最後の屈辱

桔梗と秀正の濃厚な肉の絡みを十分に堪能した家康はほっと息を付いて盃を干して照れたような笑いを浮かべた。
「ご満足、戴けましたか?」
淀君の言葉に大きく頷いた家康はその打ち捨てられた裸身を震わせ、鳴咽する桔梗の姿から目を離さなかった。
「桔梗をこれへ」
元直の手によって縄を解かれた桔梗を淀君は呼び寄せた。

妖しい汗に塗れた全裸の桔梗が目前に来て膝を折ると家康は目尻を下げてその全身を嘗め回すように視線を這わせた。
「家康様。ご満足、戴けましたか?」
「うむ、そちの甘え身悶えや狂い乱れる姿、誠に美しかった。わしの命を付けねらった恐い女などと言う事は忘れてしまった。どうじゃ、一杯飲むか?」
桔梗は差し出された盃を首を振って拒否すると甘い声を出した。
「口移しで飲ませて戴けませんか?」

ほのかに漂い始めた桔梗の色気に家康はたじたじとなり、酒を口に含むとその優美な裸身をしっかと抱き締め、口を合わせる。
これは落下無残にこの身を責め苛んだ挙げ句、打ち首にするという鬼畜に勝る行為を我が身に与えている淀君への桔梗の復讐であった。
ごくこぐと喉を鳴らして注ぎ込まれる酒を飲み干した桔梗はそれが終わると妖しい笑みを浮かべて家康を振り仰いだ。
「ああ、家康様。頼もしいでございます。桔梗の口の中に受け止めさせてくださいまし」
家康の一物が怒りを漲らせているのを感じた桔梗はこんなことまで要求する。

淀君と三成は唖然としたが家康は満更でもないらしく、袴のを脱ぐとおのが一物をさらけ出して、桔梗を太股に導いた。
「あの若者とは比べようもない小兵だが中身は負けないぞ」
「いえ、とても頼もしい様にございます」
桔梗は瞳に妖しい光を湛えて家康を見上げて微笑むとその屹立に手を添えて緩やかに動かし始めた。

「桔梗はあの世に行って、お待ちしております」
そんな戯れ言を吐いた桔梗は頬に縺れる髪の毛を大きく振り上げると家康のそれを口に含んだ。
家康はその頭を撫で上げながら桔梗の甘美な感触を楽しんでいる。もうすぐ命が絶たれる女がこんなに可愛く奉仕を続ける。家康は胸が熱くなって来た。

唇で締め付けて、舌で摩り上げられる。時たま、口を離してはその先端を舌で愛撫したりする。桔梗の手管に家康は正に舌を巻く思いがしていた。
遂に家康が桔梗に敗れると、最後の一滴まで絞り尽くした桔梗は家康の前に大きく平伏した。
「有り難うございました。これで未練なく、冥土に旅立てまする」
家康に礼の言葉を掛けて立ち去る桔梗の姿に家康は涙さえ浮かべるのであった。

逆転

死装束を身に付けた桔梗が再び、物見櫓に現れると家康はその美しさに目を瞠った。化粧までしてきた桔梗は先ほどの大胆な振る舞いが嘘のように清楚な香りを漂わせた桔梗は観念しきった表情でその場に膝を折った。
「桔梗、覚悟はできたか?」
「はい、あれだけ楽しませていただき、この世に未練はありませぬ」
冴えきった表情で言い切った桔梗に満足した淀君は元直に目配せした。

元直が刀を振り抜いた時、
「待て、待て」
浅野が大股で現れて元直を制すと、淀君の前に平伏した。
「淀様。この浅野と交わした約束をお忘れではありますまい。桔梗の首を跳ねるときは私目と繋がらせたままと約束いたしましたではないですか」
「おお、そうであった」
淀君は大袈裟に驚いた振りをして桔梗に笑い掛けた。

「浅野殿がこのように申しおる。桔梗、すまぬが死装束を脱いで貰えぬか」
死の直前まで辱しめられ事に桔梗は泣きたい気持ちになった。しかし、一切の感情を押し殺したよな表情を浮かべた桔梗は立ち上がるとするりと死装束を肩から落とした。
しかし、全裸の浅野にその身を受け止められると感情を抑え切ることが出来なかった。

