朝の屈辱
「いつまで寝てるのさ。もう朝なんだよ」
キンキンとした声で檻の中で目を覚ましたおようは目の前で薄笑いを浮かべている真理子を見つけ、暗澹たる気分になった。おように真の恨みを持つ真理子が四六時中一緒にいる事はおように取って新たなる脅威なのだ。
「あら、綺麗な顔をした坊やじゃない。お前さん、何をしでかしたんだい」
隣の檻に収容されている泰明を目にした真理子は興味を持ち、その前に膝を折った。
「そいつはこの女と一緒に満蒙国境を越えようとして捕まった運の無い小僧でさあ」
おようを後手に縛り上げながら杉内が答えると真理子はしたり顔で頷いて泰明の檻を覗きこんだ。
「可哀想に丸裸にされちゃって。まだ、女を知らないんだろう?」
真理子が穴が開くほど自分の裸体を見つめるもんだから泰明は恐れの表情を露わにし、両腿すぼめ檻の奥に後ずさった。
「まあ、初心なんだね。あんたにもこの女を抱かせてやるからね。楽しみにしてるんだよ」
言い捨てると真理子は楽しみが増えたとばかりに浮き浮きした表情を見せ、鎖に繋がれているおようの傍らにやってきた。
「今日から珍芸の稽古を付けてやるよ。手古摺らせたりしたら承知しないよ」
十分に脅しておようを頷かせた真理子は懐から麻縄を取り出すとそのピッチリと閉じ合わせた太腿の前に腰を落とした。
「足を開きなよ。ちょいと準備運動代わりにこれを締めさせて貰うよ」
悲しげな視線で真理子の手にする中間にこぶを作った麻縄を見つめていたおようだったが諦めたように両足を開いた。
「よし、よし、良い子だね。このこぶをしっつかりと食い締めるんだよ」
おようの従順な態度に満足げな笑みを洩らした真理子は入念にこぶを含ませると、おようの股間を通し背後で待ち受ける島本に渡すのだった。調子を合わせ、麻縄を極限まで引き絞った真理子はおようの腰のくびれ辺りでひと巻きさせると縄尻を島本に手渡した。
「よしきた。これ位で良いですかい?」
島本によって麻縄は思い切り引き絞られ、腰に巻き付く縄に固く結びとめられた。
「どうだい?あんたには歯応えがないだろうけど、身体を溶かすには十分さ。潤んだところでお稽古を付けてやるよ」
剃り後も生々しい股間に真一文字に割る縄を通され、引きつった表情を浮かべるおようを真理子は楽しそうに眺めながら、淫猥な笑みを浮かべるのだ。
「さ、もう一度、足を開くんだ」
今度は白い布を手にした杉内がおように迫る。
褌を男のように締めさせられたおようは鎖から解き放たれる。
「そのままの姿でこの辺りを一回りするんだよ。足に怪我をするといけないから下駄を履かせてやるよ」
ピッタリと揃えた足前に下駄を置いた真理子は唖然とした表情を浮かべるおようの顔を見て微笑むのであった。朝でまだ人通りが少ないとはいえ町中を褌一枚の姿で歩かせ、一層、おようを惨めな心境に追い込む事に真理子は快感を覚えているのであった。
無論、そのような事を町中で行えば巡査が飛んで来るだろうが、軍の後ろ盾がある杉内たちには怖い物は無かった。
おようは真理子と島本に肩を掴まれ戸外へと連れ出された。
うっすらと靄が掛かり、あちこちの食べ物屋からはおいしそうな匂いが漂って来る。そんな朝の情景の中に褌一枚のおようは放りだされたのだ。
「さあ、一周するまで終わらないよ。さっさと歩いたり、歩いたり」
真理子が景気良く尻を叩くとおようは弾みを付けてたように歩き始めた。
女芯に食い込んでる縄が意地悪い効果を発揮し始め、肉体を責め苛んでも歩かねばならなかった。少しでも歩きが鈍ると真理子と島本が双臀に平手打ちを食わせる。おようは余りに惨めさに溢れ出そうになる涙をも堪えながら歩きを続けなければならなかった。
朝のまだ早い時間に裸の女が晒し者のように歩いてく姿に人々は驚き、すぐさま、巡査が飛んで来た。
「これは何の騒ぎだ」
