■ 日本犬 Japanese dog
  ~天然記念物~ 日本犬

  日本国では、国内に存在した日本犬種のうち“6犬種”が、昭和6年から同12年にかけて、順次、国の天然記念物に指定されました。
 これを“日本犬”と定義して、日本犬保存会をはじめとする各犬種の保存団体が、その純血を絶やさないよう活動されています。
 その6犬種とは、
    “大型犬”に分類される
      ① 秋田犬
    “中型犬”に分類される
      ② 甲斐犬 ③ 紀州犬 ⑤四国犬 ⑥ 北海道犬
    “小型犬”に分類される
      ④ 柴犬
です。 (※番号は国の天然記念物に指定された順)
 これを機に “日本犬=6犬種” と言われるようになったのです。
 しかし、これは現在“日本犬保存会”が定めた「日本犬標準」に名前が挙げられている犬種であり、古くから日本にはそれぞれの地方独特の“地犬”が数多く存在しました。
 細かく分かれていたこの犬種を“大きく分けて”総称するようになったのが“日本犬6犬種”です。
 例えは悪いですが、人間でいうと、我々日本人も
     日本の北方に住んでいた
     “樺太アイヌ”・“千島アイヌ”・“北海道アイヌ”・“東北アイヌ” 等
のアイヌ民族の人々を総称して
     【北方縄文民族】
とし、北海道の一部、本州から九州にかけて住んでいた
     “大和民族”・“蝦夷”・“熊襲”・“出雲民族”・“隼人” 等
の人々を総称して
     【弥生民族】
そして、沖縄や諸島に住んでいた
     “琉球民族”・“琉球原住民” 等
の人々を
     【南方縄文民族】
として、いくつも分かれていた民族を学説は大きくまとめています。
(※ 学説は諸説あり、管理人もこれが正しいかどうか分かりません。ご了承を)
 今では、日本国籍を有していれば、どの民族もどの系統の人も、全て“日本人”に違いありません。
 犬の場合、紀州犬を例に挙げると、以前紀伊半島には
       「熊野犬」
       「高野犬」
       「太地犬」
       「那智犬」
       「日高犬」
       「明神犬」
と呼ばれるそれぞれの地方の“地犬”が存在しました。
 昭和9年にその全てを国の天然記念物に指定する際、総じて“紀州犬”と称するようになったわけです。
 ですから、決して昔から「日本原産の犬の種類は6種類だけ」という意味ではではありません。
 事実、この6犬種以外にも、沖縄県の天然記念物に指定されている「琉球犬」や、長野県の天然記念物に指定されている「川上犬」をはじめ、10種類以上もの犬種がその土地の“地犬”として、現在も保存活動が行われています。
 それらの犬種が何故日本犬と呼ばれないのかという理由はよく分かりませんが、【日本犬種】には違いないと思います。
 ただ、保存活動がされているものの
     ・実際には純血個体が既に絶滅したため、その犬種の血液を
      受け継ぐ犬を使って「戻し交配」を試みるなどして再作出が行われた犬種
であったり
     ・絶滅したと言われていたが、ある時 “純血個体と思われる” 犬を発見し
      これを使って繁殖させた犬種
また、
     ・明らかに原産地の違う犬種が掛け合わされて固定化された犬種
等、その血液が純血なのか否かはっきりしない犬種も多く、これが“日本犬”と定義するには難しいという理由の一つではないかと思います。
 この観点から、現在、国の天然記念物に指定されている6犬種以外に、今後日本犬の新犬種が出現することは無いといえます。
 しかし、純血個体が存在するが数頭しか残っていない犬種、純血個体が雄のみしか残っていない犬種等、純血個体の保存が極めて困難で絶滅が危惧される犬種があることも事実で、保存活動をされている方々の成功を祈るばかりです。
 また、越中・越前・越後が原産の
   「越の犬」
も、昭和9年12月には国の天然記念物に指定されましたが、昭和46年に最後の純血個体が死亡したことにより絶滅してしまいました。
 その他にも、天然記念物の指定は受けていないが、既に絶滅してしまった日本犬は分かっているだけでも10種類以上の犬種があります。

