罠に落ちた真希

 「もう、その位でいいただろう。ゆっくり見物しよう」

 桑原に声を掛けられ、香ははっと我に返り、照れたような笑いを浮かべると桑原の隣に腰を落とした。しかし、それでも腹の虫が収まらない香は桑原にあれこれ話し掛ける。

 「ねえ、あの女に何か芸を仕込みましょうよ。これからVIPを招待をするんでしょう?ただ、抱かせるだけなんてつまらないわ。恥ずかしい芸の一つくらい覚えこませないと・・・私に任せてくれないかしら?」

 猛烈に突っ走る、香の怨念にも似た千春への憎しみに桑原は苦笑を禁じえなかった。しかし、面白い提案だと思い、栗田に検討を指示するのだった。

 程なくして、手錠を掛けられた真希が吉村に従われ、姿を現した。真希は視線を落し、明らかに落胆している。千春を伴っての逃亡が失敗に終わり、これから自分がどうなるのか不安は隠しようも無く真希を覆っていた。真希は素っ裸にされた千春にちらっと視線を飛ばすとまた、俯いたまま千春の傍らに連れて来られた。

 すぐさま、茫然自失の真希に二人の悪女が詰め寄った。

 「さあ、丸裸になるのよ。千春先輩だって、堂々と割れ口をさらけ出してるんだから」

 由香に素っ裸になるように命令され、真希の顔が恐怖に引きつった。

 「嫌、ゆ、許して下さい」

 「甘ったれるんじゃないわよ」

 瑶子に頬を強打され、倒れ込んだ真希の手を由香が掴んで引き起こすと千春が声を張り上げる。

 「真希さんは悪くないわ。私がそそのかして鍵を開けさせ、脅迫したのよ」

 「うるさいわね。女は丸裸にすれば本当の事をしゃべるのよ」

 「ひ、酷いわ。そんな・・」

 なおも真希を擁護しようとする千春に腹を立てた香がツカツカと歩み寄り、その頬を打ち叩くのだった。

 「あなたは黙ってなさい。意見を聞くとは聞くから」

 千春が再び唇を噛み視線に落とすと香は真希の背後に廻り、そのブラウスのボタンを外しに掛かるのだ。

 「や、止めて下さい」

 激しく身体を揺すり、香を跳ね飛ばしてしまった真希を目にして瑶子は再び電極棒を手にすると千春の傍らに立った。

 「真希さん。あなたが駄々をこねると大好きな先輩がこんな目に遭うのよ」

 電極棒を股間に押し当てた瑶子薄笑いを浮かべスイッチを押す。たちまち、千春の全身が痙攣し、悲鳴が迸った。

 「今のは一番電流が弱いのよ。どう?もっと悲鳴を聞きたいの?」

 泣き出しそうな顔をして自分の手元を見つめる真希に意地悪い視線を送った瑶子はもう一度、スイッチを押した。

 千春は悲鳴を放ち、頭を激しく打ち振った。悪魔の申し子のような瑶子の所業に真希は声をなくし、千春は打ちのめされたように首を垂れている。

 「待って、脱ぎます。脱ぎますから、先輩をこれ以上、苛めないで!」

 更に千春を責め続けると悟った真希は遂に観念し、衣服を脱ぐ決心をした。

 「判ったでしょう。最初から素直に脱げばいいのよ」

 真希が決心したと感じた香は立ち上がると横っ面を引っ叩き、溜飲を下げた。遂に真希は悪女三人に取り囲まれ、肌を晒す羽目になった。

 震える指でブラウスのボタンを外し、それを脱ぎ捨てるとスカート落した。三人の女たちはクスクスと笑いながら哀れな真希の姿を眺めている。

 下着姿になった真希は裸身を隠すようにその場に身を屈めてしまう。しかし、女たちは調子付き、涙を溜めた真希をからかうのだ。

 「早く脱ぎなさいよ。後、二枚じゃない」

 香が叱咤するように言うと由香も口を開いた。

 「パンティは私が貸してあげたのよ。さっさと返してよ」

 由香の言葉に女たちは哄笑する。

 シクシクと啜り上げ始めた真希の背後に廻った香は由香に目配せを送るとブラジャーのホックを外すと、真希が慌ててそれを抑え付ける前に由香がひったくるようにそれを奪い取った。

 「な、何をするの?返してよ」

 両腕でしっかりと胸を押さえつけ必死の叫びを上げた真希を嘲笑うかのように由香は取り上げたそれをくるくると指で廻して舌を出した。

 「あら、さっさと自分で脱がないから手伝って上げただけよ」

 ますます、身を縮めた真希が視線を落として啜り上げ始めると瑶子はその目前に麻縄の束をドサッと投げつける。

 「パンティは自分で脱げそうに無いから、縛らせてもらうわよ」

 「あっ、嫌よ」

 香に腕を取られた真希は必死の抵抗を見せる。しかし、由香によって電極棒を押し当てられ、弾かれたように尻餅をつくと真希は両腕を背後に廻され、キリキリと縄を掛けられてしまう。

