朝の剃毛

  「いつまで、寝てるのさ。もう、夜は明けているんだよ」

 お安のけたたましい声で、志乃は目を覚ました。昨夜は辰吉の相手をさせられ、夜半過ぎに牢に戻された志乃は疲労が抜け切れていないのである。

 「さあ、出てくるんだ。朝飯、食わす前におさねを鍛えるんだよ」

 お安に促され志乃が牢から出てくると辰吉がその手を背後に捻じ曲げた。

 「夕べは楽しかったか?お前も何回も気をやったろう」

 腰を落とされ後手に縛り上げられ志乃に対して辰吉は昨夜の事を思い返し笑みを浮かべている。志乃は何も言わず悲しげに睫毛を伏せているだけである。

 「おしっこは済ませたね?」

 下腹を擦られた志乃がかすかに頷くとお安は牢の中から桶を持ち出し、戸外に捨てに行く。

 「いくら見ても綺麗な身体をしてるな。惚れ惚れするぜ」

 丸太柱に縛り付けられ、優美な裸身を立たせると辰吉は改めて蝋燭の炎の光で揺らめく志乃の全身を眺め、ため息を付くのだった。

 「これから、下の毛を剃らして貰うよ。あんたのおさねを抓みやすくするためさ。まあ、若返らせて貰えるんだから満更、悪い気でもないだろう」

 戻ってきたお安はそんな事を言いながら志乃の繊毛に早くも刷毛を使って水を塗り付けている。

 「これで剃ってやるよ。見覚えがあるだろ?あんたが持ってた懐剣さ」

 これ見よがしに見せ付ける懐剣を目にしても志乃は何も口にしなかった。それより、女の証である繊毛を剥ぎ取られる悲しみを堪えるに必死だったのである。

 「仇討ちに乗り込んで自分の懐剣でここの毛を剃られとは思っても見なかったろうね」

 志乃を童女のような姿に出来る悦びに身体を熱くしてるお安は身を屈め、剃り取られるのを待つ濡れた繊毛を目にしてニンマリとした笑みを浮かべる。

 冷たい刃先がピッタリと肌に押し当てられると志乃は裸体を震わせる。

 「元の持ち主の匂いが恋しいのかい?うんと嗅ぐがいいよ」

 お安が刃先を押し進め、縮れた繊毛が剥ぎ取られてゆくと志乃は耐え切れなくなったように嗚咽の声を洩らし始める。

 「この毛を剃られるのがそんなに辛いのかい?」

 「お、女がその毛を剃られるのがどんなに辛いか、お分かりですか?」

 刃先を滑らせるお安に志乃は女の悲しさを訴えたえても鬼女に通じる筈も無い。お安は片頬を歪め、口を開く。

 「十日もすれば元通りに生え揃うさ。もっとも、あんたは産毛が生えてきたら剃ってやるけどね」

 お安は真剣にそして優しさを込めて志乃の陰毛を刈り取って行った。

 身に纏う一片の布も許されず、常に丸裸でいる事を強要されている志乃。しかし、悪党たちは志乃の最後の盾ともいうべき繊毛さえ剥ぎ取ろうとしているのだ。

 「ふふふ、ぐっと若返ったじゃなないか。これから女郎修行に励むあんたにはお似合いさ」

 濡れ手拭を使って肌に張り付いている毛を拭き取ったお安はその出来栄えに目を細める。無毛の地とされた志乃の下腹部は女の縦筋をくっきりと露にしていた。

 「さあ、見てご覧よ。辰吉さんが手鏡を宛ててくれてるよ」

 髪の毛を引き掴まれ、鏡の中を無理矢理、目撃させられたの志乃の目尻から一筋涙が尾を引いた。悪党の所業により心まで貪られている志乃であった。

陰核修業

 源次郎と沢村は旅立ちの時が迫った事もあって志乃に声を掛けようと二階の外廊下を歩いていた。二人とも女郎を途中で交換したこともあり、義兄弟になったような気分であった。

