の舌が滑り込み、龍斗の其れを探す様に動いてくる。一瞬形を顰める事を躊躇した其の僅かな時間で、あっさりと捕らえられ絡められる。 「んん……ッ」 接吻の合間の息継ぎの時に零れる声も先刻以上に甘く艶めき、其れが一層相手の気持ちを煽る結果となり、更に深い接吻を施される。 ううううう〜〜〜〜ッ京梧の奴〜〜〜〜〜〜ッ!! 心地良い接吻の感覚に弄ばれながら、心の中で龍斗は毒づくが、然し実際の所本当に京梧は『接吻』しかしていない。 つまり龍斗との『約束』は破っていないのだ。 そう、破ってはいない。 のだが。 いつも以上に丁寧に、優しく幾度も幾度も接吻を施され、此れだけ煽られていればもう『行為』と大差ない気がして仕方が無い龍斗である。 『接吻』だけと、確かにそういう約束だったが。 ……しっかりしてやられたと言った所か。妙な仏心出さなきゃ良かった……。 と心の中で今更悔いても時既に遅しである。 龍斗の身体は既に充分すぎるほどの熱を帯び始めている。 其れは京梧の今現在進行中の行為だけに縁る物でなく、接吻の先に通常ある、其の先に感じられる感覚が何であるかを十二分に龍斗が認識しているから……無意識の内に其れを思い返し反応を示しているに他ならない。 其れなのにこのまま接吻だけで熱だけを上げ続けられ、其の先を感じられないのでは堪らないと。 頭の片隅で考えている自分が居る事を認め、……龍斗は意を決した。 理性が拒んでも、身体が拒みを見せないのならばと。 「…………京、梧」 長く深い接吻から解放され、少し荒くなった息を整えながら龍斗は呟き、今迄自分から引き剥がそうと京梧の肩に掛けていた両の手をするりと動かし京梧の首の後ろへと回した。 急な龍斗の態度の変わり様に、少し怯んで京梧が接吻攻勢を一旦止める。 「ん……?どした、ひーちゃん?」 「……『約束』の、開始時期……だけど」 そこまで言って龍斗はちらりと視線を京梧の其れと絡め、次の言葉を唇に乗せた。 「明日から、にずらしてやるよ……」 一瞬龍斗が何を言っているのか分からなかった京梧が、二〜三回目を瞬かせるが。 意味を理解した瞬間に、京梧の口元に、表情に、してやったりという笑みが浮かぶ 「で?俺はどうしたらいい訳……なァ『龍斗』?」 意地悪く『名』を呼び尋ね返す京梧に、……俺の方に言わす気かこの野郎ッと一瞬怒りに似た感情が胸中を掠めていくが、本当に其れは刹那の出来事で。 「今日は……このまま……」 次の瞬間にはそう呟き、龍斗の方から求める様に京梧の唇に自分の其れを押し当てていた。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 「いいか京梧ッ!明日っからは本当に問答無用で黄龍ぶちかますからな!?」 言っている事は物騒だが、現在二人は一つ布団の中に居て、『行為』の後全開状況でのその発言は大層効力がないものである。 しかも龍斗自身が掲げていた『約束』を自ら撤回し及んだ『行為』の後での御本人の発言となれば尚更である。 其れが分かっているからか普段なら不平を漏らす京梧が「はいはい分かった分かった」と実に軽いあしらいを返して寄越すので、龍斗には其れが癇に障った。 「あぁ、其れと。明日からはこんな事にならない様に接吻も当然禁止するから覚えてろよッ」 上目遣いで京梧を睨みつけながら再び『約束』を口にする龍斗に、咽喉の奥でくくッと笑いを零しつつ怯まずに京梧は応えた。 「出来るもんならどうぞ、本当に其れでひーちゃんが『大丈夫』なら、な?」 「……お前、其れすっごいむかつく……」 額に振り落ちてくる黒髪を優しく人差し指で掻き揚げられながら、龍斗は反論するに反論できない悔しさを端々に滲ませる憎まれ口を叩き、余裕の笑みを浮かべている目の前の自分の恋人に恨みがましい視線を向けた。 本当に『約束』が実行され、守り通せたのかどうかは、また別の話…………。 <終幕> |
| あすかながるさまのサイト「Rubbish〜N side」の300HITを踏み抜いて奪取したSSvv 某チャットで盛り上がった「言葉責め京梧」を書いて下さいました! 『接吻』でココまで色っぽいとは流石です♪幸せ〜よく踏み抜いたわ、私!←違 「力量」目一杯、しかも確信犯な京梧に、言葉もございませんです…あああ、ラブ! あすかさん、本当にありがとうございました!! |