御神楽少女探偵団/続・御神楽少女探偵団
HUMAN
PS

 探偵ものADVの名作である。
 この手のADVには、ゲームオーバーの無いものとあるものがある。前者はいわゆるコマンド総あたりと呼ばれるタイプのものが多い。
 このゲームは後者にあたる。ゲームオーバーが存在するゲームには、ゲームオーバーの直前の場面に戻される(例:ゲームオーバーになる展開……という想像をしてしまった、という展開にしてしまう等)ものと、セーブしたポイントやエピソード的な区切りの部分まで戻されてしまう(例:タイトル画面に戻される)ものとにおおむね分けられる。
 このゲームは後者にあたる。そして、この手のゲームオーバーのあるゲームで、かつ探偵ものというのは、いまいちロクなものがなかった。いや、ユーザーのプレイ意欲を削ぐ恐れがあるためか、今ではあまり見ることのないタイプでもある。冒険もののADVなら、あってもいいんだろうけど。もっとも、ADV自体の新作タイトル数が少なくなっているのだが……
 だいたい、探偵もの(推理物)ADVで、ゲームオーバーになると言えばロクな展開にならない。犯人等に殺される、時間切れで迷宮入り、誤認逮捕……などなど。取り返しのつくゲームオーバーならいいけど、そうでない場合はどうしようもない。たとえば、ある一週間を舞台にした殺人事件もののADV、主人公の探偵は最終日に容疑者を集めて犯人を指摘する。……が、証拠不足でゲームオーバー。その証拠は初日に手に入るはずだったけど、その時点にはもう戻れない。
 これをいわゆる「ハマリ」と言い、最近は毛嫌いされる傾向にあります。昔、FCで「殺意の階層」とか言う名前のADVがあって、これはコマンドを選択するごとに3分が経過していくというものでした。つまりタイムリミット付き。期限がくればゲームオーバー。
 こういうハマリを無くしたのが、ゲームオーバーがなく(あっても、前述のような手法ですぐに復帰可能)、コマンド総当たりで物語が進行していくタイプのADV。この代表としては「EVE」「ポリスノーツ」「神宮寺三郎シリーズ」が挙げられる。しかしこれは難易度がある意味では皆無に等しく、ゲームと呼べるのかどうかも怪しかった。「ポリスノーツ」などは途中にミニゲームがあり、それをクリアしないとゲームが進行しないようにはなっているのだが、これはADVの本質とは離れている感がある。また、「神宮寺」では作中で推理シーンが何度かあり(シリーズに依っては無いものもある)、途中でこれまでの事件のあらましを思い返しながら、推理および今後の捜査についてプレイヤーの判断が求められるようになっていて、これはいいアイデアだと思う。
 そして、この御神楽にはゲームオーバーがある。タイプとしては、エピソードの区切りまで強制的に戻されてしまうタイプだ。だが、このゲームは「探偵ものアドベンチャーゲーム」の大傑作だとここで断言する。
 ゲームの概要を端的に書けば、マップ上のポイント(街の中の家・店・公園など、また屋敷の中の各部屋であったりする)を巡りながら、関係者の話を聞いて事件を探っていくというもの。プレイヤーは探偵事務所の助手を努める少女(時に少年)達を操作し、事件にまつわる情報を収集していく。と言っても実際に事件を解決する(情報や証拠をまとめて犯人を導きだす)のは、助手の少女達ではなく探偵なんですけどね。ノリはほとんど「少年探偵団」です。
 これだけでは傑作とは呼べません。少なくとも僕は言わない。このゲームを傑作たらしめている要素、それはトリガーシステムと命名されたアイデアなんです。
 関係者との会話や、主人公達が何かを観察したときに出てくるメッセージ(主人公達の会話や心情等)が、ふだんとは違う色で表示されることがあります。その時に表示されているメッセージ=情報は、はたして事件解決に必要なものなのか? それをプレイヤーが判断し、必要だと思えばトリガーを引いて(=情報を収集する)そのメッセージに関連することを追及してみるわけです。例えば「怪しい人影を見たなぁ」という発言に対してトリガーを引き、それが必要な情報であった(正解)のならば、「どんな人を見たんですか?」となるのです。
 ただし、トリガーの使用回数には限度があり、不要な情報であればトリガーを引かずに無視することも必要になります。また、そうして正しくトリガーを引いたとしても、得られる情報にはポイント化された重要度があり、ひょっとしたら「関係はしているけども、たいした事ではない」ということで、ポイントが1しか手に入らないかもしれません。各章ごとに、20ポイントを得ないと次の章へは進めないので、トリガーはそうそう無駄にはできません。
 このシステムが、単に物語を追いかけるだけではなく、プレイヤーが物語に介在する余地を与えている。それでいて、例えばあと15ポイントの情報を得ないといけないのにトリガーの残数が1しかないような状況……いわゆるハマリに近い状況に陥る可能性はあるものの、結果としてゲームオーバーになり、強制的に戻されてしまうポイントが「また同じ所をプレイしなくちゃいけないけど、そんなに時間もかからないから別にいいか」程度にうまく区切られているおかげで、さほど苦ではない。トリガーの難易度も決して高くはないですしね。
 メインの登場人物が露骨にギャルゲーライクな絵になっているおかげで、すごく軽いゲームのように見えがちですが、その実は超硬派!本格的な推理物に仕上がっています。トリックや事件の背景もなかなか考えられていて、決して子供だましレベルのものではないですしね(重すぎもなく、軽すぎもなく、中途半端でもない。絶妙!)。推理ものADVが好きだと言うのなら、ぜひとも一度プレイしてもらいたいと思います。


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