 千春同様、後ろ手に厳しく縛り上げられた真希が鎖に吊るされると悪女たちはほっと息を付いた。

 「随分と手間を掛けさせてくれたじゃない。ひと休みしたら、丸裸にしてあげるからね」

 再び、涙に咽び始めた真希を捨て置き、女たちは少し離れた場所に腰を下ろし、楽しそうに談笑するのだった。

千春の決意

 千春は自分の隣でパンティ一枚の裸身を晒して、泣き続けている真希に何もしてやれない自分に歯噛みをしていた。何か口を差し挟めば香に頬を打たれ黙るしかない事は重々承知していたからだ。

 「さあ、丸裸になって貰うわよ」

 休憩を終え、真希を女たちが取り囲むと正面に立った香が腕組をして宣告した。

 「嫌、や、止めてください」

 真希は恐怖に凍りついた表情になって香に必死の言葉を掛ける。哀れな生贄が懇願の姿勢を見せ始めたことににんまりとした笑みを浮かべた香は余裕を持って口を開いた。

 「あら、裸になるのが嫌なの?じゃあ、正直に言いなさいよ。あなたが檻の鍵を開いて、逃亡を千春の手助けしたんでしょう?」

 「・・・」

 泣き崩れてしまい、返事をしない真希を目にした香はきつい顔になり口を開いた。

 「構わないから。素っ裸にして」

 「ああ、待って、待って!」

 左右に立った瑶子と由香がパンティを引き摺り下ろす気配に真希は慌てて声を張り上げた。

 「私が・・・羽鳥先輩を・・・助けようとして・・・鍵をあ、開けました」

 「ふふふ、あっさり吐いたわね・・・」

 震える声で自白した真希に満足気な笑みを洩らした香は桑原を呼び寄せ、その肩に手を置くと鼻に掛かったような声を出す。

 「ねえ、社長。どうします?この娘、何かお仕置きをしないわけにはいきませんよね」

 「そうだな。女奴隷にして、千春と二枚看板を張らせるか」

 社長は太鼓腹を揺すって笑い声を上げると香と顔を見合わせるのだった。千春は気が気ではなかった。真希までが自分と同じ運命に遭わされると知ると口を挟まないわけにはいかなくなった。

 「社長さん。お願いがあります」

 千春が悲痛な声を上げると香はまたしてもその蒼ざめた頬を引っ叩いた。

 「勝手に話しちゃ駄目よ。何度も言ってるでしょう」

 「まあ、いいじゃないか?話してみなさい」

 社長が眉を吊り上げている香を制して、促すと千春は瞳に涙を浮かべながら口を開いた。

 「私はどうなっても構いません。ですが、我妻さんだけは助けてあげて下さい。お願いします」

 涙をぽたぽたと流しながら哀願する千春を目にして、桑原は困ったような顔をして香を見た。明らかに千春の言葉に心を動かされた様子に香は余計、残忍な心を掻きたてられたようだ。

 「あら、社長。女の涙に弱いのね。こんな女の言う事を真に受けちゃ駄目ですよ」

 「か、香さん。お願い。何でもあなたの言う通りにするから・・・」

 千春が自分に対してまで哀願の姿勢を見せ始めると香は意地悪な表情になり、その締め上げられた乳房を突付いた。

 「我妻さんを自由にすることは出来ないわ。でもね、満座の中で恥を掻かせたりせず、檻の中で静かに過ごさせることはして上げてもいいわよ・・・」

 「お、お願いします・・・」

 千春は軟化を見せ始めた香に対して頭を下げた。しかし、それは香の思う壺だった。意地悪い笑みを浮かべた香は震える乳首を抓み上げ千春に迫った。

 「それにはね。あなたが心底、奴隷になって、私たちに仕えることが必要だわ。芸の一つも出来ない女奴隷なんて最低よ。色々お客様も来るんだから、その人たちの前でここを使って芸を見せるのよ」

 香に無毛の地となった下腹部を叩かれた千春は唖然とした表情を浮かべる。しかし、最早、香の言葉に嫌とは言えない千春であった。

 「な、何でもしますから・・・、我妻さんのことは・・・」

 「良い、心がけね・・・。明日から訓練に掛かるわよ」

 「はい。判りました」

 千春が大きく頷いたのに気を良くした香は社長の方を向いた。

 「ご覧のようにこの女を訓練しますから、明日の午後から、お休みを戴くわ。もちろん、長峰さんと花咲さんも一緒にね」

 「まあ、私たちも手伝って良いんですか?嬉しいわ」

 二人の悪女は目を輝かせ、覚悟の表情を浮かべる千春を目にしてほくそ笑むのであった。

 「さてと、我妻さん」

 香は未だに啜り上げている真希の方を向き直ると意地悪い笑みを浮かべる。

 「あなたを奴隷として扱うのは羽鳥さんが頼むというから一時、棚上げになったわよ。だけどね、奴隷の羽鳥さんを逃がそうとした行為に対しては目を瞑るわけにはいかないわ。二度と逃げようなんて気がが起こらないように懲らしめてあげるわ」