浅野の胸に顔を押し付けて泣きじゃくる桔梗は自分の惨めさを思いやって涙を流していたのだ。身に付ける一片の布も許されず、男に刺し貫かれたまま命を絶たれる。桔梗の胸は哀れ出る悲しみに覆われていた。
「この期に及んでの命乞いは見苦しいぞ」
おのが欲望を満足させる事しか考えていない浅野は泣き止まぬ桔梗に腹を立てていた。
慟哭していた桔梗が落ち着きを取り戻し、泣き声が小さくなると浅野は桔梗の身を横たえ、淫靡に乳房を愛撫し始めた。

桔梗は泣くのを止め、その愛撫の感触をむしろ楽しむかのようにうっとりした表情を浮かべている。
家康は思案に暮れていた。この女が豊臣家の罪を一人で被り、あの世に旅立とうとしている事は明らかだ。しかし、命を救って、淀君と三成の悪事を暴いたとしてもそれだけで豊臣家を追い詰める事はできない。家康は目の前で繰り広げられる痴態を目にしながら思い悩むのであった。

桔梗が浅野の愛撫に煽られ、その身を朱に染め始めると、浅野は桔梗の身を自分の身体の上に乗せ上げ、繋がらせようとする。
元直は桔梗に浅野の凶器を含ませると櫛がけされた桔梗の髪を一まとめに束ね上から垂れ下がる縄に縛り付けるとその縄尻を引き絞った。頭が動かないようにして桔梗の首を打ち切り易いようにしたのだ。
「気がいったら首を跳ねてやる」
元直に言われた桔梗は浅野の動きに合わせながら腰を揺らし、かすかに頷くのであった。

秀正はその時、天守の外に出て、景色を眺めていた。はらはらと涙を流しながら昨晩、桔梗から言われた事を思い出していた。しかし、祖母、茜からその一族はその美貌ゆえ悲惨な人生を辿っている。葵だけにはそんな目に遭わしてはならないと心に誓うのであった。

桔梗の身悶えが露わになり食い縛った歯の隙間から熱い息が洩れ始めた。浅野は腰を突き上げながらもうすぐ自分を襲う、桔梗の断末魔の狂態を想像して暗い喜びに震えていた。家康は桔梗の喘ぎ声を聞きながら決断の時を迫られていた。この甘い身悶えを見せる白い生物を自分の物にしたくなったのは事実だった。
桔梗の白い背中が緊張して、低い声を放った。
「今だ」
浅野に促された元直が刀を構えた時、家康の大声が響いた。

「その打ち首、待った」
水を差された浅野は拍子抜けして自失してしまい、家康の顔を憎々しげに見つめる。
「何ゆえ、止めまする」
淀君が抗議すると家康はゆっくりと口を開いた。
「この女は儂が貰い受ける。江戸に運んで愛妾に加える」
思いも寄らぬ家康の言葉に淀君と三成は息を飲んだ。桔梗の口から真相が家康に伝わったらそれこそ一大事であったからだ。

「な、なりませぬそれは」
淀君が元直に目配せを送るが家康はいち早く榊原に命じて桔梗を解き放ちその腕に抱いた。
「ああ、お手討ちを」
桔梗は死を哀願するのだが家康は笑って取り合わない。
「儂の庇護を受けて余生を過ごすが良い。江戸は良い町になる。大坂に負けぬような立派な町にしてみせるぞ」
泣きじゃくる桔梗をその腕に抱いた家康は高笑いの声を放った。

「伯母上」
気配を察した秀正も桔梗に駆け寄って泣きじゃくるのであった。
「秀正。そちは剣の方もなかなかのものと聞く、豊臣家が立ち行かなくなったときにはいつでも召抱えてやるぞ」
淀君が居るのも厭わず、こんな事を言い放った家康はさらに高笑いを続けるのであった。

この一件で危機感を深めた淀君と石田三成は家康を追い落とそうと躍起になる。しかし、篭絡に長けた家康は各大名を徐々に自分の掌中に収め、翌年、関が原の合戦で西軍を打ち破り、名実共に天下をその手に収めるのである。

戦国無残Xに続く