調教開始

 翌朝、上機嫌な大槻が後手に縛られた真由子を引き立てて食堂に現れた。

 「あら、今日はご機嫌ですね」

 昨日の朝の表情とは一変した笑顔を見せる大槻に麻子が声を掛ける。

 「ああ、こいつも一晩で打って変わったみたいに燃え上がってよ。俺の肩に噛み付いて見せたりしたんだぜ。まったく驚きだよな」

 食卓に座った大槻は煙草をくゆらし、隣の席でがっくりと首を落とした真由子を指すのであった。昨夜は備えを忘れ、この憎たらしい男の手管に自分でも信じられぬほどの反応を見せた真由子はここに巣食う悪魔たちによって自分の肉体が作りかえられてしまうのではないかという恐れを抱いていた。大金と引き換えに悪魔の手中に落ちた真由子が初めて見せる弱気な一面であった。

 「あなたも殿方に気に入られるようにならないと損よ。こんなおいしいご飯を食べさせて貰えるのよ」

 食卓の上に二人分の朝食を並べる麻子はこんな事を真由子に言うと大槻と笑って見せた。湯気の立つ、ご飯と味噌汁を目の前にして真由子は思わず唾を飲み込んだ。ここへ、連れ込まれてからというもの、冷たい握り飯が殆どで暖かい食べ物とは無縁の真由子であった。

 「さあ、召し上がれ」

 縄を解かれた真由子は待ちかねたように箸を取ると味噌汁から口に運び始めた。

 「朱美と順子は?」

 「もう、奥さんの調教が始まってるの。それを手伝っているわ」

 いつもは賑やかな連中の姿が見えない事を大槻が尋ねると麻子はそう答えた。食事を終えたら真由子もそこに連れ込むんだとも麻子は言った。

 「そうか、一緒に朝風呂にでも浸かろうと思ったのに残念だな・・・」

 大槻は真由子の朝日に輝く白い裸体に目を注ぎながら残念そうに言うと自分も朝食を取り始める。

 「あら、入れてあげてもいいわよ。真由子、ここに来て、一度も風呂に入ってないから・・・」

 真由子と志津江は特に決まって入浴をさせて貰っているわけでは無かった。志津江は男に抱かれた翌朝、 朝食の後に二度ほど入浴をしているが、一度も朝食を取った事の無い真由子は入浴もしていないことになる。

 「そうか、じゃあ、急いで飯を食って、風呂に行こうぜ」

 大槻も食事に集中すると真由子にも箸を急ぐように言うのだった。

 二階の和室では千代の指導の元、天井から伸びる鎖に吊るされた志津江が調教を受けている真っ最中であった。

 既に卵の出し入れを終えた志津江は卵割りに挑戦させられていた。頬を真っ赤にした志津江は下半身をうねらせ、含まされた卵の殻を何とか割り砕こうと必死になっている。それを薄笑いを浮かべた朱美と千代そして、順子が取り囲むように見物していた。

 「この奥さん。何とか物になりそうだよ。恥じ掻き芸だからね。無理矢理教え込まれれば嫌だとか言って泣き喚くのが大半なんだけどね。何とか努力してるからね」

 千代は満足げな笑みを浮かべ、その汗に滑る裸体に満足げな視線を注ぐのであった。

 「ほら、腰の振り方が鈍くなったよ。しっかりおやりよ」

 順子が官能的に盛り上がった双臀を叩き、尻振りを強要すると志津江は歯を食い縛って腰を激しくうねらせるのであった。

 「あはは、やつてますね」

 風呂に入ったばかりの後手に縛り上げた真由子を伴った大槻が入ってくると千代は手を叩いて志津江の動きを止めさせる。

 「少し、休憩だ。このお嬢さんを鍛えないといけないからね。卵を産み出すんだよ」

 汗みどろになって卑猥な腰の動きを続けていた志津江は朱美の掌に卵を産み落とすとがっくりと首を垂れた。

 「ふふふ、ご苦労様。少し、そこで休んでなさいね」

 順子によって鎖から切り離された志津江は部屋の片隅に導かれるとその場に腰を落とし、身を縮めシクシクと啜り上げ始めた。千代から受けた淫虐な調教は志津江の心に痛手を与えていたのである。

 「さあ、真由子さんの番よ」

 朱美によって鎖の下に追い立てられた真由子はきりきりと縄を掛けられ、風呂上りで一層輝きを増した裸身をその場にすくっと晒したのである。

 「お前さんにはまだ、これを掛けて上げて無かったね。少し、潤ませてからお稽古を始めるよ」

 千代が結び玉を付けた縄を差し出すと朱美がそれを手に取り、真由子の前に腰を落とすのだった。

 「さあ、足を開くんだよ」

 太腿を叩かれた真由子は諦めたように足を開いた。ここまで追い詰められ、抵抗を示しても無駄な足掻きに過ぎないと真由子は悟ったのか、開き直ったような態度を示した。しかし、結び玉が肉芯に埋め込まれ、締め上げられると真由子は小さく呻き、眉を寄せるのだった。