 「あれは志乃殿ではござらんか?」

 沢村に言われ、源次郎が猫の額ほどの庭に目を向けると縄に縛られた全裸の志乃がお安に尻を叩かれ、つんのめる様に歩かされている。

 「何か面白いことが始まっているようだな。行って見ようではないか」

 源次郎に言われ、沢村もニヤケタ笑みを浮かべ、頷いた。

 「お安、朝、早くから、ご苦労だな」

 庭に姿を現した源次郎に声を掛けられたお安は木の幹に志乃を縛り付けている手を休め振り向いた。

 「あら旦那、お帰りですか?これから面白い物が見られますよ」

 お安に呼び寄せられ、近寄った、源次郎と沢村は目を見張った。木の幹に縛り付けられいる志乃の下腹に生息していた繁みが綺麗さっぱり刈り取られていたからだ。

 「ふふふ、そんなにジロジロ見たら志乃に悪いわよ。でも、あるべき物が無いっておかしいわよね」

 お安はクスクスと笑って唇を噛み締めている志乃の表情を盗み見るのであった。

 「何をしておるのだ?」

 「おさね修業をさせてるんですよ。よく見てご覧なさい」

 言われて源次郎が身を屈めてその部分に目を凝らすと志乃の胸を縛り付けている縄から股間を真一文字に細めの紐が割っているのが目に入った。そして、その紐によって抉り出された陰核が殊更大きく膨らんだように源次郎には見えるのだ。

 「志乃のあそこには珊瑚で作った小さい輪が嵌めてあるんですよ。あそこがさっぱり感じない女って結構いるんですよ。それでね、あれはねここの女将が考えたおさねを鍛えるものなんですよ。空気に晒させて敏感にさせるんです。志乃は十分敏感だけどあそこを鍛えないといけないですからね」

 お安は自慢げに話して源次郎を呆れさせる。空気に晒されむず痒いのか志乃は時折、膝頭を震わせている。

 「我らはそろそろおいとませねばならぬから、志乃殿に声を掛けに来たのだ」

 「あら、それなら、早く掛けとくれ、しゃべるどこじゃなくなるからね」

 含み笑いを浮かべたお安に促され源次郎は改めて優美な裸身に目を凝らし鼻の下を伸ばした。

 「志乃殿。我らこれより島後島に戻るぞ。達者で暮らせよ」

 「源次郎様」

 それまで閉じていた目を開いて志乃は上気した頬を震わせた。

 「兄上のこと、宜しくお願いします」

 辱めに遭いながら殊勝に頭を下げる志乃に愛おしさを覚えた源次郎は思わずその乳房に手を伸ばす。

 「心得たぞ志乃。お主がここの女将の言う事を良く聞いて女郎修業に励んでいれば真之介は生かしておいてやる」

 「恩に着ます。源次郎様」

 乳房を揉まれながらも嫌な顔せず、志乃は源次郎に礼を言うのであった。真之介が殺されたら自分が生きている価値さえないと思う志乃であった。

 源次郎が名残惜しそうに手を引くとお安は志乃の豆絞りの猿轡を噛ませた。

 「ちょっとそこで見ていきなよ。面白い物、見せてあげるよ」

 意味有りげな笑みを浮かべたお安は腰を折ると筆を取り出した。志乃の顔が引きつり、鳥肌を立てるのを面白そうに見たお安が目配せすると辰吉も腰を落とし、菜箸を取り出した。

 「さあ、お豆を抓んでおくれ」

 辰吉の菜箸が微妙に震える突起を抓み上げると志乃は猿轡の中でくぐもった声を上げる。さらにその先端を筆でなぞられた志乃は大きく身体を揺すり、篭った悲鳴を響かせている。

 「あれじゃ、志乃もたまらんな」

 源次郎は志乃の苦悶する姿を目にすると沢村と声を揃えて笑い合った。

 「さて、我々は帰るとするか、志乃殿、達者でな」

 志乃に声を掛けた源次郎は沢村を伴って母屋に戻っていった。それを見送る志乃は再びお安に筆を使われ、感傷に浸っている場合では無かったのである。

卵芸修業

 お安にこってり脂を絞られた志乃は土蔵に戻され休息を取らされていた。

 暫く、横になっていた志乃は冷えた朝飯を胃の腑に収めた。地獄のような日々が続く中で食欲だけは衰えを見せないことを志乃は恨めしく思っていた。兄を人質に取られ女郎修業を強要されている志乃であったが、果たして源次郎がいつまで約束を守ってくれるか?それが心配であり、遠く離れていては確かめようもないのである。

