YU-NO
この世の果てで恋を唄う少女
elf
PC98(18禁) / SS(18推)

 剣乃ゆきひろ(現・菅野ひろゆき)氏が、elfに移籍して最初で最後の作品となったADVです。
 ゲーム業界で三人、凄いと思うシナリオライターがいる。この人がそのうちの一人です。この人はゲームクリエイターとしても凄いと思ってます。

 頭角を現したのはDESIREからだと思うし、一躍有名になったのはEVE -burst error-だと思います。これらを最高傑作だというファンも多いのですが、僕はあえて一番メジャーではありますが、YU-NOを推したいと思います。
 何故かというと、シナリオそのものの完成度も有るのですが、このシナリオがゲーム以外の媒体では表現が不可能であるからなんです。世にあるゲームのほとんどは、その物語をゲーム以外のメディアでも表現可能じゃないでしょうか。たとえマルチシナリオでも、それぞれのシナリオにおいて分冊にすれば小説なり漫画なりに変換は可能だと思います。
 が、この作品に関して言えば、それは不可能では無いにせよ、そうすることでシナリオそのものの魅力が損なわれる事になるでしょう。ゲームだからこそ表現できる、体感できる物語。
 ゲームという媒体、そのシステム、そしてシナリオ。この三つの融合が、この上なく見事な作品に仕上がっていると思うんですよ。<シナリオに多少の破綻があるらしいけど、僕は気になりませんでした。

 シナリオそのものについての言及はあえてしません。序盤の掴みと、それが終わって本編に入った時点での何も判らない状態から、徐々に世界構造を理解していくプロセスにも、このゲームのおもしろさがあると思うので。

 システムとシナリオの融合と言うことでは、氏の最新作「エクソダス・ギルティ」でも新しいアプローチがありましたが、こちらは「YU-NO」の時ほどのインパクトはなかったですね。ゲームそのものはいい出来だったのですが。
 みっちりやりこんで、比較的ゲームクリアの早い僕でも30〜40時間はかかりました。SS版で声を聞きながらプレイすると60時間はかかるって話も。
 その間、だらだらするわけではなく、常に何かしらの進歩がありながら物語は展開します。主人公は個性的な性格ではあるんですが、それでもなおプレイヤーとして一体感を感じることが出来るのは、ひとえにゲームバランスの賜物でしょう。

 18禁ってのは単なるエロゲーではなく、表現の幅を広げるためのものである、って事を感じられる作品と言えるんじゃないでしょうかね。だってこれ、小学生がやって理解できる話だとは思えないし。
 何よりも、ある程度、年を食わないと判らない感情だってあると思います。


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