満人の巡査はおようの魅力的な肉体に目をパチクリさせながら尋問した。
「この女は開拓村を一つ丸ごと潰しちまった大罪人です。こうやって懲らしめてやってるのです」
杉内が説明するが巡査は合点が行かぬようだ。
「その大罪人を何でお前たちが捕えておる。罪人ならしかるべき場所に収監するだろう」
「へい、関東軍の中田大尉からのたっての願いで預かっている次第です。野次馬が寄って来るようなので、警備をお願いします」
中田大尉の名前が出ると巡査も強い事は言えなくなった。そればかりか警備まで依頼されても断る訳には行かないのだ。中田は大興の警察に強い発言力をもつ内務担当の軍幹部だ。
どこから人が湧いて来たのか狭い通りは好色な野次馬で溢れかえっていた。その中を股縄を噛まされたおようは俯いたまま歩いて行く。
集まって来た満人は薄笑いを浮かべ道を開き、裸の行列を通して行く。
股縄を噛まされているため、歩行を続けるおようは悔しくも樹液を溢れさせ、白い褌に染みを作っている。
おようは全身を朱に染めこの淫らな試練と戦っている。少しでも歩行が鈍ると容赦無い平手打ちが刺青を施した尻たぶに飛んだ。
「もっと、しっかり歩かないか」
真理子の叱咤を受けたおようは気力を振り絞り、歩を進める。
「ここで止まるのよ」
大通りに差し掛かると真理子はおようの汗ばんだ肩に手を置き動きを止めさせた。
騒ぎを聞き付け野次馬の数はさらに増え、巡査は整理に大忙しだ。
その辺にあった箱の上に乗った真理子はおようの髪の毛を掴み上げ、その顔を衆人に晒した。
「この女は日本人の癖に馬賊と組みして菊水村を壊滅させた大罪人なのさ。この恥ずかしそうな顔を見てやっておくれ」
真理子が大声を張り上げると野次馬の中から歓声が沸いた。
「触らせてくれないのか?」
誰かが野次を飛ばすとどっと笑いが湧き起こった。
「構わないよ。崑崙通りに二列になって並びな、胸でも尻でも好きな所を触るがいい」
男たちは大挙して崑崙通りに移動した。大通りから雑多な店が並ぶ崑崙通りに男たちは列をなし、その中をおようを歩かせようと真理子は考えたのだ。
「真理子さん。ひ、酷い酷すぎます・・・」
涙を溜めたおようが抗議の声を上げると真理子はその蒼ずんだ頬を引っ叩いた。
「何を贅沢な事を抜かしてるのさ。多くの男たちを殺して、二の語は付かせないよ」
抗議を一蹴した真理子はさらにおようを黙らせるために猿轡を噛ませるように命じる。
島本が首に巻いていた汚い手拭でおように猿轡を噛ませると真理子は屈辱に震える双臀を引っ叩く。
「さあ、お歩き」
おようは顔を俯けたまま歩を進め始める。最早、おようは生きている実感が無かった。悪魔たちの命ずるままに足を動かしてるに過ぎなかった。
崑崙通りに入ると二列に並んだ男たちの手が次々におように纏いついて来た。真理子に髪の毛を引かれ、正面を向けさせられたおようの悔しそうな顔は男たちに刺激を与えられ上気してくる。
少しでも触れられる時間を短くしようとおようの歩みは速くなる。しかし、それは肉芯により多くの刺激を与え、おようは遂に我慢が利かなくなった。
「う、ぐっ」
猿轡の中でくぐもった声を上げたおようは棒立ちになり、ぴったりと揃えた太腿を痙攣させる。
「とうとう、往っちまったようだよ。この恥ずかしそうな顔を見てご覧」
真理子は再び髪の毛を引き掴み、懊悩するおようの顔を野次馬たちに晒すと笑い声を上げた。しかし、その間にも無数の手がおようの肉体に絡みつき、絶え間なく刺激を与え続けている。
痙攣が収まったおようは再びおぼつかない足取りで歩を進め始める。満人たちはいつも自分たちを蔑んでいる日本人の女に屈辱を与える事に有頂天になり、おようが馬賊の一員となり、何故、菊水村を襲ったのかは歯牙にも掛けない。哀れなおようの裸の行進はいつ果てる事無く続くのであった。
調教開始