 再び、土蔵の扉が開き、誰かが入って来る気配に身を固くした。女将であるお駒と辰吉が蝋燭をかざして牢に向かって歩いて来た。

 「疲れは取れたかい?今度は私が卵芸のお稽古を付けてやるよ」

 お駒が牢の鍵を開け、志乃が這い出てくると辰吉が素早く後手縛りに仕上げてゆく。

 「その娘の味はどうだったんだい?」

 「吸い付き具合、締まり具合、申し分なかったです」

 志乃を縛りながら辰吉は昨夜の首尾を報告するの。

 「そうかい、それは良かったね。お前さんが店に出れば人気は間違いなしだろうけどね。まあ、珍芸女郎としてお座敷に立っていればそのうち声が掛かるよ」

 志乃の強張った横顔を覗き込みながら言い終えたお駒は立ち上がると志乃を丸太に縛り付けるように指示する。

 朝と同様に志乃の優美な裸体が丸太を背に固定されるとお駒は目を細める。

 「ふーん、見事に剃りあがってるじゃないか、こんな物まで覗かせちゃて」

 覆うべくも無い女の縦筋の上端に顔を見せている陰核を弾いて腰を屈めたお駒は笑うのであった。志乃はそこに触れられ事が辛いのか顔をしかめている。

 「じゃ、お稽古に入るよ。いいね」

 再び、陰核を弾かれた志乃が悲しげに頷いてみせるとお駒はゆっくりと指を含ませてゆく。

 「おっぱいを揉んでお上げ」

 辰吉がお駒の言葉に応じ、背後より双の乳房を揉み始めると志乃の鼻息はすぐに荒くなった。

 「ふふふ、その気になってきたね」

 志乃の源泉が潤みを持ち始めた事に気が付いたお駒は愛撫を止めさせると持参してきた籠の中からゆで卵を取り出した。

 「まずはゆで卵を入れるよ」

 鼻先にそれを見せ付けたお駒は身を屈めると襞を押し開き、白い卵を押し付けようとした。しかし、志乃はそれが触れた刹那、突風のように巻き起こった嫌悪感にブルッと腰を動かし、卵を弾き飛ばしてしまう。

 「何するんだよ」

 怒ったお駒に頬を叩かれた志乃ははっとした表情を浮かべる。

 「私に楯突く気なのかい。それならこっちにも考えがあるよ」

 お駒に凄みのある視線で睨みつけられ志乃は全身総毛立つような恐怖を覚える。

 「あんたを源次郎の旦那に突き返せば、あんたは打ち首、真之介だって殺されるんだよ」

 更に捲くし立てるお駒に対し、志乃は謝罪するしかなかない。頭を下げる志乃の姿を見てお駒も表情を崩した。

 「判ればいいのさ。この芸だって恥じることはないんだよ。度胸とこつが判らないと出来ないんだからね。でも、私の事を師匠だと思わくちゃならないよ。いいね」

 乳首を押し、念押ししたお駒は自ら調教を要求するように志乃に言うのだった。

 「お稽古を付けて下さい」

 「そうそう、そやって素直になるんだよ」

 気を良くしたお駒が再度、卵を送り込もうとすると志乃はそれに協力するように腰を動かした。

 「あ、そこで止まって、大きく息を吸い込むようにしてご覧」

 お駒の指導によって、卵は襞の中に吸い込まれ、志乃は元通り両足をぴっちりと揃えた。

 「見事に吸い上げたじゃないか。やれば出来るもんだろう」

 志乃の下腹を撫で擦り、卵の形を確認したお駒はニンマリとした笑みを浮かべる。志乃がものになりそうな気配を見せ始めたことにお駒も安堵しているのである。

 「今度はそれを吐き出すんだけど、こつがいるんだよ。お尻の穴をすぼめるようにして力を入れるんだよ。やってご覧」

 お駒に言われた志乃は心持、足を心持、広げると前に突き出すようにし、言われた通りに力を加え始める。

 「おお、頭が見えて来たよ。もっと頑張ってご覧」

 志乃の幾重にも折り畳まれた襞を押し破り、卵の殻が見えてくるとお駒は手を叩いて囃し立てた。

 「さあ、息を止めて、もう少しだよ」

 志乃が更に力を入れると卵は押し出され、お駒の手にすっぽり収まった。

 「どうだい、割と簡単だろう?もう一回、練習したら生卵でやってみるからね」

 薄く汗を掻いた志乃の身体は靄が掛かったように見え、その裸体をより魅力的に見せている。お駒が再び身を沈めると志乃は眉を寄せ、卵を含もうと必死になるのであった。

 しかし、生卵に代わると志乃の訓練は難航を極めた。入れる際はさほどゆで卵と変わらないが吐き出すときの力加減が判らず砕いてしまうのである。後始末が大変なのでお駒も言葉を荒くする。

 「また、割っちまったのかい。いい加減におしよ。卵だって安くないし、後始末も大変なんだよ」

 「ごめんさい」

 床を掃除するお駒に向かって志乃は何度も詫びるのであった。

 志乃の珍芸修業の道は容易では無かった。