1.「EVE -burst error-」 2.「DESIRE -背徳の螺旋-」(PC98版)
3.「EVE -burst error-」 4.「EVE -the lost one-」 5.「DESIRE」(SS版)

C's ware
PC (18禁) / SS

 以上、五作品について。
 これら全て、僕は別作品だと思っています。発表順では2-1-3-5-4という順なのですが、ここでは敢えて違う順で書いてみようと思います。
 「EVE -burst error-」(以下、EVE)PC版は、後に(株)アーベルを設立することになる菅野ひろゆき氏が、C's ware時代に剣乃ゆきひろという名前でシナリオを手がけた作品……というのはファンの間では周知の話。氏の前作「DESIRE」が高い評価を得たことも有り、大きな期待を受け、それに十二分に応えるクオリティを伴って登場しました。
 EVE・DESIREともには18禁作品として発表されましたが、シナリオがしっかりしているゲームほど有りがちな、いわゆる「とってつけたようなエロ」ではなく、多少のサービスシーンのようなものはあれども、シナリオとHシーンはうまく融合されていたんですよ。このあたりは、後にYU-NOのムックだったか何かで、剣乃氏自身が「サービス」という言葉を用いてインタビューでH絡みの事を語っていたあたり、何かしらのこだわりを持っているのでしょう。こだわりが有るからこそ、きちんとした形でHシーンを作中に盛り込めたのだと思います。
 両作とも、二人の主人公が別々の視点から物語に関わっていく形で進行します。特にEVEは、まるっきし関係のなさそうな二つの事件が、徐々につながりを見せてくる……という構成で、その過程は非常に素晴しいものでした。ただ、この「マルチサイト」と呼ばれるシステムそのものは決して斬新なものではなく、要はザッピングの一種でしたが、この手法を巧みに生かしたシナリオ(とその構成)は素晴しいの一言に尽きます。
 他にも数作の制作に関わった後、剣乃氏はelfへ移籍し、YU-NOの制作に携わった後に独立しますがそれは別の話。

 その後、両作はSSへ移植される事になりますが、その時にはすでに剣乃氏が脱退した後。まずはEVEが移植されたのですが、その際にはHシーンの削除が必要になります(当時すでにSSの18禁ソフトは製作が行われなくなっていた)。
 そうして出来たSS版EVE。これは一般市場でも高い評価と好セールスを得たのですが、オリジナルを知る人間からすれば、かつてHシーンだった場面の無理やりな修正と、それ以降の話の流れ(主に心情の変化)の不自然さが、妙に引っかかる出来映えとなってしまいました。せめて剣乃氏自らの移植だったら……と思ってしまうのは、ひいき目なんでしょうか。古典ですが「ほれほれ、もっと気持ちよくして欲しかったら機密を白状しな!」の代わりに「ほれほれ、これ以上くすぐられるのが嫌だったら機密を白状しな!」は無いと思う(もっともオリジナルもあまりに古典すぎて笑えるけどさ)……しかもその後、妙に色っぽい雰囲気で会話する二人! Hして情が移るとかそういうのならともかく(個人的には嫌いな展開だけどね)、くすぐられてそういう雰囲気になるというのは……どうにも……
 SS版EVEの市場的な成功を受けてか、DESIREも移植されることになりました。DESIREはEVEとは違い、二つのシナリオはそんなに密接には絡んできません。一つの事件を、二つの視点で追っているという感じですね。EVEは二つのシナリオが一つに収束していきましたが、DESIREはその逆です。
 ところで主人公は男女一人づつなのですが、この女性側のシナリオというのが、全編もうどうしようもないくらいにエロエロなのです。男性側のシナリオは秀逸で「剣乃シナリオといえばDESIREだ!」という声も多く聞かれるほど根強い人気を誇る一端となっていて、まぁSS版EVEと同程度ならば移植は可能なのですが、女性側のシナリオはもはや修正不可能なくらいにエロエロ。女性編(マコト編)は移植しないんじゃないの?とか思っていたら、なんとHの代わりに催眠術による精神操作という内容にガラリと変更。
 結果から書くと、この移植はEVEよりはだいぶマシなレベルでした。EVEであったような、Hシーンを削ったがゆえのシナリオの流れの矛盾は大幅に改善。Hシーンにツギハギをあてたような内容にするくらいならば、ガラリと設定を変えてしまったという判断は正しかったんじゃないでしょうか。ただそれでも、オリジナルの完成度を損ねていた事には違いないのですが……移植困難なシナリオだったことを考えると、まだマシな移植と言えるかと思います。
 そしてSSで登場した、EVEの正当な続編として製作された新作「EVE -the lost one-」(注:剣乃作品という流れにおいて、DESIREの次作をEVEと呼ぶだけで、この二作にストーリー的な繋がりはない。少なくとも僕は接点を知らない)。
 舞台は前作の一年後だか二年後だかで、主人公は新顔。前作の登場人物も継続して登場。主人公はやはり二人で、新米の女性捜査官と、彼女が追っている犯人という構成。
 発表当時から物議を醸したこの作品。前二作は剣乃氏のオリジナルがあって、それをベースにして移植していましたが、これは産みの親とも言える剣乃氏抜きで製作されたもの。そのくせ登場人物が共通しているという時点で、オリジナルの世界を壊すのではないかという危惧は当然でしょう。
 発売後の評判はやはり散々たるもので、僕もいろんな所で「ロストワンは駄目だね」と言い続けていたのですが……EVEでさえなければなぁ、と今は思います。マルチサイトというシステムを用いた別作品、もしくはEVEの世界設定を流用していても登場人物及び物語において関連がないとか、そういう作品を目指していれば、まだしもマシだったのかもしれません。SNAKE編(←犯人編ね)の駄目っぷりはとんでもなかったし(特に終盤は酷すぎ……)、イルカの声をFAX信号として扱って似顔絵を描くだとかいう無茶苦茶っぷりはあったものの(この二点においては、批評誌にも同様の記事が寄せられていた)、中盤まではまだ許せる内容だったんですよ。しかし、EVEの持っていた雰囲気を継承していたからこそ許せたのかも?
 ところでタイトルにもなっている、「ロストワン」ってなんだと思います?失われてしまった何か、とかそういう感じっぽいでしょ? 実は単なる固有名詞です。別に「EVE -love! love! angel!-」とかそんなんでもいい。名前に意味がねぇ!(笑)と、当時激しく脱力したのを覚えています。思わせぶりな名前だけに……。固有名詞「ロストワン」として登場するものが単なる偶然の一致であり、タイトルとは関係ないものとして受け取れば、まぁ意味が判らないでもないタイトルではあるけど……。
 最後は「こりゃ十中八九、世界は滅びるな」と思わせるような展開なんですが、時間的にthe lost oneの数年後になる「ADAM」(未プレイなんでコメントはしません)ではアッサリと世界は救われちゃっててびっくり。どうやって助かったのか、ぜひとも知りたいのでそのうちADAMやる予定。……描かれてなかったりして(笑) 良い評判・悪い評判、どっちも聞くんだけど……


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