 「さあ、そこで腰を前後に揺さぶるんだ。一人で気持ちが良くなるんだ。嬉しいだろう?」

 意地悪い笑みを浮かべた火照り始めた頬を突付かれた真由子は遠慮気味に腰を揺すり始めた。

 「横に廻すんじゃないよ。前後に揺するんだ」

 朱美が大きな声を出し、尻を引っ叩くと真由子は前後に腰を揺すり始めた。忽ちにして肉芯が疼くのを知覚して動きを緩めてしまう。しかし、その度に朱美と順子が左右から平手打ちを双臀に与えると泣き出しそうな表情になりながらも唇を噛み締め腰を揺するのであった。

 「そうそう、そこがぐっしょりになるまで続けるんだよ」

 千代は素直に真由子が腰を揺すっている事に気分を良くし、タバコに火を付けると旨そうに煙を吐き出すのであった。非の打ち所の無い肉体の持ち主の真由子が花電芸者として一人前になれば千代としては満足なのだ。だから、真由子に対しては一層、力が篭るのである。 

 朱美と順子はくすくすと笑いを浮かべながら、尻の動きが止まりそうになると交互に平手打ちを食わせ、真由子を支配している。おぞましい、縄を股間に食い込ませ、腰を動かし続ける真由子の全身は既に汗ばみ、頬を紅潮させている。自分を目の仇にする女たちに取り囲まれ、真由子は肉体を蕩かす悔しさを感じながらも身体は燃え上がって行く。

 「ああ、もう、許して・・・」

 不意に真由子は動きを止め、女たちに哀願し始める。このまま続けたら、憎い女たちの前に再び、肉体の崩壊を目撃されるおぞましさに心を慄かせたからだ。

 「どうしたのさ?続けなけきゃ駄目じゃないか?」

 「だって、・・・このまま、続けたら・・・」

 目の淵を赤くさせ、限界を訴える真由子に対して朱美は更に意地悪く食らい付いてゆく。

 「気が往っちまんだね。構わないじゃないか。一度すっきりしてから、お稽古を始めるから、続けなよ」

 朱美の言葉に千代も大きく頷いた。

 「そうだよ。あんたの恥ずかしさを取っ払うという意味でもここで一回、気をやって見せなよ」

 千代も薄い笑みを浮かべて自分を見ているのを目にし、真由子は自棄になったように腰を揺すり始めた。この女たちに哀願した自分が馬鹿だったと言わんばかりに真由子は一途に快楽を求め始めたのだ。

産卵

 麻子も加わったズベ公たちに身体を弄られながら、真由子は快楽の頂点へ駆け上って行く。

 「もう、少しなんだろう。しっかり、腰を振るんだよ」

 朱美に叱咤され、麻子と順子に乳房を揉み解されると真由子の抑えは効かなくなった。背骨から貫くような快感を感じて、真由子は頂点を極めてしまった。

 「ふふふ、やっちまったね・・・」

 朱美は笑いながら股間を貫く布を食い締め、小刻みな痙攣を続けている真由子の裸体を見つめている。麻子と順子は悔しそうに唇を噛み締め、快楽の余韻に浸っている真由子の横顔に見入って満足の笑みを浮かべていた。自分たちをこけにし、地面にまで這わせた憎い女に対する復讐は彼女たちに取って快感へと変貌しつつあった。

 股間を締め上げていた布が外されると真由子は大きく息を吐いた。切なさを伴う不快の感覚からようやっと解放されたからだ。しかし、麻子は意地悪い笑みを浮かべ、その十分に真由子の体液を吸い込んだ布を鼻先に突きつけるのである。

 「こんなにしちやってさ。あんたもようやっと気分が乗るようになったじゃないか。私たちに感謝して貰いたいくらいだよ」

 「そうだよ。今まで知らなかった女の悦びが味わえるんだからね」

 順子と麻子は真由子を揶揄し、楽しんでいる。真由子は女たちの眼前で羞恥の姿を露呈した悔しさを噛み殺しながら、唇を噤んでいた。何か言って彼女たちの不興を買うより、黙っている方が得策だと考えたのだろう。

 「さて、十分に潤んだようだね」

 それまで腰を落とし、朱美たちに任せていた千代は立ち上がると真由子の傍らに寄ってきた。

 「これから卵芸を教えるよ。何、卵をそこに入れて、産み落とすだけの簡単なものさ。さあ、両足をお開き」

 片手にゆで卵を手にした千代が命じたが真由子はぴったりと太腿を合わせ、微動だにしなかった。自分が最低の女に仕込まれる事が許せなかったのか真由子は頑なな態度を示したのだ。

 「ちょいと、聞こえなかったのかい?足を開かなきゃ、始まらないんだよ」

 朱美に頬を突付かれた真由子は抵抗を諦めるかのように両足を心持開いた。すぐさま、千代が股間に手を差し伸べてくる。

 「十分に潤んでるね。じゃあ、入れるからね」

 真由子の眼前に卵を示した千代は次に身を屈め、まるで壁に何かを埋め込むように真由子の胎内に卵を含ませて行くのだった。

 胎内に侵入してきた異物に最初は狼狽した真由子だったがズベ公どもに身体を抑えられては何の抵抗も出来なかった。千代が手を離すと卵は完全に真由子の胎内に吸い込まれてしまったのだ。

