センチメンタル・グラフィティ
NEC インターチャネル
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 いわゆるギャルゲーと呼ばれる類のゲームが、僕は嫌いです。その多くが、ヌルすぎる難度と薄っぺらいシナリオ、意味のないサービスシーンや媚び媚びのイラストだらけ。
 中でも、シナリオまわりは僕は物を書く人間だからか凄く気になります。話のキモと言えば告白シーンだったりキスシーンだったりし、ご都合主義と受け狙いの性格をしたヒロイン。パターンA:昔からの幼馴染みで、ずっとひそかに主人公の事を思い続けていた。が、素直にそうと言い出せない。パターンB:普段は高飛車だけども、実は家庭的な一面もある寂しがりや。パターンC:どこか暗い様子のある、無口でミステリアスな少女。病弱でも可。パターンD:ちょっと頭の出来は悪そうな友人の妹。甘えん坊。パターンE:……ってもういいですか? やっぱり? いやもう、書いてて自分で笑いが止まらねー! あとはちょっと変な性格をした奴とか、語尾が変なやつとか適当に女キャラばかり放りこんで、どっかで見たようなシステム(育成SLGとか)に落としこんだら、ほい!ギャルゲー一丁あがり!!
 こういうテイストを「ギャルギャルしい」と僕は呼んでいます。いや、常々僕は古典や王道というものを尊重するべきだとは言ってるんですが、これは問題外。結末はワンパターンでも、そこに至る過程が大事な訳でさ。コミカルでノリさえ良ければいいと言うのは賛同できないんですよ。ああもう、言ってみれば、あかほりっぽいのは駄目なんです!!(笑)(注:あかほり作品に前述のようなキャラがいるのかどうかは知らんけどさ)
 なんつーか、ペラペラの上辺だけの友人づきあい? そこからなぜか恋愛に発展? イベントとCGを見るためだけのゲームなんですか?って言いたくなるようなゲームの氾濫。SFC末期の駄作ゲームの氾濫にも似ている気がします。
 ところがですね。ギャルゲー=女の子だらけのゲーム、ではないんですよ。むろん、それは条件の一つではあるんですけど、その上でシナリオが駄目駄目で、ゲーム自体がヌルヌルの難度で、やたらと二流ラブコメだったりするものをギャルゲーと呼称したいわけです。
 またもや長い前置きだった……。ところがまぁ、いわゆるギャルゲーっぽいんだけども名作と呼ばれる物は多々ある訳です。あすか120%とかToHeartとか。ときメモも名作(2は含むけど、ドラマシリーズなどの派生作は除く。これは本編の補助作だと思ってます)ですが、これについて書くとToHeartの時に書いた「今作はファンタジーである」というくだりで共通項が生じ、あとはゲームバランスの妙と世界設定あたりを書いて終わりになるんで特に書かないことにします。
 そしてこの、センチメンタルグラフィティ(以下センチ)は、内容はペラペラだしゲームシステムも特筆することが無い、典型的なギャルゲーでありながらも、あえてここに書いておきたい名作、いや迷作……否!「珍作」なのです!
 まず、発売前が凄かった。ソフトの発表段階でキャラデザの甲斐氏の人気が爆発し、関連グッズが多種発売され、それらが爆発的にヒット。ファンの間では「ゲーム本編さえもグッズの一つ」とまで言われるようになり、「センチ」という作品があるゲーム作品を指すのではなく、グッズ販売も含めたプロジェクトネームのようにさえ思えました。
 そして公開されたゲーム画面。それは甲斐氏のイラストとはタッチが大幅に異なり、まるで何かの漫画をアニメ化する際にアニメーターの人によって描き直された……という表現が似会うグラフィックでした。事実、メーカーは「甲斐氏に描いてもらっていたのは、あくまでもゲームの世界を表現するためのイメージイラストに過ぎない」といった類のコメントを、何かの雑誌でしていたように記憶しています。
 甲斐氏のイラスト人気で盛り上がっていたところに発表されたこのゲーム画面は、それまでグッズを買い漁っていたファンの間では酷評を招きました。というわけで、それまでセンチを支えてきたファンからは評判の悪いゲームとなってしまった訳です……。
 ところで、センチはたしか97年の年末に発売されました。その頃僕が勤めていた印刷会社は、終業時間が早くても20時半(定時は18時だけども、二交替制だったので、夜勤への引継のために残業が毎日あった)という会社だったのです。が、その日はたまたま定時で仕事が終了。日本橋へ買い物に行ったら、折しもセンチの発売日。しかも財布の中が潤っていて(給料日直後)……ついつい買ってしまった馬鹿が約一名。
 んで買ってしまったセンチ。ところがこれ、侮れないですよ。
 12人のヒロインが全員、太極拳だかなんだか判らない演舞を行うオープニングから、何かを期待させるあたらしい予感。
 主人公はギャルを求めて全国各地を行脚する、まるで水戸黄門みたいな高校生。休日には地方へ遠征するし、長期休暇はほとんど放浪の旅状態。学校での友人付き合いなんかまるでなさそうな辺り、きっと孤独な学校生活に違いない! とか妙な妄想を膨らます俺。小さい頃から全国を転校しまくりの主人公の元に、「あなたに会いたい」とだけ書かれた手紙が届くところから始まる物語。思い当たる節は、これまでに全国各地に転校して行った先で出会った12人の女の子。ていうかさー、主人公は彼女ら全員に住所を知らせていたんでしょうか!? 全国を巡って再会しに行くんだけど、彼女らほとんど、主人公のことを忘れてそうなんですけど。
 あと、事前に約束していたのならともかく、例えばいきなり大阪にやってきて目当ての女の子に会える可能性なんて皆無に近いのに見つけだす主人公の執念!!(またこれが、一口に大阪と言っても範囲が広いんだ……)
 長期休暇の放浪時、家には戻らないわ宿にも泊まらないわ(野宿!)で、夏休みなんかは異臭を放ってそうな主人公!! 金がなくなれば、交通手段はヒッチハイクだ!!
 そして、イベントの発生条件が「●人以上と再会していて……」といった感じで、フタマタ・ミツマタを前提としたシステム!!(最低でも六人同時にイベントを進めないとクリア不能!!)
 ……と、なんだか妙に突っ込み甲斐のあるゲームだったのですよ。

 以下余談。このゲームの功罪トップ2は、永倉えみるという謎のキャラクタを産み出したことと、この作品から派生したアニメ「センチメンタルジャーニー」における杉原真奈美(四国編)の暴走っぷりでしょう。前者はともかくとして後者!!30分(実際には OP/EDおよびCFがあるのでもっと短い)の大半を、詩の朗読で使っちゃあマズいっしょ!


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