 「待って、我妻さんには手を出さないで・・・」

 香の蛇のような執念で真希がおぞましい目に遭うと感じた千春は慌てて口を差し挟んだ。しかし、香はきつい表情になると千春を睨み付ける。

 「そうは行かないわよ。けじめは付けなきゃいけないわ」

 「私を身代わりにして下さい。何でもしますから・・・」

 涙を浮かべた千春が再び訴えると香は馬鹿にしたような顔付きになると乳房を指で弾くのだった。

 「あなたにはあなたで逃亡を企てたお仕置きは受けなきゃならないわ。うふふ、とても恥ずかしいことよ、我慢できるかしらね・・・」

 香は乳首を弄りながら千春の引きつった表情を楽しそうに眺めるのであった。

 千春が視線を落すと香は縛られた小刻みを震わせ、嗚咽の声を洩らしている真希の方に向き直った。

 「ねえ、真希に何をするつもりなの?」

 再び、真希を苛められると知って胸のたかまりを抑えられない由香が尋ねると香は腕を組み、その小さな裸身を眺めて薄笑いを浮かべる。

 「そうね。まず、丸裸にしちゃいましょう」

 香の言葉に歓声を上げた女たちは再び哀れな真希の左右に立つと、その小さな布切れに手を掛ける。

 「あらあら、見られるくらいでそんなに恥ずかしがっちゃ駄目よ」

 真希の小さな身体が再び震え始めたのを知って瑶子は真っ赤になったその顔を覗き込みニンマリとした笑みを浮かべると由香と視線を合わせた。

 「あっ・・・」

 一気にそれを引き落とされた真希は膝頭をガクガクと震わせ、真っ赤になった顔を左右に打ち振り、声を上げて泣きじゃくり始める。

 「あら、可愛いわね。先輩奴隷も見事な肉体だけど、あなたも捨てたもんじゃないわ」

 全裸にされた真希の裸体を眺めて香は感嘆の声を洩らした。小柄ながら真希の身体は男心を疼かせる物を持っていた。縄に抉られ、殊更、大きさを増している乳房、少女のような頼りない腰、そのアンバランスさが妙な色っぽさを醸し出している。

 「ふふふ、ここの毛も薄いわ。ロリコン趣味の男には堪らないわね」

 香はそんなことを言って女たちを笑わせ、号泣する真希を嘲笑うのであった。

 千春は笑いものにされている真希に何もしてやれない悔しさに唇を噛み締めている。千春の願いは女たちの矛先を自分に向けさせ、真希をこの羞恥地獄から解放されることだった。しかし、女たちは哀れな真希を取り囲み、言葉で彼女を苦しめ続けていた。

 「ふふふ、真希のおっぱいって形良いわね。ちよっと悪戯させてね」

 「ああ、止めて・・・止めて下さい」

 由香にふざけて乳房を弄られた真希は大袈裟な悲鳴を上げて身を捩った。

 「あらあら、そんなことでうろたえちゃ駄目よ」

 瑶子に背後から肩を掴まれた真希は動きを止められ由香のなすがままにされてしまう。悲痛な泣き声を上げ続ける真希を目にして千春は黙っていることが出来なくなった。

 「もう、いい加減にしてあげてよ」

 「あら、また、余計な事を言うのね」

 千春の悲痛な声にいち早く反応したのは香であった。

 「この子はこの子でお仕置きしないといけないのよ。黙っていなさいよ」

 千春の頬を叩いた香は勝ち誇ったような視線を浴びせると口元に笑みを浮かべる。千春は悔しさを噛み殺すように奥歯を噛み締めた。自分を助けようとして罠に嵌った真希の窮地を目の前に何もすることの出来ないもどかしさに千春は涙するのだった。

 「ねえ、何をするの?うんと吠え面をかかせて二度と逃げようなんて気が起きないようにしましょうよ」

 乳房を弄びながら笑みを浮かべた由香が言うと香は少し考え込み、部屋の片隅にあるバケツを手にしそれを真希の足元に配置した。

 「みんなの見てる前でおしっこをするのよ。立ったままね・・・」

 香の発案に二人の女は笑い転げる。泣くのを止めた真希は顔面を蒼ざめさせ、足元のバケツを眺めている。悪魔たちの目の前で、それも立ったそんな行為を演じることなど真希は及びも付かなかった。自分の正義感から発した行動を真希は後悔するしかなかった。