「今日ほど私は愉快な気分になった事はないよ」
アジトに戻り、雪子が用意した朝食を啄みながら真理子は上機嫌に語っていた。
「満人たちの手さばきで往っちゃうなんて、この女はとことん淫乱なんだね」
再び、鎖に吊るされがっくりと首を垂れ、全身に手形を残すおようの肉体に目をやり真理子はニンマリとした笑みを浮かべる。自分にとって恨み骨髄の女をここまで追い落とした事に真理子は満足を覚えていた。
「しかし、あの巡査。あいつは良くやってくれたぜ。中田大尉に報告してやろう」
杉内も満人の巡査の働きは大いに助かった。最後におようの乳房を握らせ、幾ばくかの軍票を与えたら、いつでもお手伝いしますとまで言ってくれたのだ。
「毎朝、引き回しをやるのも面白いじゃないか」
真理子の言葉に一同は爆笑した。おようはそんな悪魔たちの会話を耳にしても何の気持ちも湧かなかった。彼女は悪魔たちの支配が早く終わるの願い、その身を鎖に預けていたのである。
「さて、そろそろ、調教に掛かるとするかね」
真理子が朝食もそこそこに立ち上がると雪子が口を開いた。
「こいつ等に朝飯は食べさせないのかい?」
「おようは終わってからでいいよ。お坊ちゃんに食べさせておやり」
言い終えた真理子は項垂れたままのおようの前に立ちはだかるとその裸身を改めて見つめるのだ。
満人の手に寄って良いようにされた裸体には彼らの手の跡が痛々しく残されていたがその美しさには一点の曇りも無くむしろ自分を挑発するかのように輝いている。真理子は憎しみを新たにすると大きく染みを作ってる褌を引き剥がした。
剃り上げられた股間に食い込んでいる縄がじっとりと濡れているのを目にし真理子はにやりと片頬を歪めると島本に手伝わせそれも引き抜いてやる。
ようやっと不快感から解放されたおようはほっと息を付くが真理子が眼前に濡れそぼった縄を突き付けると思わず目を背けた。
「こんなに濡らしちまって、あんたも相当好きな女だね・・・」
真理子の言葉責めにおようは素知らぬ顔をしていた。狼狽を示せな示すほど悪魔たちを悦ばすことになるとおようは悟っていたのだ。
「それじゃ調教を始めるよ。いいね」
真理子の手が無防備に乳房に掛かるとおようはむずかるように身を捻った。
「厠にくらい行かせておくれよ。これでも人間なんだからさ」
「ああ、それは気が付かなくて悪かったわね」
真理子は片隅にあったバケツを持ってくるとおようのピッタリと閉ざした足元にそれを置き、ニンマリとした笑みを浮かべおようを見つめる。
「立ったまましろって言うのかい?」
「当然だろう。平木屋にいた頃は平気で見せていたじゃないか」
真理子がクスクス笑いながら言うとおようは歯を悔しさで噛み鳴らした。しかし、差し迫る尿意に勝てる筈も無く、悲しげに視線を落としたおようは足を開いた。
「この女、立ち小便が出来るんですかい」
「ああ、そうだよ。この女の芸の一つになっていたのさ。よく見ておやり」
笑いながら真理子が言うと島本はその前にどっかりと腰を落とし、目を皿のようにその部分を見つめるのであった。
「も、もっと離れて。掛かってしまいます・・・」
「いいから、気にすんな。女の立ち小便を一度は見たいと思っていたんだ。それにあんたとは情けを通じあった間柄だ。気にすんな」
頬を赤らめるおようの訴えを一蹴した島本はニヤケタ表情を浮かべている。
「いつまで手間取ってるのさ。さっさと済ませて調教を始めようじゃないか」
真理子に刺々しい言葉を浴びせられるとおようは糞度胸を決めた。
「ふふふ、始めたじゃないか」
バケツの底を叩く水音が響き渡ると真理子は快心の笑みを浮かべ屈辱に喘ぐおようの姿を見つめていた。悪魔たちの立て続けに味会わされる屈辱の嵐におようはたった一人で立ち向かわねばならなかった。早く地獄のような時間が過ぎ去るの願わずにはいられないおようであった。