日本犬6犬種

【大型犬】
秋田犬
  秋田犬(あきたいぬ)
秋田県で闘犬や狩猟犬として飼育されていたものを品種固定した犬種。
毛色は主に赤(茶色)、虎(黒色)、白色。
三角の立ち耳、巻き尾などが特徴。
闘犬・狩猟犬として飼育されていたことから、身体能力は高く、力も非常に強い。
主人には非常に忠実で、あの有名な「忠犬ハチ公」は秋田犬である。
雄の標準体高は67cm、雌は61cm。
【中型犬】
甲斐犬
  甲斐犬(かいけん)
山梨県原産。
昭和4年、甲府地検に赴任した安達太助氏に発見された。
その後、有識者により現地調査が重ねられ、群生していた甲斐地犬を調査し、「飼い犬」(かいいぬ)と混同されないよう「かいけん」と命名され保存活動が始まった。
飼い主以外の人間には心を開かず、飼い主に一生忠誠をつくすことから“一代一主の犬”といわれる。
甲斐犬は虎毛が大きな特徴で、色合いに応じて
虎(中虎)、黒虎、赤虎に分類される。
尾は差し尾、または巻尾で、舌斑をもつ個体も少なくない。
耳は他の中型犬と比較してやや大きめで、前傾角度もやや浅いのが特徴。
日本犬種のなかでは中型と小型のあいだの大きさで、体高は、中型犬の標準とされる雄の標準体高52cm、雌49cmよりも2㎝ほど低いとされる。
実際にはオスは48㎝前後、メスは45㎝前後のものが多い。
 【中型犬】
紀州犬
  紀州犬(きしゅういぬ)
和歌山県、三重県の紀伊半島一帯が原産。
猪や鹿の狩猟で使われていた土着犬を品種固定した犬種。
日本犬の中では柴犬に次ぐ飼育頭数である。
昭和初期頃までは、白よりも胡麻毛の犬が圧倒的に多かったが、現在では白毛のものがほとんどで、虎・胡麻等の有色紀州犬とその数は逆転している。
尾は「巻尾」、「差尾」(さしお)が多く、背上に差している「薙刀尾」「太刀尾」「たたき尾」と呼ばれる尾を持つ犬もある。
大型動物狩猟犬としての特性上、無駄吠えが少ない。
飼い主には極めて忠順であるが故に、自分や家族に害を及ぼす相手に対しては一切容赦しない。
【中型犬】
四国犬
四国犬(しこくけん)
四国地方(主に高知県)原産。
猪や鹿の狩猟に使われていた。
昔は土佐犬(とさけん・とさいぬ)と呼ばれたが、「土佐闘犬」と間違われることが多く「四国犬」と呼ぶようになった。
天然記念物としては「土佐犬(とさいぬ)」で指定されている。
元々、本川系、幡多系、安芸系と呼ばれる地域特性があった。
他の日本犬と比べ、表情が鋭いのも特徴の一つ。
野山に放された本犬を見て、狼と間違えられることがある。
毛色は主に胡麻色(黒胡麻毛、赤胡麻毛)。
警戒心が強く、主人には忠実である。
【中型犬】
北海道犬 
 写真がありません。

某、携帯電話会社のCMに出てくる
お父さん

あれです
北海道犬(ほっかいどういぬ、ほっかいどうけん)
アイヌ民族が飼育してきた犬種で、アイヌ犬とも呼ばれる。
縄文時代初期、縄文人が本州から北海道へ渡る際に同伴したマタギ犬(山岳狩猟犬)がルーツだと言われる。
ヒグマやエゾシカの狩猟に使われた。
三角形の小さな立ち耳、吊り上がった三角形の小さな目が特徴。
尾は巻尾か差尾。
毛色は、赤、白、黒、虎、胡麻、狼灰がある。
舌斑を持つ個体が多い。
日本犬らしく、飼い主に忠実で勇敢であるが、他の日本犬に比べると野性味が強い。
中型犬に分類されるが、甲斐犬同様に体高はやや低い。
反面、体重は他の中型犬種よりも重い犬が多い。
 【小型犬】
柴犬
  柴犬(しばいぬ・しばけん)
日本犬6犬種のうち、唯一の小型犬種。
日本犬としては飼育頭数が最も多く、約80%を占める。
日本国外でも人気が高い。
国の天然記念物に指定された7犬種(過去に「越の犬」が指定されていた)の中で、柴犬のみが地方名を冠していない。 
名前の由来は諸説あり
 ・柴藪を巧みに駆け回り猟をするところから
 ・赤褐色の毛色が枯れ柴に似ているから
 ・小さなものを表す古語の「柴」から
等と言われる。
一般的な特徴は、短毛・立ち耳・巻き尾(一部差し尾も存在する)
毛色は赤(茶)・胡麻、黒、で、まれに白も出現する。
縄文犬の特質を色濃く残しているといわれ、これを求めて柴犬を飼う人も多い。
小型犬の体高標準は
雄が39.5cm(38cm~41cmの間)
雌が36.5cm(35cm~38cmの間)とされる。
 
 紀州犬と甲斐犬 (いずれも幼犬)

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