Rez

United Game Artists / SEGA
PS2


 スペースチャンネル5を手がけたスタッフの新作が出る。という情報を知ったのはいつだっただろうか。セガのソフトウェア制作チームが次々と分社化されていく前だったか後だったか。ここでは分社化された後、United Game Artists(以下、U-GA)発足後ということにしておく。
 何かのテレビ番組で、U-GAを取材するという情報をネットで拾い、普段まともにテレビを見ない僕が珍しくビデオ予約までして、その番組を見た。
 内容についてはよく覚えてないのだが、まずは代表作であるスペースチャンネル5の紹介があって、プロデューサーの水口氏は今どういうゲームを作りたいのか、ゲーム制作者としてどういうことを考えているのか、等といったことをインタビュー形式で取材するというものだったと思う。
 そこでちらりと映像が流れた、現在開発中の最新作。それが「Rez」のプロトタイプだった。マネキン人形のようなキャラクタがくねくね曲がった道を走りながら敵を撃つ、といった風に見えたそのプロトタイプは、水口氏によって没にされたとナレーターが言っていた。
 ともあれ、僕がそのときに見たRezはそれっきりで、以後は発売前に雑誌でちらほらと情報を見た程度だった。

 そしてRezは発売された。発売初週の売り上げは良かったらしいが、今では980円でワゴンセールされている。しかしこのゲームは、980円で叩き売られるようなものとは僕には思えない。

 ゲームシステムは単純だ。自機を操作する必要はない。ただ照準だけを動かし、敵をまず「ロックオン」して、それを「解除する」ことで弾を撃つだけのシューティングゲームだ。いわゆるボムも存在する。
 ワイヤーフレームと、チープなポリゴンで描かれるオブジェクト。
 はっきり言って、ここまで聞いただけでは、とても面白そうなゲームには思えないだろう。
 このゲームの魅力は、自分で創り上げていかなくてはならないのだ。
 BGMはリズムやベース、あとはちょっとしたメロディが流れるのだが、敵をロックオンしたり撃破することに、何らかの音がついて回るのだ。この、自分の操作に伴う音とコントローラ(さらには別売りのバイブレータ。限定版には同梱)の振動と、撃破した敵の破片や光が、プレイヤーだけのメロディと振動と光を生み出していく。そして敵を撃破する快感。
 これがRezの魅力だ。次第にゲームに没頭していくにつれて、陶酔感が増してくる。ただ敵を撃破するだけでなく、より気持ちのいい感覚を求めていくようになる。敵をまとめて撃破する、ロックオンのタイミングをずらす、敵襲団へのロックオンを何度かに分ける……そうしているうちに、自然と頭を振ってリズムをとっている自分がいる。しかしそれにすら気づかず、画面からあふれる音と光、手元(+α)の振動に酔いしれていく。

 こんなに創造性と、陶酔感にあふれるシューティングゲームが過去にあっただろうか。おそらくはなかっただろう。

 誰もが寝静まった夜。
 ヘッドフォンをセットし、部屋の明かりを消し、大音量でプレイすると文句なしだ。完全に、自分だけのRezの世界に没頭できるだろう。

 実際に手に触れてみないと魅力の分からないゲームの代表格と言えるだろう。

2003/04/02 橋本竜也

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