 「まあ、御見事ね。最初から成功するなんて真由子はこの芸当に向いているんじゃないの?」

 麻子が真由子の背中を叩いて笑えば順子は卵を飲み込み、膨れ上がったその箇所に視線を注いだ。

 「ねえ、真由子さん。卵を飲み込んだ気分はどんな感じなの?黙ってないで教えてよ」

 口々に自分を揶揄するズベ公たちに真由子は何の言葉も吐かなかった。ただ、目を閉ざし、この屈辱を必死に堪えているだけなのである。

 「さあ、今度はそれを吐き出してご覧」

 腕を組んだ千代はこともなげに命令した。眉を寄せた真由子は異物を押し出そうとするが簡単には行かなかった。

 「お尻の穴を少し締めるようにして腰を上下に動かすんだよ」

 千代に言われたとおりに腰を動かすと卵は何時の間にか吐き出され、麻子の掌に落下するのだった。

 「どれ、簡単だろう?あんたには十分にその素質はあるんだから、頑張ってお稽古に励むんだよ」

 頬を紅潮させ、肩で息をする真由子を目にし、千代は励ましとも脅しともつかぬ言葉を吐き、満足の笑みを洩らすのだった。昨夜はこの女によって悔しい悦びを知覚させられ、今日は屈辱の芸当を仕込まれる。真由子は千代という女の底知れぬ恐ろしさを実感していた。しかし、真由子はこの場から逃げ出す事も抵抗する事も出来ない現実を受け入れるしかなかったのである。

 「今度は生卵を入れるわよ。おことしたら割れちゃうから真剣にやりなさいよ」

 生卵を手に取った麻子が再びそれを押し当ててくると真由子は腰を浮かすようにしてそれを迎え入れた。徐々に協力的な態度を垣間見せる真由子を千代は楽しそうに見つめるのであった。これだけの見事な肉体と器量の良い女がこのような芸当を見せれば男たちは狂喜するだろうと千代は思っていた。自分のような太って醜い女は人がやらない芸でもなければ芸者を張ってゆくのが難しいだろうと判断して自らこの芸を見に着けたのだった。そして、それは吉村との関係を繋ぎ、調教師という立場になって還ってきたのである。だから、この仕事だけはしくじることは出来ない。千代は一層、心に誓うのであった。

 「そろそろ、鳴き声を付けて卵を産んでご覧。恥ずかしさなんて吹っ飛ぶような大きな声で鳴くんだよ」

 二度三度と卵を産み落とした真由子に対して千代は命令した。それまで死んだように口を噤んで産卵を繰り返していた真由子の頬に赤味が刺した。また一つ、屈辱の底に沈まなければならなくなったからだ。

 「さあ、今度は鶏のように鳴きながら卵を産むんだよ」

 麻子の手によって卵が送り込まれると朱美が強張った頬を突付いて笑うのであった。

 「こ、こ、コケコッコ・・・」

 真由子は鳴き真似をしたのであるがそれはとても小さく、女たちに叱責を受ける事になる。

 「そんな小さな声で鳴いても鶏には聞こえないよ。もっと大きな声を出すんだよ」

 朱美が盛り上がった臀部に強烈な平手打ちを見舞って言うと真由子は再び口を開いた。

 「こ、こ、コケコッコ・・・」

 「まだ、声が足りないよ。もう、煩いって言うくらい大きな声で鳴くんだよ」

 朱美が諭すと千代も腕を組んだまま近付いてきた。

 「そうだよ。恥ずかしい何て言う気持ちは捨て去って、このくらいの声を出すんだよ」

 突然、千代は辺りの空気を切り裂くような奇声を上げ、一同の度肝を抜いた。

 「先生がお手本を示してくれたじゃないか。あんたにもあのくらいの声は出せるんだろう」

 朱美は唇を噛み締め、苦悩する真由子に更に毒づくのだった。

 「さあ、早く鳴かないか?」

 順子に肩を押された真由子が辛さから嗚咽の声を上げ始めるとズベ公たちは爆笑した。

 「鳴くといってそっちの泣くじゃないんだよ。何、勘違いしてるのさ」

 朱美は真由子の泣き声を心地よく聞きながら片隅で身を縮め、首をうな垂れている志津江の方を向いた。

 「しょうがない。奥さんにもお手本を演じて貰うよ」

 「ま、待って、な、鳴いてみせます・・・」

 志津江に難が及ぶと察知した真由子は泣くのをやめきっぱりと踏ん切りを付けたように言った。志津江に自分のせいで難が及ぶ事を極端に嫌う真由子は覚悟を決めたのだ。

 「やっとやる気になってくれたね。さあ、さっさとお鳴き」

 朱美に再び尻を叩かれた真由子は大きく息を吸い込むと屈辱の階段をまた一歩、上がったのである。